【完結】私の可愛いシャラン~夏椿に愛を乞う

金浦桃多

文字の大きさ
47 / 54
ルクスペイ帝国編(シャラン視点)

最期の審判

しおりを挟む
  ※流血暴力表現あり

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


本日、悪逆非道の限りを尽くした公爵家の公開処刑が行われる。
 最初は帝国民の前でと言う声も出ていたが、断頭台を見つめているのは、貴族たちだけだ。
 陛下が、国民に血生臭いものを見せるのを嫌ったのだ。代わりに大きく公爵家の悪事を知らせたのと、囚われた僕とミカエル様の活躍も同時に伝えた。
 当然のように物語や劇になるらしい。
 ちなみに、貴族に見せるのは今後の牽制の為でもあると言っていた。

 ────公爵家ですら、こうなるのだと。

「シャラン、熱は下がったけど、怪我はまだ完治してないよ。心の方だって気を付けろって、フランチェスコ様が言ってただろう?もし、シャランが辛い事を思い出して苦しんだらと思うと、私も辛いよ。」

 ミカエル様は、しきりに僕を心配してくれているが、そこは譲ることは出来なかった。
 王国の代表として、長年の二カ国に跨った一連の事件の末路を見届けようと決めていた。
 そういえば、サピラの言っていた破落戸は、道中にミカエル様達の部隊とバッタリ会って、そのまま拘束されたらしい。破落戸は既に鉱山送りとなっている。

 皇帝陛下と皇妃陛下が席に着く。
 今回、ガブリエル皇太子殿下は欠席だ。
 ここ数日、アレッシア皇太子妃の体調を優先し、心配から傍を離れないで執務をしているらしい。
 兄弟揃って同じことをしている。

 驚いた事にヤマティ皇国から、シャクナゲ皇太子殿下が参列したいと言い出したが、スズラン嬢が全力で止めていた。
 何やら揉めた挙句、映像と音声を魔導具で残しておき、後ほど送ることになったらしい。
 皇国華族であり公爵令嬢であり、未来の皇太子妃でもあるスズラン嬢に、謂れなき暴言を吐き続けたサピラに、思うところがあったようだ───それだけでは無いと、意味深にスズラン嬢は言っていたが。
 スズラン嬢は、気丈にも皇国の代表として参列すると、キッパリと言い放った。

 登壇させられた、四人の公爵家の者達。
 淡々と読み上げられ、暴かれる悪行。
 人身売買、違法麻薬輸入、違法賭博、領民への過剰重税。数え切れない程の罪が挙げられていく。

「何よりも我が国の皇族どころか、他国の王族を手に掛けようとするなど国家反逆罪と言わずして何と言う。
 公爵家は取り潰し領地は今後直轄地として、領民の為に復興を図る。」

 公爵夫人は、真実を知りながらも止めることは無かったとして毒杯を賜り、既に罪を贖った。

 最後に言うことはないかと、公爵は猿轡を外されたが、公爵は一言も発さず、ただ我が子達を冷たい目で見てから、大人しく断頭台の露と消えた。

 続いて嫡男は喚いていたが、最期は無様に命乞いをしながら、その生涯を閉じた。

 サピラは自慢の縦ロールを短く切り落とされていた。ミカエル様が手加減せずに雷撃を喰らわせたが、気絶しただけで済んだらしい。そこは公爵令嬢らしく高魔力保持者であったということか。
 猿轡を外された途端、いつもと変わらず甲高い声で周りのせいにしている。
 今、この状態ですら自分がどんな末路を辿るのか理解していないのだろうか?
 うるさすぎて、再び猿轡をされて断頭台の前に立ってようやく理解したようだった。最期まで抵抗して幕を閉じた。

 最後は庶子だったユダだ。 
 ユダは心許なげに貴族たちに目を彷徨わせ、僕を見つけると少し目を見開き、ジッと見つめたままだった。
 最期は、ホッと息を吐き、少し微笑んでいたように見えた。

『良かった、お月様。』

 ……そう呟いた気がする。

 その後、大人しくその罪を受け入れた。

 ユダは拘束されていた間、僕の安否をしきりに気にしていたようだが、誰も知らせていなかったらしく、最期に見せた微笑は安堵のものだったのかもしれない。

 セグレトはエイデンの下で厳しい訓練を受けてる。
 家族とも無事再会できて良かったと思った。

 その日、ミカエル様と僕は言葉の少ない食事を終えた。ただ寄り添ってソファに座っていた僕達だったけど、ミカエル様が頬と頬を擦り合わせると、

「寝る前に少し飲もうか。」

 と、寝酒を用意させた。

 なんの説明もなかったけれど、僕も今日の区切りに必要だと思った。グラスを持ち上げて、二人で飲み干した。

 眠る時間になっても、とても離れがたくて今夜はひとつのベッドで眠ることにした。
 一度、お互いの部屋で汗を洗い流し、僕はミカエル様の部屋にお邪魔した。
 本当にただ抱きしめ合って眠るだけでも、ミカエル様の匂いと温かい腕の中で安心して眠れたんだ。

 明日には、普段の僕に戻るからね。



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

記憶を失くしたはずの元夫が、どうか自分と結婚してくれと求婚してくるのですが。

鷲井戸リミカ
BL
メルヴィンは夫レスターと結婚し幸せの絶頂にいた。しかしレスターが勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。やがて勇者レスターが魔王を討ち取ったものの、メルヴィンは夫が自分と離婚し、聖女との再婚を望んでいると知らされる。 死を望まれたメルヴィンだったが、不思議な魔石の力により脱出に成功する。国境を越え、小さな町で暮らし始めたメルヴィン。ある日、ならず者に絡まれたメルヴィンを助けてくれたのは、元夫だった。なんと彼は記憶を失くしているらしい。 君を幸せにしたいと求婚され、メルヴィンの心は揺れる。しかし、メルヴィンは元夫がとある目的のために自分に近づいたのだと知り、慌てて逃げ出そうとするが……。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。

オメガパンダの獣人は麒麟皇帝の運命の番

兎騎かなで
BL
 パンダ族の白露は成人を迎え、生まれ育った里を出た。白露は里で唯一のオメガだ。将来は父や母のように、のんびりとした生活を営めるアルファと結ばれたいと思っていたのに、実は白露は皇帝の番だったらしい。  美味しい笹の葉を分けあって二人で食べるような、鳥を見つけて一緒に眺めて楽しむような、そんな穏やかな時を、激務に追われる皇帝と共に過ごすことはできるのか?   さらに白露には、発情期が来たことがないという悩みもあって……理想の番関係に向かって奮闘する物語。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

処理中です...