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1章 憧れのゲームの世界へ
14話
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「舞依、千歳、夏海ちゃん、大丈夫か!」
焔はみんなの様子をみて、さっき経験した例の現象だと理解した。
だとしたら、しばらくすれば落ち着くはず。
それでも目の前で苦しむみんなを見ていると、焔の冷静さが失われていく。
「落ち着いてください焔さん、大丈夫ですから」
「あ、ああ、悪い……」
明日香に声を掛けられ、少し落ち着きを取り戻した焔。
焔は千歳と夏海に、明日香は舞依に付き添って、事態が収まるのを待った。
それからしばらくして、みんなの様子が落ち着き始める。
一番早く立ちあがったのは、意外にも夏海だった。
「大丈夫か夏海ちゃん」
「はい、もう大丈夫です、ありがとうございます」
焔が夏海を支えるためにそばについていたが、その必要もなくしっかりと立ちあがっていた。
そのあと千歳や舞依も無事に回復したようで、近くの椅子に座り直している。
「これってさっき焔もなってたのだよね」
千歳がこめかみに指をあてながら、焔に確認をする
「ああ、多分な。なんか頭痛というより、自分という存在が頭から引っ張り出されるような感覚がしたよ」
「私もそうだった」
やはりこれは外にいるときに焔に襲い掛かった症状と同じもののようだった。
舞依は怖かったのか、何も言わずに焔にしがみついてじっとしている。
「明日香、実際に見てなにか気づいたことはあるか」
「う~ん、焔さんの話を聞いた時はもしかしたら脳内のスキャンかなと思ったんですけど、実際こんな風になるのかはわからないんですよね」
「脳内スキャン?」
「はい、HIMIKOという企業が作り上げた技術で、実は汐音さんを救うために使われたものでもあるんです」
「汐音さんに? ということはつまり……」
普通に考えて、現実の脳からデータの世界での存在にするためのスキャンということだろう。
ログアウトボタンが使えなくなっているのは、つまりそういうことなのだろうか。
「確信は持てませんけどね、そういう可能性もあるってだけで、そんなことをする理由もわかりませんし」
「確かにな……」
汐音の場合は、現実での死から救うために、データの世界とはいえ、生き続けるための手段だった。
しかし今は違う。
焔の時はログアウトをしようとして、まるでそれを阻止するかのように起きていた。
それはこの世界に閉じ込めようとでもしているかのようだ。
こんな手の込んだことをして、そんなことをする理由が焔にも明日香にもわからなかった。
「そうだ、みんなログアウトはできるか」
焔と同じならログアウトボタンがグレーアウトしているはず。
それに気づいた焔は慌てて確認をする。
それぞれメニュー画面を呼び出すと、みんなの表情がこわばっていく。
「ログアウトボタンが使えないよ」
「私もです……」
「私も……」
やはりみんな同じ状態に陥っていた。
焔はそばにいた舞依の画面をのぞき込むと、自分と同じようにグレーアウトしているログアウトボタンが見える。
ただ時間が二重に表示されているのは焔だけのようだった。
「こんなのどうしたらいいのかな……」
千歳が不安で泣き出しそうな表情をしている。
「幸い、現実での時間はあまり過ぎてないようなので、今日のところはお休みした方がいいんじゃないでしょうか」
明日香は消耗しているみんなを気遣い、休息を提案する。
魔王とは思えないやさしい心の持ち主だと焔は思う。
「そうだな、今のままじゃどうせ何もできないし、心も疲れてる。ゲーム内の休憩と割り切って今日は休もうか」
「あの、それはいいんですけど、お部屋にみんな入るんですか?」
夏海が言うように、もともと泊まるつもりがなかったので部屋はひとつだけ。
この宿は小さく、ベッドも一部屋にひとつずつしかないので、仮にすべての部屋をとっても人数分が足りなかった。
「そうだな、他の部屋をとるしかないとして、別の宿も探さないといけないか」
「あ、私はお兄ちゃんと一緒の部屋でいいよ」
近くの宿を探そうと考えた焔に、舞依が抱きつきながら言った。
「それなら私は舞依ちゃんと一緒がいいです」
「私は焔と一緒がいいなぁ」
舞依に続いて、夏海が舞依と、千歳は焔と同じ部屋を希望する。
さらに明日香がはあはあと息を荒げながら舞依との相部屋を希望。
「とりあえず明日香と舞依は別の部屋にするとして、これだと全員同じ部屋になっちゃうな」
「私だけ別部屋!?」
ショックを受ける明日香をおいて、焔は別の案を出す。
「とりあえず男女は分けておいた方がいいと思うんだ。だから俺と千歳で一部屋、あと二部屋とって女の子で使ってくれたらどうかな」
「え~、私はお兄ちゃんと一緒がいいよ~」
焔の案に舞依がわがままを言う。
「う~ん、それだと夏海ちゃんと別の部屋になっちゃうからな」
舞依に好かれているのはうれしい焔だが、部屋割りがうまくできずに少し困っている。
夏海が人見知りすることを考えると、いきなり明日香とふたりきりにしてしまうことを避けたいと考えていたからだ。
だがその夏海の方から解決案がでた。
「それじゃあ、舞依ちゃんは焔さんの方に行って、私と明日香さんとプルルさんでもう一部屋でどうでしょう」
「え、それはまあうまく割れるけど、舞依と一緒じゃなくて大丈夫?」
焔は一応、初対面の明日香と一緒になるけど大丈夫か、という意味で確認する。
「はい、大丈夫です。それに明日香さんとお話してみたいこともありますし」
夏海は焔の言葉の意味をちゃんと理解したうえで答えた。
「そうか、じゃあ部屋割りはこれでいいか」
焔は確認した後、宿の支払いを済ませ二部屋目を確保。
みんなそれぞれの部屋に分かれて休憩をすることにした。
焔はみんなの様子をみて、さっき経験した例の現象だと理解した。
だとしたら、しばらくすれば落ち着くはず。
それでも目の前で苦しむみんなを見ていると、焔の冷静さが失われていく。
「落ち着いてください焔さん、大丈夫ですから」
「あ、ああ、悪い……」
明日香に声を掛けられ、少し落ち着きを取り戻した焔。
焔は千歳と夏海に、明日香は舞依に付き添って、事態が収まるのを待った。
それからしばらくして、みんなの様子が落ち着き始める。
一番早く立ちあがったのは、意外にも夏海だった。
「大丈夫か夏海ちゃん」
「はい、もう大丈夫です、ありがとうございます」
焔が夏海を支えるためにそばについていたが、その必要もなくしっかりと立ちあがっていた。
そのあと千歳や舞依も無事に回復したようで、近くの椅子に座り直している。
「これってさっき焔もなってたのだよね」
千歳がこめかみに指をあてながら、焔に確認をする
「ああ、多分な。なんか頭痛というより、自分という存在が頭から引っ張り出されるような感覚がしたよ」
「私もそうだった」
やはりこれは外にいるときに焔に襲い掛かった症状と同じもののようだった。
舞依は怖かったのか、何も言わずに焔にしがみついてじっとしている。
「明日香、実際に見てなにか気づいたことはあるか」
「う~ん、焔さんの話を聞いた時はもしかしたら脳内のスキャンかなと思ったんですけど、実際こんな風になるのかはわからないんですよね」
「脳内スキャン?」
「はい、HIMIKOという企業が作り上げた技術で、実は汐音さんを救うために使われたものでもあるんです」
「汐音さんに? ということはつまり……」
普通に考えて、現実の脳からデータの世界での存在にするためのスキャンということだろう。
ログアウトボタンが使えなくなっているのは、つまりそういうことなのだろうか。
「確信は持てませんけどね、そういう可能性もあるってだけで、そんなことをする理由もわかりませんし」
「確かにな……」
汐音の場合は、現実での死から救うために、データの世界とはいえ、生き続けるための手段だった。
しかし今は違う。
焔の時はログアウトをしようとして、まるでそれを阻止するかのように起きていた。
それはこの世界に閉じ込めようとでもしているかのようだ。
こんな手の込んだことをして、そんなことをする理由が焔にも明日香にもわからなかった。
「そうだ、みんなログアウトはできるか」
焔と同じならログアウトボタンがグレーアウトしているはず。
それに気づいた焔は慌てて確認をする。
それぞれメニュー画面を呼び出すと、みんなの表情がこわばっていく。
「ログアウトボタンが使えないよ」
「私もです……」
「私も……」
やはりみんな同じ状態に陥っていた。
焔はそばにいた舞依の画面をのぞき込むと、自分と同じようにグレーアウトしているログアウトボタンが見える。
ただ時間が二重に表示されているのは焔だけのようだった。
「こんなのどうしたらいいのかな……」
千歳が不安で泣き出しそうな表情をしている。
「幸い、現実での時間はあまり過ぎてないようなので、今日のところはお休みした方がいいんじゃないでしょうか」
明日香は消耗しているみんなを気遣い、休息を提案する。
魔王とは思えないやさしい心の持ち主だと焔は思う。
「そうだな、今のままじゃどうせ何もできないし、心も疲れてる。ゲーム内の休憩と割り切って今日は休もうか」
「あの、それはいいんですけど、お部屋にみんな入るんですか?」
夏海が言うように、もともと泊まるつもりがなかったので部屋はひとつだけ。
この宿は小さく、ベッドも一部屋にひとつずつしかないので、仮にすべての部屋をとっても人数分が足りなかった。
「そうだな、他の部屋をとるしかないとして、別の宿も探さないといけないか」
「あ、私はお兄ちゃんと一緒の部屋でいいよ」
近くの宿を探そうと考えた焔に、舞依が抱きつきながら言った。
「それなら私は舞依ちゃんと一緒がいいです」
「私は焔と一緒がいいなぁ」
舞依に続いて、夏海が舞依と、千歳は焔と同じ部屋を希望する。
さらに明日香がはあはあと息を荒げながら舞依との相部屋を希望。
「とりあえず明日香と舞依は別の部屋にするとして、これだと全員同じ部屋になっちゃうな」
「私だけ別部屋!?」
ショックを受ける明日香をおいて、焔は別の案を出す。
「とりあえず男女は分けておいた方がいいと思うんだ。だから俺と千歳で一部屋、あと二部屋とって女の子で使ってくれたらどうかな」
「え~、私はお兄ちゃんと一緒がいいよ~」
焔の案に舞依がわがままを言う。
「う~ん、それだと夏海ちゃんと別の部屋になっちゃうからな」
舞依に好かれているのはうれしい焔だが、部屋割りがうまくできずに少し困っている。
夏海が人見知りすることを考えると、いきなり明日香とふたりきりにしてしまうことを避けたいと考えていたからだ。
だがその夏海の方から解決案がでた。
「それじゃあ、舞依ちゃんは焔さんの方に行って、私と明日香さんとプルルさんでもう一部屋でどうでしょう」
「え、それはまあうまく割れるけど、舞依と一緒じゃなくて大丈夫?」
焔は一応、初対面の明日香と一緒になるけど大丈夫か、という意味で確認する。
「はい、大丈夫です。それに明日香さんとお話してみたいこともありますし」
夏海は焔の言葉の意味をちゃんと理解したうえで答えた。
「そうか、じゃあ部屋割りはこれでいいか」
焔は確認した後、宿の支払いを済ませ二部屋目を確保。
みんなそれぞれの部屋に分かれて休憩をすることにした。
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もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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