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4章 世界樹のダンジョンと失われし焔たちの記憶
94話
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焔が特殊なスキルを使って舞依の本来のステータスを確認する。
すると舞依はすでに上限であるレベル99に達していた。
「どう? 私も結構強いでしょ!」
「あ、ああ……」
いつものように天使のような笑顔を見せる舞依に、焔は少し戸惑う。
舞依がいつの間にかレベルを上げていたりするのは別のゲームでもよくあったことだった。
しかし、フェイクステータスを使ってそれを隠すようなことは今まではしていない。
むしろ積極的に自慢してくるような性格だ。
「なあ、舞依はなんでフェイクステータスなんて使ってるんだ?」
「へ?」
焔の言葉で明日香も舞依のステータスを確認して驚く。
しかし舞依本人は不思議そうな顔をして首を傾げていた。
「あれ? なんでだっけ?」
「覚えてないのか?」
「う~ん、誰かがやってくれた気がするんだけど、思い出せない~」
焔は、最近舞依から感じる妙な気配が気になっていた。
たまに暴走する時もそうだが、中に別人がいるような、そんな感覚。
不気味ではあるが、ただそこから敵意は感じなかった。
舞依らしくはないが、舞依を守っていてくれているような、そんな感じすらも受ける。
「……まあいいか、今のところ害はなさそうだし」
「いいんですか?」
「う~ん、なんとなく大丈夫な気がする」
「そんないい加減な……、私はめちゃくちゃ不安なんですけど」
「そう言われると不安になってくるからやめてくれ。一応舞依が暴走する件は霞さんが調べてくれてるんだけどな」
「お姉ちゃんが?」
「ああ、進展はなさそうだけど」
「私たちにできることはなさそうですね」
「でもレベルが99ってわかったから、俺たちにとっては大戦力だぞ」
「確かにそうですね、このままだと相手の方もレベル99まで出てきそうですしね」
「ああ、舞依にも頑張ってもらわないと厳しいだろうな」
「まあ何があっても私が絶対に守りますけどね」
「おっ、それは俺のことをか?」
「ふたりともです!」
「そうか」
明日香は完全にツンツンな態度のつもりだったが、焔は最近の明日香はデレてきたなぁと思っていた。
「さあ、さっさと行きますよ」
「ああ」
「うん」
三人はまた螺旋階段を上り始める。
次のフロアに着くとすぐにモンスターが出現。
レベルは90で、身長が詩乃くらいしかない黒魔導士の女の子型モンスターだ。
いくらレベルが追いついてきているとはいえ、まだ人数差があるので余裕があるはずだった。
しかし、ここで予想外の出来事が起こる。
焔が突然、手に持っていた刀を床に落としその場に膝をついた。
「どうしたんですか焔さん!?」
明日香は驚いて焔に駆け寄る。
「無理だ、俺には無理だ……」
「何がですか?」
「こんなかわいい女の子を相手に刀を振るうなんて、俺にはできない!」
「は?」
焔の中にあるロリコン魂が、女の子型モンスターへの攻撃を拒否していた。
確かに見た目はほぼ人間で、そして黒くて少しだけセクシーな服装をしている。
焔でなくても攻撃をためらってしまいそうな姿だった。
「そんなこと言ってる場合ですか焔さん! あんな見た目ですがモンスターですよ? NPCですらないんですよ?」
「うぐぐ……」
焔はしっかりと頭では理解していたが、ただ体と気持ちがついていかなかった。
それは今までの人生で、年下の面倒を見続けてきたことが大きいのかもしれない。
「お兄ちゃん殺す! お兄ちゃん殺す!」
「焔さん! ほら、なんかあいつ物騒なこと言ってますよ!?」
「なんで俺狙いなんだよ!?」
黒魔導士少女モンスターは、なぜか焔に狙いを定めて、かわいい見た目に似合わない言葉を吐いていた。
「えいっ!」
相手は焔をめがけて雷魔法を使用した。
「おわっ」
焔はとっさにかわすが、そこに今度は炎魔法を突っ込んでくる。
それをしっかり拾っていた刀で受けとめて吸収し、ノーダメージでやり過ごす。
その後も風魔法や水魔法など、多彩な魔法攻撃を放ち、それはすべて焔にむかっていた。
「なんで俺だけ狙われてんの!? もしかして俺のこと好きなヤンデレさんなのか!?」
「そんなわけないでしょ! 戦う気が感じられないから狙われてるんですよ!」
明日香は本気でそう思っていたが、実際にはそういうわけでもなかった。
相手は別の理由で明確に焔を狙っていたのだ。
「きゃはは、お兄ちゃんをホルマリン漬けにして一生愛してあげる! 私だけのお兄ちゃんになってね!」
「ぎゃあああああああああああ!! やっぱりただのヤンデレじゃねぇか!!」
焔の言っていた通り、相手はヤンデレ属性を持っているモンスターだった。
身の危険を感じ、刀を構えてようやく戦闘態勢に入る焔。
しかし、それよりも先に黒魔導士に突っ込んでいく者がいた。
「えやっ!」
「おっと」
舞依が高速で移動し、雷をまとった剣を振るう。
それを黒魔導士は魔法障壁のようなもので受けとめる。
やはりレベル90にもなると、そう簡単には倒すことができない。
魔法障壁に攻撃が当たってもLPは削れず、舞依の攻撃はモンスターには届かなかった。
焔は舞依にステータス上昇の補助魔法をかけて援護する。
しかしそれでも魔法障壁を破ることができなかった。
「もぉ~! お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだから! これ以上妹は増えなくていいの!!」
「きゃはは、別に妹が何人増えたって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」
「あ、それもそっか」
なぜかそこで納得した舞依は不意に攻撃の手を止めてしまう。
ただモンスターもその隙をついて攻撃してくることもなかった。
「納得してる場合じゃな~い!」
明日香は少し離れたところから、風魔法のウインドカッターを連発して魔法障壁を打ち破る。
その瞬間に今度は焔がモンスターめがけて突進し、刀を振るおうとした。
しかし。
「お兄ちゃん! 私、痛いのやだぁ……」
モンスターはあからさまな演技で焔に精神的な攻撃を仕掛ける。
焔は演技だとわかっていながら、刀を途中で止めてしまった。
「くっ、くそ、やはり俺にはできない……」
刀を落とし、地面に両手をついてうなだれる焔。
そこにモンスターはゆっくりと歩み寄り、両腕で焔の頭を抱きしめる。
焔の顔は黒魔導士のほんのりと膨らんだ胸に押し当てられた。
思わず鼻の下を伸ばす焔だったが、もちろんこんなサービスのために抱きしめられたわけではない。
「きゃはは!」
黒魔導士は楽しそうに笑いながら、直接焔に雷魔法を打ち込んだ。
「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
まるでギャグアニメのような光景だった。
「焔さんのアホ~!!」
明日香は叫びながら焔救出のために黒魔導士の元へと突っ込んでいった。
すると舞依はすでに上限であるレベル99に達していた。
「どう? 私も結構強いでしょ!」
「あ、ああ……」
いつものように天使のような笑顔を見せる舞依に、焔は少し戸惑う。
舞依がいつの間にかレベルを上げていたりするのは別のゲームでもよくあったことだった。
しかし、フェイクステータスを使ってそれを隠すようなことは今まではしていない。
むしろ積極的に自慢してくるような性格だ。
「なあ、舞依はなんでフェイクステータスなんて使ってるんだ?」
「へ?」
焔の言葉で明日香も舞依のステータスを確認して驚く。
しかし舞依本人は不思議そうな顔をして首を傾げていた。
「あれ? なんでだっけ?」
「覚えてないのか?」
「う~ん、誰かがやってくれた気がするんだけど、思い出せない~」
焔は、最近舞依から感じる妙な気配が気になっていた。
たまに暴走する時もそうだが、中に別人がいるような、そんな感覚。
不気味ではあるが、ただそこから敵意は感じなかった。
舞依らしくはないが、舞依を守っていてくれているような、そんな感じすらも受ける。
「……まあいいか、今のところ害はなさそうだし」
「いいんですか?」
「う~ん、なんとなく大丈夫な気がする」
「そんないい加減な……、私はめちゃくちゃ不安なんですけど」
「そう言われると不安になってくるからやめてくれ。一応舞依が暴走する件は霞さんが調べてくれてるんだけどな」
「お姉ちゃんが?」
「ああ、進展はなさそうだけど」
「私たちにできることはなさそうですね」
「でもレベルが99ってわかったから、俺たちにとっては大戦力だぞ」
「確かにそうですね、このままだと相手の方もレベル99まで出てきそうですしね」
「ああ、舞依にも頑張ってもらわないと厳しいだろうな」
「まあ何があっても私が絶対に守りますけどね」
「おっ、それは俺のことをか?」
「ふたりともです!」
「そうか」
明日香は完全にツンツンな態度のつもりだったが、焔は最近の明日香はデレてきたなぁと思っていた。
「さあ、さっさと行きますよ」
「ああ」
「うん」
三人はまた螺旋階段を上り始める。
次のフロアに着くとすぐにモンスターが出現。
レベルは90で、身長が詩乃くらいしかない黒魔導士の女の子型モンスターだ。
いくらレベルが追いついてきているとはいえ、まだ人数差があるので余裕があるはずだった。
しかし、ここで予想外の出来事が起こる。
焔が突然、手に持っていた刀を床に落としその場に膝をついた。
「どうしたんですか焔さん!?」
明日香は驚いて焔に駆け寄る。
「無理だ、俺には無理だ……」
「何がですか?」
「こんなかわいい女の子を相手に刀を振るうなんて、俺にはできない!」
「は?」
焔の中にあるロリコン魂が、女の子型モンスターへの攻撃を拒否していた。
確かに見た目はほぼ人間で、そして黒くて少しだけセクシーな服装をしている。
焔でなくても攻撃をためらってしまいそうな姿だった。
「そんなこと言ってる場合ですか焔さん! あんな見た目ですがモンスターですよ? NPCですらないんですよ?」
「うぐぐ……」
焔はしっかりと頭では理解していたが、ただ体と気持ちがついていかなかった。
それは今までの人生で、年下の面倒を見続けてきたことが大きいのかもしれない。
「お兄ちゃん殺す! お兄ちゃん殺す!」
「焔さん! ほら、なんかあいつ物騒なこと言ってますよ!?」
「なんで俺狙いなんだよ!?」
黒魔導士少女モンスターは、なぜか焔に狙いを定めて、かわいい見た目に似合わない言葉を吐いていた。
「えいっ!」
相手は焔をめがけて雷魔法を使用した。
「おわっ」
焔はとっさにかわすが、そこに今度は炎魔法を突っ込んでくる。
それをしっかり拾っていた刀で受けとめて吸収し、ノーダメージでやり過ごす。
その後も風魔法や水魔法など、多彩な魔法攻撃を放ち、それはすべて焔にむかっていた。
「なんで俺だけ狙われてんの!? もしかして俺のこと好きなヤンデレさんなのか!?」
「そんなわけないでしょ! 戦う気が感じられないから狙われてるんですよ!」
明日香は本気でそう思っていたが、実際にはそういうわけでもなかった。
相手は別の理由で明確に焔を狙っていたのだ。
「きゃはは、お兄ちゃんをホルマリン漬けにして一生愛してあげる! 私だけのお兄ちゃんになってね!」
「ぎゃあああああああああああ!! やっぱりただのヤンデレじゃねぇか!!」
焔の言っていた通り、相手はヤンデレ属性を持っているモンスターだった。
身の危険を感じ、刀を構えてようやく戦闘態勢に入る焔。
しかし、それよりも先に黒魔導士に突っ込んでいく者がいた。
「えやっ!」
「おっと」
舞依が高速で移動し、雷をまとった剣を振るう。
それを黒魔導士は魔法障壁のようなもので受けとめる。
やはりレベル90にもなると、そう簡単には倒すことができない。
魔法障壁に攻撃が当たってもLPは削れず、舞依の攻撃はモンスターには届かなかった。
焔は舞依にステータス上昇の補助魔法をかけて援護する。
しかしそれでも魔法障壁を破ることができなかった。
「もぉ~! お兄ちゃんは私のお兄ちゃんなんだから! これ以上妹は増えなくていいの!!」
「きゃはは、別に妹が何人増えたって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」
「あ、それもそっか」
なぜかそこで納得した舞依は不意に攻撃の手を止めてしまう。
ただモンスターもその隙をついて攻撃してくることもなかった。
「納得してる場合じゃな~い!」
明日香は少し離れたところから、風魔法のウインドカッターを連発して魔法障壁を打ち破る。
その瞬間に今度は焔がモンスターめがけて突進し、刀を振るおうとした。
しかし。
「お兄ちゃん! 私、痛いのやだぁ……」
モンスターはあからさまな演技で焔に精神的な攻撃を仕掛ける。
焔は演技だとわかっていながら、刀を途中で止めてしまった。
「くっ、くそ、やはり俺にはできない……」
刀を落とし、地面に両手をついてうなだれる焔。
そこにモンスターはゆっくりと歩み寄り、両腕で焔の頭を抱きしめる。
焔の顔は黒魔導士のほんのりと膨らんだ胸に押し当てられた。
思わず鼻の下を伸ばす焔だったが、もちろんこんなサービスのために抱きしめられたわけではない。
「きゃはは!」
黒魔導士は楽しそうに笑いながら、直接焔に雷魔法を打ち込んだ。
「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
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---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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