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1.遺物と異物
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ターゲットの車はすぐに見つかった。通りを挟んだ向かいの喫茶店を監視しているので、ノカとアラタは反対側の人しか通れない細い路地から接近した。
アラタが窓ガラスをノックする。ノカは横に立った。
車に乗っていた男は面倒そうに窓を降ろす。アラタと同じくらいの身長だが、横に広く、角張った印象がある。
「なんですか?」
「少しお聞きしたいことがありまして」
空いた隙間にアラタは拳銃を挟み込む。銃口は、丁度男の顔の正面に構えられた。
「お時間ありますか?」
「これは武力による脅しと受け取っていいのかな?」
「ご自由にどうぞ。ついて来てもらえますか?」
「しょうがない。調べても何も無いぞ」
男は車から降りた。
アラタが男に手錠をかけようとした瞬間、男はノカの腕を引っ張る。ノカの身体を壁にして、男はアラタと反対方向に逃げ出した。
「いったいなぁ!」
ノカは手首を回しながら、男を追いかけて走り出す。厚底のブーツの為、うまく走ることができない。一歩一歩が重い。
このままでは追いつけないと思っていると、ノカの視界の横から黒い影が飛び出した。ノカは一瞬遅れてその影がアラタのものであると理解した。ぐんぐんとふたつの影が遠のいていく。
「はやぁい」
ノカは置いていかれた。
アラタは男を追いかける。ノカはおそらくついてこれない、一人で制圧する必要がある。
男の後ろへ振った手首を掴む。男は反転し、捕まれた腕を振り上げ無理矢理外そうとする。その際に生まれた腹部への隙を見逃さず、アラタは掌底を男の鳩尾へ打ち込む。
男は疼きながら前屈みになる。
少し手前に出た頭を目掛けて、アラタは右の回し蹴りを振り抜く。
男はそれを両腕で受ける。大きく左へ身体が傾くが、持ち堪えた。
次の瞬間、アラタは男の両肩を掴み、膝蹴りを浴びせる。護身用結界や身体強化魔法が付与されているため、一発ではダメージが無かった。予想以上に硬いな、というのがアラタの感触だった。
しかし、同じ箇所へ機械のような正確さで衝撃を加え続けると、さすがに耐え切れずに男は地面に丸まった。
アラタは冷静に拳銃を向けた。今度は男の服にめり込む程、至近距離で突き出す。
ノカがアラタに追いついた。息を切らしている。
「は、速いですね、あ、アラタさん」
「手錠」
「あっ、はい」
ノカは男の手に手錠をかける。
「指輪も外しておけ」
「あっ、はい。って私の方が先輩ですけどね!」
ノカは男が着用している、身体強化用の指輪を引き抜いた。彼女の見立てでは、シルヴァ公国の方でよく見られる形式の魔法陣が彫られている。
「それじゃあ連れて帰りましょう。オーリオさんがもうすぐ来ます」
日はすでに傾き始めていた。
しばらくして二人の元へオーリオが到着した。一人で乗るには持て余すような、バンタイプの車に乗ってきた。後部座席の窓は黒く、中を見る事はできない。
「二人とも初日からご苦労だったね。それじゃあ僕が連行するから、二人は来た車を戻しておいて」
「了解しました」
アラタが応えた。
後部座席に男を座らせると、車は走り出した。狭い道なので、バンは反転せず、来た方向と逆向きへ消えていった。
「今日はありがとうございました」
ノカが車を見送りながら言った。
「別にあのくらいの戦闘はモノの数に入らない。むしろ、手応えが無い」
「へ?」
「これなら魔防省に戻った方が良いと思える程だ」
アラタは不満を隠そうとしない。
「あー、まぁ、とりあえず戻りましょう。情報局の捜査はこれからが本番です」
アラタが窓ガラスをノックする。ノカは横に立った。
車に乗っていた男は面倒そうに窓を降ろす。アラタと同じくらいの身長だが、横に広く、角張った印象がある。
「なんですか?」
「少しお聞きしたいことがありまして」
空いた隙間にアラタは拳銃を挟み込む。銃口は、丁度男の顔の正面に構えられた。
「お時間ありますか?」
「これは武力による脅しと受け取っていいのかな?」
「ご自由にどうぞ。ついて来てもらえますか?」
「しょうがない。調べても何も無いぞ」
男は車から降りた。
アラタが男に手錠をかけようとした瞬間、男はノカの腕を引っ張る。ノカの身体を壁にして、男はアラタと反対方向に逃げ出した。
「いったいなぁ!」
ノカは手首を回しながら、男を追いかけて走り出す。厚底のブーツの為、うまく走ることができない。一歩一歩が重い。
このままでは追いつけないと思っていると、ノカの視界の横から黒い影が飛び出した。ノカは一瞬遅れてその影がアラタのものであると理解した。ぐんぐんとふたつの影が遠のいていく。
「はやぁい」
ノカは置いていかれた。
アラタは男を追いかける。ノカはおそらくついてこれない、一人で制圧する必要がある。
男の後ろへ振った手首を掴む。男は反転し、捕まれた腕を振り上げ無理矢理外そうとする。その際に生まれた腹部への隙を見逃さず、アラタは掌底を男の鳩尾へ打ち込む。
男は疼きながら前屈みになる。
少し手前に出た頭を目掛けて、アラタは右の回し蹴りを振り抜く。
男はそれを両腕で受ける。大きく左へ身体が傾くが、持ち堪えた。
次の瞬間、アラタは男の両肩を掴み、膝蹴りを浴びせる。護身用結界や身体強化魔法が付与されているため、一発ではダメージが無かった。予想以上に硬いな、というのがアラタの感触だった。
しかし、同じ箇所へ機械のような正確さで衝撃を加え続けると、さすがに耐え切れずに男は地面に丸まった。
アラタは冷静に拳銃を向けた。今度は男の服にめり込む程、至近距離で突き出す。
ノカがアラタに追いついた。息を切らしている。
「は、速いですね、あ、アラタさん」
「手錠」
「あっ、はい」
ノカは男の手に手錠をかける。
「指輪も外しておけ」
「あっ、はい。って私の方が先輩ですけどね!」
ノカは男が着用している、身体強化用の指輪を引き抜いた。彼女の見立てでは、シルヴァ公国の方でよく見られる形式の魔法陣が彫られている。
「それじゃあ連れて帰りましょう。オーリオさんがもうすぐ来ます」
日はすでに傾き始めていた。
しばらくして二人の元へオーリオが到着した。一人で乗るには持て余すような、バンタイプの車に乗ってきた。後部座席の窓は黒く、中を見る事はできない。
「二人とも初日からご苦労だったね。それじゃあ僕が連行するから、二人は来た車を戻しておいて」
「了解しました」
アラタが応えた。
後部座席に男を座らせると、車は走り出した。狭い道なので、バンは反転せず、来た方向と逆向きへ消えていった。
「今日はありがとうございました」
ノカが車を見送りながら言った。
「別にあのくらいの戦闘はモノの数に入らない。むしろ、手応えが無い」
「へ?」
「これなら魔防省に戻った方が良いと思える程だ」
アラタは不満を隠そうとしない。
「あー、まぁ、とりあえず戻りましょう。情報局の捜査はこれからが本番です」
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