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第一章 壊れた日常の始まり
不相応な時計
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いつもの道を歩く。どんよりと自身の気持ちを反映したかのような薄暗い道。最初は奇異の目で見られていた父と俺を今じゃ誰も気に留めない。
ゾクッとした気味の悪い視線を感じてそちらを見た。薄気味悪い小太りの男がこちらをじっと見ていた。ニタニタと薄気味悪い笑みを浮かべている男は、あのホテルの従業員の男だった。その男の気持ちの悪い視線に怯え、前を歩く父に小走りで近づいた。
いつものホテルへと入るが、この日はまだ客が来ていないようだった。しんと静まり返る。最初は一日1人だった客も日に日に2人、3人と増えていた。初めて会う人もいれば、何度目かの人もいる。中の準備は学校から帰ってきてすぐに家でするか、もしくは学校でもいいからしてこいと言われた。
もう今日の準備は終わっていて、相手が来ない間の沈黙が気まずかった。
「……父さん、お願い。逆らわないし、これからも従順にする。それで……俺、小汚い不衛生な人とはしたくない……だから、そういう相手を連れてこないで欲しい……」
先ほどの小太りの男の視線を思い出し、身震いした。今のところ幸運なことに衛生面で不快な人はいなかった。でも、いつの日か、このまま客を取らされ続けたら、不衛生で気持ち悪い人と出くわす可能性があるかもしれない。父が了承するかは分からない。それでも、懇願するように父にお願いした。なのに、父は何も言ってくれない。
「とうさん、おねがい……」
「それぐらいのお願い聞いてあげなよ、和之さん」
父の返事がなく、不安そうにしていると部屋に入ってきた龍がそう言った。
「このホテルも使わしてあげてるんだからいいでしょ?」
龍がそう言うと父はしぶしぶ頷いた。良かった、と安堵した。プレイで変なことを希望する人はいるけど基本的に清潔な人が多かった。でもたまに、行為の最中に合わさる肌の汗やぬめりに嫌悪を感じていた。清潔な人に対してもそうなのだから、不衛生な人とすることになったら、と考えるだけで身の毛がよだつ。
「弘人くん、少し痩せた?ダメだよ、きちんと食べないと」
そう言われても喉に物が通らないのだからしょうがない。龍は服を脱ぐこともなくそう言った。
「今日はもういいよ。これで何か食べな。和之さんには別にちゃんとあげるからいいでしょ?」
龍は父に確認すると、何枚かのお札をベッドに座る俺の横に置いた。その後、龍は父の方へと向かう。
「はい、和之さん。あぁ、そうだ和之さんにこの時計あげる」
そう言って、お金とは別に龍は自分の腕時計を外して父に渡した。父には似合わない高価な銀色の時計。父はその時計を受け取るとすぐに身につけ、じっと眺めていた。
父の表情は変わらなかったが、外さないところを見ると気に入ったようだった。
ゾクッとした気味の悪い視線を感じてそちらを見た。薄気味悪い小太りの男がこちらをじっと見ていた。ニタニタと薄気味悪い笑みを浮かべている男は、あのホテルの従業員の男だった。その男の気持ちの悪い視線に怯え、前を歩く父に小走りで近づいた。
いつものホテルへと入るが、この日はまだ客が来ていないようだった。しんと静まり返る。最初は一日1人だった客も日に日に2人、3人と増えていた。初めて会う人もいれば、何度目かの人もいる。中の準備は学校から帰ってきてすぐに家でするか、もしくは学校でもいいからしてこいと言われた。
もう今日の準備は終わっていて、相手が来ない間の沈黙が気まずかった。
「……父さん、お願い。逆らわないし、これからも従順にする。それで……俺、小汚い不衛生な人とはしたくない……だから、そういう相手を連れてこないで欲しい……」
先ほどの小太りの男の視線を思い出し、身震いした。今のところ幸運なことに衛生面で不快な人はいなかった。でも、いつの日か、このまま客を取らされ続けたら、不衛生で気持ち悪い人と出くわす可能性があるかもしれない。父が了承するかは分からない。それでも、懇願するように父にお願いした。なのに、父は何も言ってくれない。
「とうさん、おねがい……」
「それぐらいのお願い聞いてあげなよ、和之さん」
父の返事がなく、不安そうにしていると部屋に入ってきた龍がそう言った。
「このホテルも使わしてあげてるんだからいいでしょ?」
龍がそう言うと父はしぶしぶ頷いた。良かった、と安堵した。プレイで変なことを希望する人はいるけど基本的に清潔な人が多かった。でもたまに、行為の最中に合わさる肌の汗やぬめりに嫌悪を感じていた。清潔な人に対してもそうなのだから、不衛生な人とすることになったら、と考えるだけで身の毛がよだつ。
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「今日はもういいよ。これで何か食べな。和之さんには別にちゃんとあげるからいいでしょ?」
龍は父に確認すると、何枚かのお札をベッドに座る俺の横に置いた。その後、龍は父の方へと向かう。
「はい、和之さん。あぁ、そうだ和之さんにこの時計あげる」
そう言って、お金とは別に龍は自分の腕時計を外して父に渡した。父には似合わない高価な銀色の時計。父はその時計を受け取るとすぐに身につけ、じっと眺めていた。
父の表情は変わらなかったが、外さないところを見ると気に入ったようだった。
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