父親に売られた兄は夕闇に翻弄される

miian

文字の大きさ
18 / 43
第一章 壊れた日常の始まり

傍にある輝き

しおりを挟む
 翌日、迅が言っていた屋上へと行ってみた。最近は授業を真面目に聞いても頭に入ってこない。ほぼ毎日客を取らされるようになってからは眠気も酷かった。だから、この日は気分転換にと自分に言い聞かせて屋上へと行ったのだ。

 通常は屋上には鍵がかかっている。でも、迅の言っていた西校舎の屋上の鍵は開いていて簡単に入ることができた。少し先のところに迅は座っていて、外の方を向いて何かを見ているようだ。

「あぁ、来たのか」

 迅はこちらに気付くと、声をかけた。迅の傍へ行くと反対校舎の教室の中が見えた。窓際の席には誰もおらず、それが自分の席だと気付いた。その教室は自分のクラスだったのだ。

「まぁ、座れよ。お前、寝れてんの?別に誰も来ねーから寝ててもいいぞ」
「え?」
「いつも座りながら、うつらうつらしてんじゃん」
「…………」

 まさかそこまで見られているとは思わず、黙っていると迅はクスクス笑い「ほらよ」とクッション代わりの中身の入ってない鞄を渡された。これならない方がマシだ。でも、いらないとは言えず、それを借りて横たわる。ふと空を見上げると今日は優しい日差しで気持ち良かった。

 嫌なことなんて忘れさせてくれるような、今だけは何も考えなくても良いのかもって……。

 視界の端に映るキラキラとした金色の髪。それは太陽の光を吸い込んで輝きを放っている。手を伸ばして触れたくなるような輝き。触れたい、と衝動に駆られるも、次第に視界がぼやけてそれに触れることは叶わなかった。

「……おい……おい、そろそろ起きろ」

 迅が優しく俺の肩を揺らす。どうやらずっと眠っていたようだ。

「大丈夫か?と言うかお前、昨日俺にヤられてるんだからもっと警戒しろよ」

 迅が最後笑いながら言う。

「んー……あぁ……」

 こちらはこちらで寝ぼけた頭で返事をする。それを見て迅は豪快に笑った。迅がこういう風に笑うのは初めてで、この前のお返しに「お前もそんな風に笑うんだな」って言うと、迅は「何だよ」と言って軽く肩にパンチしてきた。

「ほら行くぞ。夕方になると教師が見回りに来る」

 迅が手を差し出したのでそれを素直に受け入れた。

 その日から迅とは屋上でたまに会うようになった。他愛のない話をしたり、時折眠ってはそれを起こしてくれる迅。逆に珍しく迅が転寝をする時は、肩を貸す。

 以前は見下ろしていた遠くの輝きが傍にある。

 でも、それに手を伸ばして触れることは許されないような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 ★1000 Thank_You!!

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談?本気?二人の結末は? 美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。 ※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とスタッフ達とBL営業をして腐女子や腐男子たまに普通のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

僕に双子の義兄が出来まして

サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。 そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。 ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。 …仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。 え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。

処理中です...