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第二章 良太との日々
今日という日
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ーーバタバタ
ベッドで寝ていたところ、うるさい物音で目が覚めた。
眠い目を擦りながら起きると、いつもは俺が目を覚ます前に出て行っている良太が、今日はまだ部屋にいて珍しくいて、その良太はバタバタと慌ただしく動いている。
「あ、ゆうにぃ、ごめん。起こしちゃった?今日は作業がない日だからすぐ戻るから待っててね!」
良太はそう言うと、寝ぼけている俺にチュッとキスして部屋を出て行った。自然な感じでキスをしたので、もしかして毎朝してるのでは?と思い、身震いした。
俺はいつものようにお風呂に入り身支度していると、良太がいつの日かを思い出すように両手に物をたくさん抱えて入ってきた。テーブルにはまた美味しそうなお肉やふわふわのパンに、フルーツやケーキが置かれた。
「ゆうにぃ、今日はご馳走を食べよう!」
良太が嬉しそうにそう言った。でも、俺にはどうしてそんなに良太が嬉しそうなのか分からない。
その疑問に答えるように良太が口を開いた。
「僕たちがこっちの世界に来てちょうど4ヵ月と1日経ったんだ!それでちょっと遅いけど、できなかった誕生日を祝えたらって……」
そう言えば前の世界からこちらに来た日は文化祭で、ちょうどその翌日が俺たちの誕生日だったことを思い出した。こちらの世界に来てすぐですっかりそのことを忘れていた。
まぁ、前の世界にいても誕生日にいい思い出はなかったのだけど……。
「ってことは、今日は3月26日ってことなのか?」
「そうだと思う。実は昨日、王子の部屋で見つけた紙を見て、4ヵ月ちょうど経ってることに気づいたんだ。昨日この国の年間表を貰ったんだけど僕も文字が読めなくて……。でも数えたら多分今日が3月26日なんだ」
そう言って、良太は俺にA4サイズほどの紙を見せた。A4の紙は真ん中が十字に区切られていて、4つに分割されているようだった。
「会話とか本とかは日本語で読めるし、手紙とかの文字も日本語に変換されるんだけど、あいつの字が汚いのか日本語で読めなくて……。この年間表はあいつの手帳からもらってきた。月がないみたいだけど、この日に僕たちが来て、数えていくとちょうど今日が3月26日だと思う」
前の世界のように月の概念がないのか、数字のような文字が羅列されていて四季で大きく管理しているようだった。ところどころにハートマークの印がつけられている。
「この年間表は王子の文字じゃないみたいだけど、これも読めないってこと?」
「うん、なんでか分からないけど、こちらの世界の文字として見える」
良太が何故この表が読めないのかは謎だったけど、そのおかげで今日の日にちとか、こちらの世界の文字が分かって良かった。
高校の学園祭は11月の最後の土曜日で確か25日だった。俺たちが来た日にハートマークがつけられていて、数えていく。確かに数えていたら、今日が3月26日のようだった。
(……こっちの世界に来て、もう4ヶ月以上経ってるってことなのか……)
「ほんとだ。今日が3月26日みたいだな……」
「ゆうにぃ、遅くなったけど誕生日おめでとう」
「良太、遅くなったけど誕生日おめでとう」
2人同時に誕生日を祝う言葉を言ったので、思わず笑ってしまった。良太と席に座り、サンドイッチを食べた後、良太がケーキを机の真ん中に持ってきた。
「こっちの世界ではドライフルーツがたくさん入ったケーキが多くて、生クリームが乗ってるケーキはないみたいなんだ。だから、キッチンの人に伝えて作ってもらったんだ」
良太に「食べよう」と言うと、良太がケーキを取り分けてくれた。早速2人でケーキを食べ始める。
ゴロゴロ入った硬めのドライフルーツのケーキと生クリームが良い感じだ。美味しい。
「ははっ、お前、顔にクリームついてるぞ」
ふと良太を見ると、口の端にクリームがついていることに気づき、思わず笑ってしまう。笑われた良太は顔を赤くして恥ずかしそうにしている。
「そう言うゆうにぃだってついてるからね?!」
良太がそう言うので手で口の端を触ってみるとクリームがついて、「ほんとだ」とまた笑ってしまう。
「ふふっ」
「ははっ」
昔もよく誕生日の時にこんなやり取りをして2人で笑ってて、父や母もそんな俺たちを見て、笑って過ごしたな、と思い出した。父や母は、俺と良太がある日いきなりいなくなって、どうしているかな?
「父さんと母さん……元気かな……俺たち2人とも一緒にいなくなって心配してるよな……」
「……うん……どうしてるだろうね……」
口に出してそのことを伝えると、良太も両親のことを思い出したのか、俯いて心配そうな声で呟いた。
遅ればせながらにも誕生日をお祝いしているはずなのに、部屋はしんみりした空気が漂った。
ベッドで寝ていたところ、うるさい物音で目が覚めた。
眠い目を擦りながら起きると、いつもは俺が目を覚ます前に出て行っている良太が、今日はまだ部屋にいて珍しくいて、その良太はバタバタと慌ただしく動いている。
「あ、ゆうにぃ、ごめん。起こしちゃった?今日は作業がない日だからすぐ戻るから待っててね!」
良太はそう言うと、寝ぼけている俺にチュッとキスして部屋を出て行った。自然な感じでキスをしたので、もしかして毎朝してるのでは?と思い、身震いした。
俺はいつものようにお風呂に入り身支度していると、良太がいつの日かを思い出すように両手に物をたくさん抱えて入ってきた。テーブルにはまた美味しそうなお肉やふわふわのパンに、フルーツやケーキが置かれた。
「ゆうにぃ、今日はご馳走を食べよう!」
良太が嬉しそうにそう言った。でも、俺にはどうしてそんなに良太が嬉しそうなのか分からない。
その疑問に答えるように良太が口を開いた。
「僕たちがこっちの世界に来てちょうど4ヵ月と1日経ったんだ!それでちょっと遅いけど、できなかった誕生日を祝えたらって……」
そう言えば前の世界からこちらに来た日は文化祭で、ちょうどその翌日が俺たちの誕生日だったことを思い出した。こちらの世界に来てすぐですっかりそのことを忘れていた。
まぁ、前の世界にいても誕生日にいい思い出はなかったのだけど……。
「ってことは、今日は3月26日ってことなのか?」
「そうだと思う。実は昨日、王子の部屋で見つけた紙を見て、4ヵ月ちょうど経ってることに気づいたんだ。昨日この国の年間表を貰ったんだけど僕も文字が読めなくて……。でも数えたら多分今日が3月26日なんだ」
そう言って、良太は俺にA4サイズほどの紙を見せた。A4の紙は真ん中が十字に区切られていて、4つに分割されているようだった。
「会話とか本とかは日本語で読めるし、手紙とかの文字も日本語に変換されるんだけど、あいつの字が汚いのか日本語で読めなくて……。この年間表はあいつの手帳からもらってきた。月がないみたいだけど、この日に僕たちが来て、数えていくとちょうど今日が3月26日だと思う」
前の世界のように月の概念がないのか、数字のような文字が羅列されていて四季で大きく管理しているようだった。ところどころにハートマークの印がつけられている。
「この年間表は王子の文字じゃないみたいだけど、これも読めないってこと?」
「うん、なんでか分からないけど、こちらの世界の文字として見える」
良太が何故この表が読めないのかは謎だったけど、そのおかげで今日の日にちとか、こちらの世界の文字が分かって良かった。
高校の学園祭は11月の最後の土曜日で確か25日だった。俺たちが来た日にハートマークがつけられていて、数えていく。確かに数えていたら、今日が3月26日のようだった。
(……こっちの世界に来て、もう4ヶ月以上経ってるってことなのか……)
「ほんとだ。今日が3月26日みたいだな……」
「ゆうにぃ、遅くなったけど誕生日おめでとう」
「良太、遅くなったけど誕生日おめでとう」
2人同時に誕生日を祝う言葉を言ったので、思わず笑ってしまった。良太と席に座り、サンドイッチを食べた後、良太がケーキを机の真ん中に持ってきた。
「こっちの世界ではドライフルーツがたくさん入ったケーキが多くて、生クリームが乗ってるケーキはないみたいなんだ。だから、キッチンの人に伝えて作ってもらったんだ」
良太に「食べよう」と言うと、良太がケーキを取り分けてくれた。早速2人でケーキを食べ始める。
ゴロゴロ入った硬めのドライフルーツのケーキと生クリームが良い感じだ。美味しい。
「ははっ、お前、顔にクリームついてるぞ」
ふと良太を見ると、口の端にクリームがついていることに気づき、思わず笑ってしまう。笑われた良太は顔を赤くして恥ずかしそうにしている。
「そう言うゆうにぃだってついてるからね?!」
良太がそう言うので手で口の端を触ってみるとクリームがついて、「ほんとだ」とまた笑ってしまう。
「ふふっ」
「ははっ」
昔もよく誕生日の時にこんなやり取りをして2人で笑ってて、父や母もそんな俺たちを見て、笑って過ごしたな、と思い出した。父や母は、俺と良太がある日いきなりいなくなって、どうしているかな?
「父さんと母さん……元気かな……俺たち2人とも一緒にいなくなって心配してるよな……」
「……うん……どうしてるだろうね……」
口に出してそのことを伝えると、良太も両親のことを思い出したのか、俯いて心配そうな声で呟いた。
遅ればせながらにも誕生日をお祝いしているはずなのに、部屋はしんみりした空気が漂った。
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