【本編完結・外伝投稿予定】異世界で双子の弟に手篭めにされたけど薬師に救われる

miian

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第二章 良太との日々

口論

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 静まり返った部屋でいない両親のことを2人で考えた。
 以前、良太は両親のことを悪く言っていたけど、本心は違うんじゃないかと思っていた。嫌なところもあったし、喧嘩したこともあった。でも、どれも些細なことで、結局は長年一緒に暮らしてきた家族だから、仲直りしてお互いに好きだったと思う。もちろんその好きは家族として好きなのだけど……。

 そこでふと良太は俺のどこが好きになったのか気になった。弟にどうして好きになったかなんて確認したくないとけど、聞いてみることにした。

「なぁ、俺の……その、どこが好きなんだ?はっきり言って、小さい頃は確かに良く遊んだり、お兄ちゃんとして頼って欲しくてよく一緒にいたけど、大きくなるにつれて俺は良太に対して、その……冷たい態度しかとってなかったと思うんだけど…」

 俺の問いかけに良太は悩みながら、ゆっくりと口を開いて、考えながら教えてくれた。

「……ゆうにぃだけが、小さい時から僕のことをちゃんと見てくれたから……本当の僕を見てくれたのはゆうにぃだけだから……」

 良太の言う「本当の自分を見てくれた」ということがよく分からなかった。
 むしろこの世界に来て、良太の新たな一面を知ることも多く、先ほどの情報だけでは全然分からなかった。

「俺は、全然良太のこと見てなかったよ。実際、こっちの世界に来てから良太の新たな一面に気づくこととか沢山あった。それに、俺なんかより周りの方が、いつも良太を見てたよ?」

「違う。周りは見てなんかない。本当の僕は鈍臭くてしっかりしてなんかない。ゆうにぃに好かれたくて僕がしっかりすればと思って、一生懸命頑張って嫌いな勉強も運動も頑張ったんだよ。成績も運動もゆうにぃには全然及ばなかったけど……。なのに周りは僕を褒めて、ずっと頑張ってるゆうにぃのことなんて見向きもしない。学校で群がる奴もそう。僕は別に人気者になんかなりたくなかった。ゆうにぃの側にいれたら良かった。それに、どれだけ頑張っても根本的に僕の鈍臭いところは変わってなくて、僕がいつもヘマしても助けてくれるのはゆうにぃだけだった……確かに大きくなってから、ゆうにぃに冷たくされることはあったけど、それでも困った時は助けてくれた……」

「それはいつもお前がくっついてたから、ほっとけなくて……」

「僕のことを嫌がってるくせに、僕をほっとけない優しいところが好き。不器用なのに人一倍頑張ってるところも。それに、小さい頃に風邪ひいた時も、ゆうにぃだけが側にいて手を繋いでくれて、安心した。いつも側にいてくれるのはゆうにぃだけだった」

 良太が真剣な目で俺を見てくる。でも、風邪の時は普通に心配だったからで、家族も心配してたように思う。
 良太の気持ちは家族愛からどこかから間違えてしまったんじゃないかと考えた。

「でも、風邪の時は家族として当たり前だし、良太が寝てる時に母さんとかも様子を見に来てたよ?なぁ、さっき母さんや父さんのこと思い出して心配しただろ?俺は元の世界へ戻れないから、せめて良太だけでも元の世界へ戻ってくれないかなって思って「なんで?」」

 良太が俺の言った言葉にかぶせてくる。良太は感情が高ぶったのか立ち上がり、怖い表情をして俺に強い口調で言う。

「なんで?どうしてそんなこと言うの?!今の僕の気持ち聞いてた?」」

「いや、でも良太の俺への気持ちは勘違いだと思うんだ……小さい頃から俺と一緒にいるから……それで……」

「勘違い?さっきの僕の気持ちを聞いてよくそんなこと言えるね。風邪の時、本当に母さんは様子見に来てた?ゆうにぃに看病を押し付けて全然側にいなかったよ?いつもイライラして、ゆうにぃや父さんに八つ当たりばかり。母さんは可愛げのない子ってゆうにぃのことをよく言ってたけど、親が子供に言う言葉?それが本当に家族?父さんはお金にだらしないから、母さんの実家にお金を借りてる手前、母さんの顔色ばかり窺って強く言えない。なのに、ゆうにぃに大学の学費のことは心配するな、なんて言ってて、笑えるよね。あんなの形だけの家族だよ。むしろ家族だなんて思いたくもない」

 良太には内緒にしていたはずの大学の話を何故知っているのか気になったけど、今それを聞く雰囲気ではないことは明白だった。
 良太の様子を見ると、悔しさで唇を噛み締めて涙を堪えているようだった。でも、その後、キッと俺を睨みつけるようにしてまた口を開いた。

「ゆうにぃにのこと、甘やかしすぎたのかな……。甘やかしすぎたからそんなこと思うんだよね?」

「な、ちが……」

 良太の鬼気迫る様子に身が竦んで重わず、俺の目から涙が零れ落ちた。俺は元の世界に戻ることはできないから、だから、せめて良太だけでも元の世界に戻れたらって思っただけなのに……。

「ゆうにぃはさ、僕が帰ってもいいの?この世界で1人だけで生きていけると思ってる?この世界では魔力のない人間は厄介者扱いで、まだ比較的安全なお城でもゆうにぃの居場所はないんだよ?ゆうにぃが頼れる人間は僕しかいないの。それにゆうにぃ、最初魔物に犯されそうになってたでしょ?誰が守ったの?ゆうにぃは僕がいないとこの世界で生きていけないんだよ」

「ちがう……俺はただ……」

「ただ、何?僕の気持ちを聞いて、勘違いだと諭して、僕に元の世界に戻れっていうことが、どれくらい傷つけたか分かってる?しんみりした空気になったから僕を説得できると思ったの?」

 良太は激昂していて俺は何も言えず、下を俯くしかなかった。
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