52 / 286
第二章 良太との日々
口論
しおりを挟む
静まり返った部屋でいない両親のことを2人で考えた。
以前、良太は両親のことを悪く言っていたけど、本心は違うんじゃないかと思っていた。嫌なところもあったし、喧嘩したこともあった。でも、どれも些細なことで、結局は長年一緒に暮らしてきた家族だから、仲直りしてお互いに好きだったと思う。もちろんその好きは家族として好きなのだけど……。
そこでふと良太は俺のどこが好きになったのか気になった。弟にどうして好きになったかなんて確認したくないとけど、聞いてみることにした。
「なぁ、俺の……その、どこが好きなんだ?はっきり言って、小さい頃は確かに良く遊んだり、お兄ちゃんとして頼って欲しくてよく一緒にいたけど、大きくなるにつれて俺は良太に対して、その……冷たい態度しかとってなかったと思うんだけど…」
俺の問いかけに良太は悩みながら、ゆっくりと口を開いて、考えながら教えてくれた。
「……ゆうにぃだけが、小さい時から僕のことをちゃんと見てくれたから……本当の僕を見てくれたのはゆうにぃだけだから……」
良太の言う「本当の自分を見てくれた」ということがよく分からなかった。
むしろこの世界に来て、良太の新たな一面を知ることも多く、先ほどの情報だけでは全然分からなかった。
「俺は、全然良太のこと見てなかったよ。実際、こっちの世界に来てから良太の新たな一面に気づくこととか沢山あった。それに、俺なんかより周りの方が、いつも良太を見てたよ?」
「違う。周りは見てなんかない。本当の僕は鈍臭くてしっかりしてなんかない。ゆうにぃに好かれたくて僕がしっかりすればと思って、一生懸命頑張って嫌いな勉強も運動も頑張ったんだよ。成績も運動もゆうにぃには全然及ばなかったけど……。なのに周りは僕を褒めて、ずっと頑張ってるゆうにぃのことなんて見向きもしない。学校で群がる奴もそう。僕は別に人気者になんかなりたくなかった。ゆうにぃの側にいれたら良かった。それに、どれだけ頑張っても根本的に僕の鈍臭いところは変わってなくて、僕がいつもヘマしても助けてくれるのはゆうにぃだけだった……確かに大きくなってから、ゆうにぃに冷たくされることはあったけど、それでも困った時は助けてくれた……」
「それはいつもお前がくっついてたから、ほっとけなくて……」
「僕のことを嫌がってるくせに、僕をほっとけない優しいところが好き。不器用なのに人一倍頑張ってるところも。それに、小さい頃に風邪ひいた時も、ゆうにぃだけが側にいて手を繋いでくれて、安心した。いつも側にいてくれるのはゆうにぃだけだった」
良太が真剣な目で俺を見てくる。でも、風邪の時は普通に心配だったからで、家族も心配してたように思う。
良太の気持ちは家族愛からどこかから間違えてしまったんじゃないかと考えた。
「でも、風邪の時は家族として当たり前だし、良太が寝てる時に母さんとかも様子を見に来てたよ?なぁ、さっき母さんや父さんのこと思い出して心配しただろ?俺は元の世界へ戻れないから、せめて良太だけでも元の世界へ戻ってくれないかなって思って「なんで?」」
良太が俺の言った言葉にかぶせてくる。良太は感情が高ぶったのか立ち上がり、怖い表情をして俺に強い口調で言う。
「なんで?どうしてそんなこと言うの?!今の僕の気持ち聞いてた?」」
「いや、でも良太の俺への気持ちは勘違いだと思うんだ……小さい頃から俺と一緒にいるから……それで……」
「勘違い?さっきの僕の気持ちを聞いてよくそんなこと言えるね。風邪の時、本当に母さんは様子見に来てた?ゆうにぃに看病を押し付けて全然側にいなかったよ?いつもイライラして、ゆうにぃや父さんに八つ当たりばかり。母さんは可愛げのない子ってゆうにぃのことをよく言ってたけど、親が子供に言う言葉?それが本当に家族?父さんはお金にだらしないから、母さんの実家にお金を借りてる手前、母さんの顔色ばかり窺って強く言えない。なのに、ゆうにぃに大学の学費のことは心配するな、なんて言ってて、笑えるよね。あんなの形だけの家族だよ。むしろ家族だなんて思いたくもない」
良太には内緒にしていたはずの大学の話を何故知っているのか気になったけど、今それを聞く雰囲気ではないことは明白だった。
良太の様子を見ると、悔しさで唇を噛み締めて涙を堪えているようだった。でも、その後、キッと俺を睨みつけるようにしてまた口を開いた。
「ゆうにぃにのこと、甘やかしすぎたのかな……。甘やかしすぎたからそんなこと思うんだよね?」
「な、ちが……」
良太の鬼気迫る様子に身が竦んで重わず、俺の目から涙が零れ落ちた。俺は元の世界に戻ることはできないから、だから、せめて良太だけでも元の世界に戻れたらって思っただけなのに……。
「ゆうにぃはさ、僕が帰ってもいいの?この世界で1人だけで生きていけると思ってる?この世界では魔力のない人間は厄介者扱いで、まだ比較的安全なお城でもゆうにぃの居場所はないんだよ?ゆうにぃが頼れる人間は僕しかいないの。それにゆうにぃ、最初魔物に犯されそうになってたでしょ?誰が守ったの?ゆうにぃは僕がいないとこの世界で生きていけないんだよ」
「ちがう……俺はただ……」
「ただ、何?僕の気持ちを聞いて、勘違いだと諭して、僕に元の世界に戻れっていうことが、どれくらい傷つけたか分かってる?しんみりした空気になったから僕を説得できると思ったの?」
良太は激昂していて俺は何も言えず、下を俯くしかなかった。
以前、良太は両親のことを悪く言っていたけど、本心は違うんじゃないかと思っていた。嫌なところもあったし、喧嘩したこともあった。でも、どれも些細なことで、結局は長年一緒に暮らしてきた家族だから、仲直りしてお互いに好きだったと思う。もちろんその好きは家族として好きなのだけど……。
そこでふと良太は俺のどこが好きになったのか気になった。弟にどうして好きになったかなんて確認したくないとけど、聞いてみることにした。
「なぁ、俺の……その、どこが好きなんだ?はっきり言って、小さい頃は確かに良く遊んだり、お兄ちゃんとして頼って欲しくてよく一緒にいたけど、大きくなるにつれて俺は良太に対して、その……冷たい態度しかとってなかったと思うんだけど…」
俺の問いかけに良太は悩みながら、ゆっくりと口を開いて、考えながら教えてくれた。
「……ゆうにぃだけが、小さい時から僕のことをちゃんと見てくれたから……本当の僕を見てくれたのはゆうにぃだけだから……」
良太の言う「本当の自分を見てくれた」ということがよく分からなかった。
むしろこの世界に来て、良太の新たな一面を知ることも多く、先ほどの情報だけでは全然分からなかった。
「俺は、全然良太のこと見てなかったよ。実際、こっちの世界に来てから良太の新たな一面に気づくこととか沢山あった。それに、俺なんかより周りの方が、いつも良太を見てたよ?」
「違う。周りは見てなんかない。本当の僕は鈍臭くてしっかりしてなんかない。ゆうにぃに好かれたくて僕がしっかりすればと思って、一生懸命頑張って嫌いな勉強も運動も頑張ったんだよ。成績も運動もゆうにぃには全然及ばなかったけど……。なのに周りは僕を褒めて、ずっと頑張ってるゆうにぃのことなんて見向きもしない。学校で群がる奴もそう。僕は別に人気者になんかなりたくなかった。ゆうにぃの側にいれたら良かった。それに、どれだけ頑張っても根本的に僕の鈍臭いところは変わってなくて、僕がいつもヘマしても助けてくれるのはゆうにぃだけだった……確かに大きくなってから、ゆうにぃに冷たくされることはあったけど、それでも困った時は助けてくれた……」
「それはいつもお前がくっついてたから、ほっとけなくて……」
「僕のことを嫌がってるくせに、僕をほっとけない優しいところが好き。不器用なのに人一倍頑張ってるところも。それに、小さい頃に風邪ひいた時も、ゆうにぃだけが側にいて手を繋いでくれて、安心した。いつも側にいてくれるのはゆうにぃだけだった」
良太が真剣な目で俺を見てくる。でも、風邪の時は普通に心配だったからで、家族も心配してたように思う。
良太の気持ちは家族愛からどこかから間違えてしまったんじゃないかと考えた。
「でも、風邪の時は家族として当たり前だし、良太が寝てる時に母さんとかも様子を見に来てたよ?なぁ、さっき母さんや父さんのこと思い出して心配しただろ?俺は元の世界へ戻れないから、せめて良太だけでも元の世界へ戻ってくれないかなって思って「なんで?」」
良太が俺の言った言葉にかぶせてくる。良太は感情が高ぶったのか立ち上がり、怖い表情をして俺に強い口調で言う。
「なんで?どうしてそんなこと言うの?!今の僕の気持ち聞いてた?」」
「いや、でも良太の俺への気持ちは勘違いだと思うんだ……小さい頃から俺と一緒にいるから……それで……」
「勘違い?さっきの僕の気持ちを聞いてよくそんなこと言えるね。風邪の時、本当に母さんは様子見に来てた?ゆうにぃに看病を押し付けて全然側にいなかったよ?いつもイライラして、ゆうにぃや父さんに八つ当たりばかり。母さんは可愛げのない子ってゆうにぃのことをよく言ってたけど、親が子供に言う言葉?それが本当に家族?父さんはお金にだらしないから、母さんの実家にお金を借りてる手前、母さんの顔色ばかり窺って強く言えない。なのに、ゆうにぃに大学の学費のことは心配するな、なんて言ってて、笑えるよね。あんなの形だけの家族だよ。むしろ家族だなんて思いたくもない」
良太には内緒にしていたはずの大学の話を何故知っているのか気になったけど、今それを聞く雰囲気ではないことは明白だった。
良太の様子を見ると、悔しさで唇を噛み締めて涙を堪えているようだった。でも、その後、キッと俺を睨みつけるようにしてまた口を開いた。
「ゆうにぃにのこと、甘やかしすぎたのかな……。甘やかしすぎたからそんなこと思うんだよね?」
「な、ちが……」
良太の鬼気迫る様子に身が竦んで重わず、俺の目から涙が零れ落ちた。俺は元の世界に戻ることはできないから、だから、せめて良太だけでも元の世界に戻れたらって思っただけなのに……。
「ゆうにぃはさ、僕が帰ってもいいの?この世界で1人だけで生きていけると思ってる?この世界では魔力のない人間は厄介者扱いで、まだ比較的安全なお城でもゆうにぃの居場所はないんだよ?ゆうにぃが頼れる人間は僕しかいないの。それにゆうにぃ、最初魔物に犯されそうになってたでしょ?誰が守ったの?ゆうにぃは僕がいないとこの世界で生きていけないんだよ」
「ちがう……俺はただ……」
「ただ、何?僕の気持ちを聞いて、勘違いだと諭して、僕に元の世界に戻れっていうことが、どれくらい傷つけたか分かってる?しんみりした空気になったから僕を説得できると思ったの?」
良太は激昂していて俺は何も言えず、下を俯くしかなかった。
11
あなたにおすすめの小説
人気俳優に拾われてペットにされた件
米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。
そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。
「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。
「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。
これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 1000 Thank_You!!
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
アルファの双子王子に溺愛されて、蕩けるオメガの僕
めがねあざらし
BL
王太子アルセインの婚約者であるΩ・セイルは、
その弟であるシリオンとも関係を持っている──自称“ビッチ”だ。
「どちらも選べない」そう思っている彼は、まだ知らない。
最初から、選ばされてなどいなかったことを。
αの本能で、一人のΩを愛し、支配し、共有しながら、
彼を、甘く蕩けさせる双子の王子たち。
「愛してるよ」
「君は、僕たちのもの」
※書きたいところを書いただけの短編です(^O^)
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる