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第二章 良太との日々
魔鏡の景色
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この日も目が覚めると良太はいつものようにおらず、俺は目を擦りながらベッドの縁に座った。
すると、ガチャっと扉が開いて、そちらを見てみると、良太がカゴバッグと鏡みたいな見慣れないものを両手に持って入ってきた。
持っていたカゴバッグからは、ティーポット、美味しそうなサンドイッチやサラダ、フルーツ、マフィンなど沢山の食事を取り出して机に置いた。机にご馳走を並べた後、鏡らしきものを持ちながら壁を見て、何か悩んでいる。
「それは何なんだ?」
「ゆうにぃ、おはよう。今日は王子がいないらしくて、お昼を一緒に食べれたらって……」
そう言って、良太が壁からこちらへと顔を向けた後、申し訳なさそうにして口を開いた。
「……あと……ごめん、ゆうにぃ。部屋の移動はできないって……」
良太は濁しながらも、このお城で魔力がない俺がいることをよく思ってない人が一部にいること、比翼の魔物が窓から侵入して人を襲っていることなどを教えてもらい、そう言った理由でこの部屋からは移動できないと言われた。
(……分かってたけど……思っていた以上に俺はよく思われていないんだ……)
「部屋移動はできないけど、王子がこの魔鏡をくれたんだ。壁にかけるとこの世界の風景とかが見えるらしくて、興奮して話してたから、多分すごいものではあるらしいんだ」
二人でここらへんかな?と言いながら、机からでもベッドからでも見える位置の壁にかけた。その後、良太は魔鏡と言われるそれの大きさを変えて、少し大きめのテレビぐらいのサイズになった。
「大きさも変えれるなんてすごいな」
目の前でサイズが自由自在に変わるこの世界の道具に感心してしまい、声に出して言うと、良太がクスっと笑った。良太と俺は椅子に座り、鏡の方をじっと見た。少しすると、真っ黒で何も映っていなかった鏡が徐々に明るくなった。
太陽の光が差し込む森林に猿に似た生き物が映った。猿はツノのようなものが一本生えていてつぶらな瞳をしてりいるその姿は、見ていて可愛らしい。
「「おぉ」」
二人して同じ驚きの声を上げてしまう。猿みたいな生き物は「クルックルッ」と聞きなれない声で鳴いていた。
その後も二人でその生き物の様子を見ていると、猿は木の実を食べ始め、噛み潰す度に甘酸っぱい匂いがしてきた。
(匂いまでするなんてすごいな……)
「可愛いね」
魔鏡は映している先で強風が吹くと部屋にも風が吹いたり、違う景色や生き物を見たいと思ったら勝手に切り替わってくれて、まるで意志を持っているようだった。ちなみに消したいと思うと消えてもくれる。
これなら窓がなくてもちょっとは気分転換にはなりそうだと思い、良太に「ありがとう」と伝えた。
その魔鏡の景色をずっと見ていても飽きることはなく、良太と俺は夢中で見ていた。
ふと、そう言えば前の世界でもこんなテレビ番組があったなと思い出す。
「こんなテレビ番組あったよね」
俺よりも先に良太がそう言った。良太も俺と同じことを思い出していたのだ。考えていたことを良太が呟いたので俺は思わず笑ってしまった。
「今、俺も思い出してた!あったよな、こういう番組」
「そうそう、ゆうにぃも僕も小さい頃からこういう番組が好きで、ずっとテレビにくっついて二人で見てたらお母さんに怒られたよね」
二人で昔の思い出を話しつつ、魔鏡を見ながら良太の持ってきた食事を食べた。
魔鏡から流れるゆったりした自然の音は心地良く、この日は眠る直前までずっと魔鏡を見ていた。
二人で「あれ面白いね」とか「何食べてるんだろうね?」と言いいながらベッドでも見ていたら、いつの間にか二人で眠りについていた。
瞼が重くなり眠りにつく前、横で寝息を立てている良太の顔が目に入った。そのスヤスヤと眠る良太を見て、今日みたいに良太と何気ない話をしていた頃に戻りたいな……と思いながら、俺は瞼を閉じた。
すると、ガチャっと扉が開いて、そちらを見てみると、良太がカゴバッグと鏡みたいな見慣れないものを両手に持って入ってきた。
持っていたカゴバッグからは、ティーポット、美味しそうなサンドイッチやサラダ、フルーツ、マフィンなど沢山の食事を取り出して机に置いた。机にご馳走を並べた後、鏡らしきものを持ちながら壁を見て、何か悩んでいる。
「それは何なんだ?」
「ゆうにぃ、おはよう。今日は王子がいないらしくて、お昼を一緒に食べれたらって……」
そう言って、良太が壁からこちらへと顔を向けた後、申し訳なさそうにして口を開いた。
「……あと……ごめん、ゆうにぃ。部屋の移動はできないって……」
良太は濁しながらも、このお城で魔力がない俺がいることをよく思ってない人が一部にいること、比翼の魔物が窓から侵入して人を襲っていることなどを教えてもらい、そう言った理由でこの部屋からは移動できないと言われた。
(……分かってたけど……思っていた以上に俺はよく思われていないんだ……)
「部屋移動はできないけど、王子がこの魔鏡をくれたんだ。壁にかけるとこの世界の風景とかが見えるらしくて、興奮して話してたから、多分すごいものではあるらしいんだ」
二人でここらへんかな?と言いながら、机からでもベッドからでも見える位置の壁にかけた。その後、良太は魔鏡と言われるそれの大きさを変えて、少し大きめのテレビぐらいのサイズになった。
「大きさも変えれるなんてすごいな」
目の前でサイズが自由自在に変わるこの世界の道具に感心してしまい、声に出して言うと、良太がクスっと笑った。良太と俺は椅子に座り、鏡の方をじっと見た。少しすると、真っ黒で何も映っていなかった鏡が徐々に明るくなった。
太陽の光が差し込む森林に猿に似た生き物が映った。猿はツノのようなものが一本生えていてつぶらな瞳をしてりいるその姿は、見ていて可愛らしい。
「「おぉ」」
二人して同じ驚きの声を上げてしまう。猿みたいな生き物は「クルックルッ」と聞きなれない声で鳴いていた。
その後も二人でその生き物の様子を見ていると、猿は木の実を食べ始め、噛み潰す度に甘酸っぱい匂いがしてきた。
(匂いまでするなんてすごいな……)
「可愛いね」
魔鏡は映している先で強風が吹くと部屋にも風が吹いたり、違う景色や生き物を見たいと思ったら勝手に切り替わってくれて、まるで意志を持っているようだった。ちなみに消したいと思うと消えてもくれる。
これなら窓がなくてもちょっとは気分転換にはなりそうだと思い、良太に「ありがとう」と伝えた。
その魔鏡の景色をずっと見ていても飽きることはなく、良太と俺は夢中で見ていた。
ふと、そう言えば前の世界でもこんなテレビ番組があったなと思い出す。
「こんなテレビ番組あったよね」
俺よりも先に良太がそう言った。良太も俺と同じことを思い出していたのだ。考えていたことを良太が呟いたので俺は思わず笑ってしまった。
「今、俺も思い出してた!あったよな、こういう番組」
「そうそう、ゆうにぃも僕も小さい頃からこういう番組が好きで、ずっとテレビにくっついて二人で見てたらお母さんに怒られたよね」
二人で昔の思い出を話しつつ、魔鏡を見ながら良太の持ってきた食事を食べた。
魔鏡から流れるゆったりした自然の音は心地良く、この日は眠る直前までずっと魔鏡を見ていた。
二人で「あれ面白いね」とか「何食べてるんだろうね?」と言いいながらベッドでも見ていたら、いつの間にか二人で眠りについていた。
瞼が重くなり眠りにつく前、横で寝息を立てている良太の顔が目に入った。そのスヤスヤと眠る良太を見て、今日みたいに良太と何気ない話をしていた頃に戻りたいな……と思いながら、俺は瞼を閉じた。
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