117 / 286
第四章 交錯
スハンのお手伝い
しおりを挟む
図書館へ行くようになってからスハンの手伝いを以前よりするようになった。本の整理や古いものは劣化していないかなどチェックして補修したりする手伝いだ。分からないことがあると、俺はたどたどしい言葉でスハンに聞いたりジェスチャーで伝えたりするけど、スハンは嫌な顔せず聞いて教えてくれる。
『ーーー!』
図書館で子供が誰かを呼ぶ声がした。確かお兄ちゃんとかって単語だったじゃないだろうか?
その呼ぶ声の方を見てみると小さな女の子が小走りでスハンに近寄る。スハンに似て少し日焼けした肌に肩下まである黒髪は2つくくりにされていた。
その子の詳しい年齢は分からないけど、小学校の低学年ぐらいの年齢じゃないかと思う。スハンの元までたどり着いた女の子は、大きな目に黒い瞳で口を綻ばせてスハンに抱きついた。スハンは最初驚いた顔をして周りをキョロキョロしていたけど、女の子が抱きつくと嬉しそうに顔を緩めてその女の子を抱きしめる。
そこでようやくその子が以前見た写真の女の子であることを思い出し、「あ!スハンの妹か!」と声を出してしまった。女の子は俺の声に気づき、そして異国の言葉で分からなかったのだろう、首を傾げてこちらを見上げる。キョトンとした表情であどけなさのある少女を見るとこちらも癒される。
「はじめまして、優馬って言います」
言葉が通じないと分かっているものの挨拶をする。女の子はペコっとお辞儀した後、スハンに隠れるようにしてこちらを覗き込む。警戒するような心配しているような、そんな表情だ。
(俺なりの笑顔で挨拶したけど怖がらせちゃったかな……)
良太と違い、俺の目は切れ長で小さな子から見ると怖いように思われることもあった。スハンの妹を怖がらせてしまったかもしれない……そう思うと悲しくなりシュンと肩を落としてしまう。
スハンが女の子の視線に合うように屈み込み、女の子に何か伝えている。女の子はスハンの言葉を聞いて頷いた後、俺に顔を向けて笑ってくれた。目を細めて笑う仕草がスハンに似ているなぁ。俺も笑って返事をする。スハンが紙に文字を書いた。
「ミ……ン……?」
俺が文字を読み上げるとスハンが笑顔になり頷く。スハンが女の子の名前を教えてくれたのだということが分かった。
「ミンちゃん、よろしくね」
改めて声を掛けると、ミンちゃんもお辞儀してくれた。初めて大輝さんの薬屋に行った時に、スハンの妹は身体が弱く大輝さんから薬をもらっていると聞いたことを思い出す。
こちらの世界に来てから1年くらい?が経とうとしているけど、ミンちゃんがこの図書館へ来ているのを初めて見た。
今はまだ昼前で学校に行っている時間だと思うけど、今日は休みだろうか?
紙に俺は絵を描いてスハンに聞くことにした。鉛筆、ノート、そして学校の絵を描くと、スハンは首を横に振って、学校にバッテンをして1人の男の人とミンちゃんの絵を描いた。どうもミンちゃんは身体のことがあり、学校へは行っておらず普段は教えてくれている人がいるらしい。
スハンと知り合って結構日が経つのに、スハンの妹の名前や学校に行ってないことも今日初めて知り、スハンのこと全然知らないな……と嘆いた。でも、大輝さんがスハンの手伝いをできるようにしてくれたので、これからスハンのことを知っていこうと前向きに考えた。
(あれ?じゃぁ、なんで今日はミンちゃんは図書館にいるんだろう?)
その疑問はスハンも感じていたのか、ミンちゃんに聞いているみたいだ。
スハンはミンちゃんに頷いた後、こちらを向いてミンちゃんを指差し、スハン自身と俺、そして机を指した。
おそらく一緒に作業していいか?という意味だろうと思い、頷いた。そのジェスチャーの意味はあっていたらしく、真ん中にミンちゃんを挟む形で3人で机に並び、俺とスハンは本の補修をしつつ、ミンちゃんは数字の勉強をしているようだった。
スハンが今俺がしている補修が終われば、勉強していいよと俺に伝えてくれる。スハンに『ありがとう』と伝えて、補修を終えた後、紙と鉛筆を取り出した。
隣のミンちゃんにならって、今日は数字の勉強でもしようかな……。数字については以前良太が持ち帰ってくれた年間表でなんとなく知っていた。
この世界で生きていくなら、数字は知っていないとダメだもんね……。
でも、こちらの世界の数字は言葉と同様にミミズみたいな文字で、しかも以前の世界に比べて構成も複雑なのだ。
数字と睨めっこしながら「う~んう~ん」と唸っていると、隣にいるミンちゃんがクスクス笑いながら教えてくれる。年下の子に教えられる気恥ずかしさもありつつ、素直に教わる。
優しく、そして分かりやすく教えてくれるミンちゃんはやっぱりスハンの妹だなと思った。
俺が理解して嬉しそうな表情をするとミンちゃんもつられて笑ってくれ、その様子を見てスハンも笑う。
この日は3人で楽しく図書館で過ごして、幸せな時間を過ごした。
『ーーー!』
図書館で子供が誰かを呼ぶ声がした。確かお兄ちゃんとかって単語だったじゃないだろうか?
その呼ぶ声の方を見てみると小さな女の子が小走りでスハンに近寄る。スハンに似て少し日焼けした肌に肩下まである黒髪は2つくくりにされていた。
その子の詳しい年齢は分からないけど、小学校の低学年ぐらいの年齢じゃないかと思う。スハンの元までたどり着いた女の子は、大きな目に黒い瞳で口を綻ばせてスハンに抱きついた。スハンは最初驚いた顔をして周りをキョロキョロしていたけど、女の子が抱きつくと嬉しそうに顔を緩めてその女の子を抱きしめる。
そこでようやくその子が以前見た写真の女の子であることを思い出し、「あ!スハンの妹か!」と声を出してしまった。女の子は俺の声に気づき、そして異国の言葉で分からなかったのだろう、首を傾げてこちらを見上げる。キョトンとした表情であどけなさのある少女を見るとこちらも癒される。
「はじめまして、優馬って言います」
言葉が通じないと分かっているものの挨拶をする。女の子はペコっとお辞儀した後、スハンに隠れるようにしてこちらを覗き込む。警戒するような心配しているような、そんな表情だ。
(俺なりの笑顔で挨拶したけど怖がらせちゃったかな……)
良太と違い、俺の目は切れ長で小さな子から見ると怖いように思われることもあった。スハンの妹を怖がらせてしまったかもしれない……そう思うと悲しくなりシュンと肩を落としてしまう。
スハンが女の子の視線に合うように屈み込み、女の子に何か伝えている。女の子はスハンの言葉を聞いて頷いた後、俺に顔を向けて笑ってくれた。目を細めて笑う仕草がスハンに似ているなぁ。俺も笑って返事をする。スハンが紙に文字を書いた。
「ミ……ン……?」
俺が文字を読み上げるとスハンが笑顔になり頷く。スハンが女の子の名前を教えてくれたのだということが分かった。
「ミンちゃん、よろしくね」
改めて声を掛けると、ミンちゃんもお辞儀してくれた。初めて大輝さんの薬屋に行った時に、スハンの妹は身体が弱く大輝さんから薬をもらっていると聞いたことを思い出す。
こちらの世界に来てから1年くらい?が経とうとしているけど、ミンちゃんがこの図書館へ来ているのを初めて見た。
今はまだ昼前で学校に行っている時間だと思うけど、今日は休みだろうか?
紙に俺は絵を描いてスハンに聞くことにした。鉛筆、ノート、そして学校の絵を描くと、スハンは首を横に振って、学校にバッテンをして1人の男の人とミンちゃんの絵を描いた。どうもミンちゃんは身体のことがあり、学校へは行っておらず普段は教えてくれている人がいるらしい。
スハンと知り合って結構日が経つのに、スハンの妹の名前や学校に行ってないことも今日初めて知り、スハンのこと全然知らないな……と嘆いた。でも、大輝さんがスハンの手伝いをできるようにしてくれたので、これからスハンのことを知っていこうと前向きに考えた。
(あれ?じゃぁ、なんで今日はミンちゃんは図書館にいるんだろう?)
その疑問はスハンも感じていたのか、ミンちゃんに聞いているみたいだ。
スハンはミンちゃんに頷いた後、こちらを向いてミンちゃんを指差し、スハン自身と俺、そして机を指した。
おそらく一緒に作業していいか?という意味だろうと思い、頷いた。そのジェスチャーの意味はあっていたらしく、真ん中にミンちゃんを挟む形で3人で机に並び、俺とスハンは本の補修をしつつ、ミンちゃんは数字の勉強をしているようだった。
スハンが今俺がしている補修が終われば、勉強していいよと俺に伝えてくれる。スハンに『ありがとう』と伝えて、補修を終えた後、紙と鉛筆を取り出した。
隣のミンちゃんにならって、今日は数字の勉強でもしようかな……。数字については以前良太が持ち帰ってくれた年間表でなんとなく知っていた。
この世界で生きていくなら、数字は知っていないとダメだもんね……。
でも、こちらの世界の数字は言葉と同様にミミズみたいな文字で、しかも以前の世界に比べて構成も複雑なのだ。
数字と睨めっこしながら「う~んう~ん」と唸っていると、隣にいるミンちゃんがクスクス笑いながら教えてくれる。年下の子に教えられる気恥ずかしさもありつつ、素直に教わる。
優しく、そして分かりやすく教えてくれるミンちゃんはやっぱりスハンの妹だなと思った。
俺が理解して嬉しそうな表情をするとミンちゃんもつられて笑ってくれ、その様子を見てスハンも笑う。
この日は3人で楽しく図書館で過ごして、幸せな時間を過ごした。
2
あなたにおすすめの小説
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 1000 Thank_You!!
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
小っちゃくたって猛禽類!〜消えてしまえと言われたので家を出ます。父上母上兄上それから婚約者様ごめんなさい〜
れると
BL
【第3部完結!】
第4部誠意執筆中。平日なるべく毎日更新を目標にしてますが、戦闘シーンとか魔物シーンとかかなり四苦八苦してますのでぶっちゃけ不定期更新です!いつも読みに来てくださってありがとうございます!いいね、エール励みになります!
↓↓あらすじ(?)
僕はツミという種族の立派な猛禽類だ!世界一小さくたって猛禽類なんだ!
僕にあの婚約者は勿体ないって?消えてしまえだって?いいよ、消えてあげる。だって僕の夢は冒険者なんだから!
家には兄上が居るから跡継ぎは問題ないし、母様のお腹の中には双子の赤ちゃんだって居るんだ。僕が居なくなっても問題無いはず、きっと大丈夫。
1人でだって立派に冒険者やってみせる!
父上、母上、兄上、これから産まれてくる弟達、それから婚約者様。勝手に居なくなる僕をお許し下さい。僕は家に帰るつもりはございません。
立派な冒険者になってみせます!
第1部 完結!兄や婚約者から見たエイル
第2部エイルが冒険者になるまで①
第3部エイルが冒険者になるまで②
第4部エイル、旅をする!
第5部隠れタイトル パンイチで戦う元子爵令息(までいけるかな?)
・
・
・
の予定です。
不定期更新になります、すみません。
家庭の都合上で土日祝日は更新できません。
※BLシーンは物語の大分後です。タイトル後に※を付ける予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる