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第四章 交錯
禁書 良太side
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契約魔法石でだまし討ちのような形で契約させられてから、見た目的には契約に従うような形で行動はしている。見た目的にはだ。
契約違反にはならない程度に討伐へ行く騎士たちの馬車の結界をわざと疎かにしたりして騎士たちが怪我するように仕向けた。以前はわざと失敗するなんて高度なことはできなかったけど、大輝を転移魔法で移動させた時に失敗して放り出すことができなかったことが悔しくて修練した。
『今日もいい天気だねー。良太、ここの結界もお願いしていい?』
今日はグルファン王国南東にある隣国・アルツナハインの国境付近で結界作業している。この王子は天気のことをよく話していて呑気だなといつも思う。でも、この日は蒸し暑い季節が終わりに近づき、晴れた天気は気持ちの良い風を送ってくれてゆうにぃと散歩したいなと思った。ゆうにぃと街へ出かけることもままならぬ状態なので、散歩することは厳しいと分かっているけど……。
夜の魔物討伐会議では王子と騎士団長、たまに騎士団長補佐やら他の人間が同席したりして、興味のない魔物討伐の状況を聞くはめになっている。まぁ、各国の場所の把握や状況が分かるのでそこは良しとする。
魔物討伐会議に大輝を同席させたいと言われた時は、嫌だと拒絶した。だけど、もし僕が会議に出ている間にゆうにぃの所へ行かれてはたまらないと思い、同席することを承諾した。
ゆうにぃの部屋に結界を張っているもののあいつが近づくのも許さない。おかげでゆうにぃに食事を持って行って会った後に嫌いな男の顔を見て、1日を終わらないといけないはめになった。
そこであの大輝という男について気になった。あの男はパッと見ても魔力が凄い感じではないし、どちらかと言えば魔力が無い人間に近い方だろう。この世界、特にこの国の王族は魔力が無い人間を嫌っている節があるのに、あいつが城で働くことを歓迎しているのだから能力が突出しているんだろうか?と疑問に思ったのだ。
『あの薬師は凄いのか?』
『ん?あぁ、大輝のこと?そうだね彼の薬は類い稀ないくらいに効くね』
聞くと、やはり召喚者というだけあってかあいつが作る薬は凄い効能らしい。街や騎士団にも卸されているとのことで、ゆうにぃがこちらの世界へ来た当初、魔物に襲われて怪我した時に使用したのもあいつが作った薬みたいだ。
知らなかったとはいえ、あいつの薬をゆうにぃに使用してしまったことに憤りを覚える。
『あいつで他に何か知ってることはある?』
『良太が大輝のこと聞くなんて珍しいね?んー、全体的に面倒見がいいよね。お年寄りとかにもだけど年下の子にも優しいし。妹のこと第一優先のスハンも懐いているもんね。まぁ、スハンの場合、妹の薬を作ってもらってるからかもだけど』
『ふーん……』
『あぁ、確か弟がいるとかって言ってたな。まぁ、大輝は元の世界に戻らず、こちらの世界に残ることを選んだからもう弟には会えないけどね』
そう言えば、スハンは妹の治療のために田舎から出てきたと以前聞いたことを思い出す。スハンの妹の薬も大輝が作っていることを理解した。
会えない弟に被せて、ゆうにぃに近づいた?それなら気持ち悪いな。
(スハンにも一度会いに行かないとな……)
大体、ゆうにぃに何かあれば妹がどうなるか分からないぞとスハンを脅しまでしたのに、ゆうにぃと大輝の接触を許してる時点であり得ないよね。
『というかあいつの存在を今まで聞いたことがなかったんだけど』
あいつは僕たちが召喚される1つ前の召喚者だと言うのだ。以前第二王子と前召喚者の話になった時に話題に出てもおかしくないはずなのに、今まで薬師の存在を聞いたことがなかった。
もっと早く教えとけと僕が非難していると分かったのだろう、王子が口を開く。
『良太が興味ないと思って……。それに彼には魔力があまりないし、さっさと役割を終わらせてしまったから記憶にもあまりなかったんだよ……』
王子が申し訳なさそうな顔をしながら『あと、僕の好みじゃなかったし……』と小さく呟く。
本当に役に立たない……そう思いながら王子を睨みつける。王子が『ごめんよ~』と軽い気持ちで謝ってくることにもまた苛立ちを覚える。
その時、王子の通信石が震え、王子はそれに出た。
『ユグリルどうしたんだい?あぁ、今、大丈夫だよ』
『アルツナハインへと繋がる森・ハイネスの祠から禁書が発見されました』
『まだそんな所にあったんだね……無駄になるかもしれないけど、鑑識後、解読チームに回して保管庫へ』
『承知しました』
目の前で会話が繰り広げられ、禁書というワードが聞こえてくる。と言うか、通信石って周りにこんなに聞こえて良いのだろうか?と疑問に思ってしまう。
『通信石ってそんなに声が漏れてていいのか?』
『音量調整が難しくって!』
『ふぅん……禁書って何?』
『禁書は閲覧するのに魔術が膨大に必要だったり、禁術が載っていたりするものっていう感じかな?古代語で書かれているから読めないのと、変な魔術ーー呪いとかだね、そういうものが付加されてないか、とか鑑識してから禁書庫に厳重に保管されるんだ』
『ふぅん……今度見てみたいんだけど』
『さすがの良太でも禁書を読むのは難しいんじゃないかな?古代語だし、閲覧するのも容易じゃないし……』
ルウファ国立図書館の本は膨大で専門書も多くある。でも、ずっと疑問に思うこともあったのだ。
何というか正しい内容しか書かれていない本が多いというか……歴史についてもこのグルファン王国を中心に書かれていることが多かった。禁書の存在を聞いて納得する。
『禁書庫はどこにあるんだ?』
『……もしかして勝手に見に行こうとか思ってないよね?さすがの良太でも教えてあげられないよー。さすがに父上に怒られる』
父上と聞いて国王陛下のことを思い出す。ここに来てから季節的にももうすぐ1年かそれ以上になるのではないだろうか?国王陛下はこの国のトップのはずなのに、全然出てこず、この目の前の王子が色々と担っているらしい。
国王陛下を殺せば手っ取り早いのかな?とつい考えてしまう。
いや、まずはあの男、大輝を殺さないと……
王子の『次はここに結界を……』という声に我に返り、契約魔法石の解除も早くしないといけなにのに……と考えることがいっぱいでため息をついた。
契約違反にはならない程度に討伐へ行く騎士たちの馬車の結界をわざと疎かにしたりして騎士たちが怪我するように仕向けた。以前はわざと失敗するなんて高度なことはできなかったけど、大輝を転移魔法で移動させた時に失敗して放り出すことができなかったことが悔しくて修練した。
『今日もいい天気だねー。良太、ここの結界もお願いしていい?』
今日はグルファン王国南東にある隣国・アルツナハインの国境付近で結界作業している。この王子は天気のことをよく話していて呑気だなといつも思う。でも、この日は蒸し暑い季節が終わりに近づき、晴れた天気は気持ちの良い風を送ってくれてゆうにぃと散歩したいなと思った。ゆうにぃと街へ出かけることもままならぬ状態なので、散歩することは厳しいと分かっているけど……。
夜の魔物討伐会議では王子と騎士団長、たまに騎士団長補佐やら他の人間が同席したりして、興味のない魔物討伐の状況を聞くはめになっている。まぁ、各国の場所の把握や状況が分かるのでそこは良しとする。
魔物討伐会議に大輝を同席させたいと言われた時は、嫌だと拒絶した。だけど、もし僕が会議に出ている間にゆうにぃの所へ行かれてはたまらないと思い、同席することを承諾した。
ゆうにぃの部屋に結界を張っているもののあいつが近づくのも許さない。おかげでゆうにぃに食事を持って行って会った後に嫌いな男の顔を見て、1日を終わらないといけないはめになった。
そこであの大輝という男について気になった。あの男はパッと見ても魔力が凄い感じではないし、どちらかと言えば魔力が無い人間に近い方だろう。この世界、特にこの国の王族は魔力が無い人間を嫌っている節があるのに、あいつが城で働くことを歓迎しているのだから能力が突出しているんだろうか?と疑問に思ったのだ。
『あの薬師は凄いのか?』
『ん?あぁ、大輝のこと?そうだね彼の薬は類い稀ないくらいに効くね』
聞くと、やはり召喚者というだけあってかあいつが作る薬は凄い効能らしい。街や騎士団にも卸されているとのことで、ゆうにぃがこちらの世界へ来た当初、魔物に襲われて怪我した時に使用したのもあいつが作った薬みたいだ。
知らなかったとはいえ、あいつの薬をゆうにぃに使用してしまったことに憤りを覚える。
『あいつで他に何か知ってることはある?』
『良太が大輝のこと聞くなんて珍しいね?んー、全体的に面倒見がいいよね。お年寄りとかにもだけど年下の子にも優しいし。妹のこと第一優先のスハンも懐いているもんね。まぁ、スハンの場合、妹の薬を作ってもらってるからかもだけど』
『ふーん……』
『あぁ、確か弟がいるとかって言ってたな。まぁ、大輝は元の世界に戻らず、こちらの世界に残ることを選んだからもう弟には会えないけどね』
そう言えば、スハンは妹の治療のために田舎から出てきたと以前聞いたことを思い出す。スハンの妹の薬も大輝が作っていることを理解した。
会えない弟に被せて、ゆうにぃに近づいた?それなら気持ち悪いな。
(スハンにも一度会いに行かないとな……)
大体、ゆうにぃに何かあれば妹がどうなるか分からないぞとスハンを脅しまでしたのに、ゆうにぃと大輝の接触を許してる時点であり得ないよね。
『というかあいつの存在を今まで聞いたことがなかったんだけど』
あいつは僕たちが召喚される1つ前の召喚者だと言うのだ。以前第二王子と前召喚者の話になった時に話題に出てもおかしくないはずなのに、今まで薬師の存在を聞いたことがなかった。
もっと早く教えとけと僕が非難していると分かったのだろう、王子が口を開く。
『良太が興味ないと思って……。それに彼には魔力があまりないし、さっさと役割を終わらせてしまったから記憶にもあまりなかったんだよ……』
王子が申し訳なさそうな顔をしながら『あと、僕の好みじゃなかったし……』と小さく呟く。
本当に役に立たない……そう思いながら王子を睨みつける。王子が『ごめんよ~』と軽い気持ちで謝ってくることにもまた苛立ちを覚える。
その時、王子の通信石が震え、王子はそれに出た。
『ユグリルどうしたんだい?あぁ、今、大丈夫だよ』
『アルツナハインへと繋がる森・ハイネスの祠から禁書が発見されました』
『まだそんな所にあったんだね……無駄になるかもしれないけど、鑑識後、解読チームに回して保管庫へ』
『承知しました』
目の前で会話が繰り広げられ、禁書というワードが聞こえてくる。と言うか、通信石って周りにこんなに聞こえて良いのだろうか?と疑問に思ってしまう。
『通信石ってそんなに声が漏れてていいのか?』
『音量調整が難しくって!』
『ふぅん……禁書って何?』
『禁書は閲覧するのに魔術が膨大に必要だったり、禁術が載っていたりするものっていう感じかな?古代語で書かれているから読めないのと、変な魔術ーー呪いとかだね、そういうものが付加されてないか、とか鑑識してから禁書庫に厳重に保管されるんだ』
『ふぅん……今度見てみたいんだけど』
『さすがの良太でも禁書を読むのは難しいんじゃないかな?古代語だし、閲覧するのも容易じゃないし……』
ルウファ国立図書館の本は膨大で専門書も多くある。でも、ずっと疑問に思うこともあったのだ。
何というか正しい内容しか書かれていない本が多いというか……歴史についてもこのグルファン王国を中心に書かれていることが多かった。禁書の存在を聞いて納得する。
『禁書庫はどこにあるんだ?』
『……もしかして勝手に見に行こうとか思ってないよね?さすがの良太でも教えてあげられないよー。さすがに父上に怒られる』
父上と聞いて国王陛下のことを思い出す。ここに来てから季節的にももうすぐ1年かそれ以上になるのではないだろうか?国王陛下はこの国のトップのはずなのに、全然出てこず、この目の前の王子が色々と担っているらしい。
国王陛下を殺せば手っ取り早いのかな?とつい考えてしまう。
いや、まずはあの男、大輝を殺さないと……
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