【本編完結・外伝投稿予定】異世界で双子の弟に手篭めにされたけど薬師に救われる

miian

文字の大きさ
116 / 286
第四章 交錯

禁書 良太side

しおりを挟む
 契約魔法石でだまし討ちのような形で契約させられてから、見た目的には契約に従うような形で行動はしている。見た目的にはだ。
 契約違反にはならない程度に討伐へ行く騎士たちの馬車の結界をわざと疎かにしたりして騎士たちが怪我するように仕向けた。以前はわざと失敗するなんて高度なことはできなかったけど、大輝を転移魔法で移動させた時に失敗して放り出すことができなかったことが悔しくて修練した。

『今日もいい天気だねー。良太、ここの結界もお願いしていい?』

 今日はグルファン王国南東にある隣国・アルツナハインの国境付近で結界作業している。この王子は天気のことをよく話していて呑気だなといつも思う。でも、この日は蒸し暑い季節が終わりに近づき、晴れた天気は気持ちの良い風を送ってくれてゆうにぃと散歩したいなと思った。ゆうにぃと街へ出かけることもままならぬ状態なので、散歩することは厳しいと分かっているけど……。

 夜の魔物討伐会議では王子と騎士団長、たまに騎士団長補佐やら他の人間が同席したりして、興味のない魔物討伐の状況を聞くはめになっている。まぁ、各国の場所の把握や状況が分かるのでそこは良しとする。
 魔物討伐会議に大輝を同席させたいと言われた時は、嫌だと拒絶した。だけど、もし僕が会議に出ている間にゆうにぃの所へ行かれてはたまらないと思い、同席することを承諾した。
 
 ゆうにぃの部屋に結界を張っているもののあいつが近づくのも許さない。おかげでゆうにぃに食事を持って行って会った後に嫌いな男の顔を見て、1日を終わらないといけないはめになった。

 そこであの大輝という男について気になった。あの男はパッと見ても魔力が凄い感じではないし、どちらかと言えば魔力が無い人間に近い方だろう。この世界、特にこの国の王族は魔力が無い人間を嫌っている節があるのに、あいつが城で働くことを歓迎しているのだから能力が突出しているんだろうか?と疑問に思ったのだ。

『あの薬師は凄いのか?』

『ん?あぁ、大輝のこと?そうだね彼の薬は類い稀ないくらいに効くね』

 聞くと、やはり召喚者というだけあってかあいつが作る薬は凄い効能らしい。街や騎士団にも卸されているとのことで、ゆうにぃがこちらの世界へ来た当初、魔物に襲われて怪我した時に使用したのもあいつが作った薬みたいだ。
 知らなかったとはいえ、あいつの薬をゆうにぃに使用してしまったことに憤りを覚える。

『あいつで他に何か知ってることはある?』

『良太が大輝のこと聞くなんて珍しいね?んー、全体的に面倒見がいいよね。お年寄りとかにもだけど年下の子にも優しいし。妹のこと第一優先のスハンも懐いているもんね。まぁ、スハンの場合、妹の薬を作ってもらってるからかもだけど』

『ふーん……』

『あぁ、確か弟がいるとかって言ってたな。まぁ、大輝は元の世界に戻らず、こちらの世界に残ることを選んだからもう弟には会えないけどね』

 そう言えば、スハンは妹の治療のために田舎から出てきたと以前聞いたことを思い出す。スハンの妹の薬も大輝が作っていることを理解した。
 会えない弟に被せて、ゆうにぃに近づいた?それなら気持ち悪いな。

(スハンにも一度会いに行かないとな……)

 大体、ゆうにぃに何かあれば妹がどうなるか分からないぞとスハンを脅しまでしたのに、ゆうにぃと大輝の接触を許してる時点であり得ないよね。

『というかあいつの存在を今まで聞いたことがなかったんだけど』

 あいつは僕たちが召喚される1つ前の召喚者だと言うのだ。以前第二王子と前召喚者の話になった時に話題に出てもおかしくないはずなのに、今まで薬師の存在を聞いたことがなかった。
 もっと早く教えとけと僕が非難していると分かったのだろう、王子が口を開く。

『良太が興味ないと思って……。それに彼には魔力があまりないし、さっさと役割を終わらせてしまったから記憶にもあまりなかったんだよ……』

 王子が申し訳なさそうな顔をしながら『あと、僕の好みじゃなかったし……』と小さく呟く。
 本当に役に立たない……そう思いながら王子を睨みつける。王子が『ごめんよ~』と軽い気持ちで謝ってくることにもまた苛立ちを覚える。
 その時、王子の通信石が震え、王子はそれに出た。

『ユグリルどうしたんだい?あぁ、今、大丈夫だよ』

『アルツナハインへと繋がる森・ハイネスの祠から禁書が発見されました』

『まだそんな所にあったんだね……無駄になるかもしれないけど、鑑識後、解読チームに回して保管庫へ』

『承知しました』

 目の前で会話が繰り広げられ、禁書というワードが聞こえてくる。と言うか、通信石って周りにこんなに聞こえて良いのだろうか?と疑問に思ってしまう。

『通信石ってそんなに声が漏れてていいのか?』

『音量調整が難しくって!』

『ふぅん……禁書って何?』

『禁書は閲覧するのに魔術が膨大に必要だったり、禁術が載っていたりするものっていう感じかな?古代語で書かれているから読めないのと、変な魔術ーー呪いとかだね、そういうものが付加されてないか、とか鑑識してから禁書庫に厳重に保管されるんだ』

『ふぅん……今度見てみたいんだけど』

『さすがの良太でも禁書を読むのは難しいんじゃないかな?古代語だし、閲覧するのも容易じゃないし……』

 ルウファ国立図書館の本は膨大で専門書も多くある。でも、ずっと疑問に思うこともあったのだ。
 何というか正しい内容しか書かれていない本が多いというか……歴史についてもこのグルファン王国を中心に書かれていることが多かった。禁書の存在を聞いて納得する。

『禁書庫はどこにあるんだ?』

『……もしかして勝手に見に行こうとか思ってないよね?さすがの良太でも教えてあげられないよー。さすがに父上に怒られる』

 父上と聞いて国王陛下のことを思い出す。ここに来てから季節的にももうすぐ1年かそれ以上になるのではないだろうか?国王陛下はこの国のトップのはずなのに、全然出てこず、この目の前の王子が色々と担っているらしい。
 国王陛下を殺せば手っ取り早いのかな?とつい考えてしまう。
 いや、まずはあの男、大輝を殺さないと……

 王子の『次はここに結界を……』という声に我に返り、契約魔法石の解除も早くしないといけなにのに……と考えることがいっぱいでため息をついた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…? 2025/09/12 1000 Thank_You!!

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

小っちゃくたって猛禽類!〜消えてしまえと言われたので家を出ます。父上母上兄上それから婚約者様ごめんなさい〜

れると
BL
【第3部完結!】 第4部誠意執筆中。平日なるべく毎日更新を目標にしてますが、戦闘シーンとか魔物シーンとかかなり四苦八苦してますのでぶっちゃけ不定期更新です!いつも読みに来てくださってありがとうございます!いいね、エール励みになります! ↓↓あらすじ(?) 僕はツミという種族の立派な猛禽類だ!世界一小さくたって猛禽類なんだ! 僕にあの婚約者は勿体ないって?消えてしまえだって?いいよ、消えてあげる。だって僕の夢は冒険者なんだから! 家には兄上が居るから跡継ぎは問題ないし、母様のお腹の中には双子の赤ちゃんだって居るんだ。僕が居なくなっても問題無いはず、きっと大丈夫。 1人でだって立派に冒険者やってみせる! 父上、母上、兄上、これから産まれてくる弟達、それから婚約者様。勝手に居なくなる僕をお許し下さい。僕は家に帰るつもりはございません。 立派な冒険者になってみせます! 第1部 完結!兄や婚約者から見たエイル 第2部エイルが冒険者になるまで① 第3部エイルが冒険者になるまで② 第4部エイル、旅をする! 第5部隠れタイトル パンイチで戦う元子爵令息(までいけるかな?) ・ ・ ・ の予定です。 不定期更新になります、すみません。 家庭の都合上で土日祝日は更新できません。 ※BLシーンは物語の大分後です。タイトル後に※を付ける予定です。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

処理中です...