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第五章 逃亡
蜜
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大輝さんと一緒に祈りの魔法石を掲げるようになってから、数日が経った。クーアラの森をずっと北に突き進み続けている。歩きながら大輝さんがこの国のことを教えてくれる。
グルファン王国はこの世界で一番大きな国で、それ以外の国はほとんど小さな国が多いらしい。
以前行った湖近くのタルラークという国がグルファン王国の次に大きいけど、グルファン王国の方が圧倒的な広さを保持している。
この国には何月という概念はなく、以前、良太に見せてもらった年間表のように四季と月の形で日にちの確認をしているとのことだった。
グルファン王国はあまり気候に左右されず、フグラセン国のように冬の時期でも暖かい気候や、国によっては寒い気候だけの所などあるらしい。
「おっ、今日はプルーメルの蜜が採れたぞ」
大輝さんが細い木の枝にぶら下がっている黄色い果実をもぎ取って言った。大輝さんが言うには、美味しい蜜だと言うのだが、その植物の見た目がどうも食欲をそそらない見た目なのだ……。
「あの……前の世界でこういう食虫植物があった気がします……」
ツボのような見た目には蓋があり、甘い匂いで虫などを引き寄せて食べる植物だ。昔テレビでネズミがその植物に落ちて溶けるというシーンを思い出して、ゾゾっとする。
プルーメルの蜜はそのまま飲むこともできるので、そのツボの蓋を開けて飲むと言うのが主流の飲み方らしい。
「あぁ、ウツボカズラだな……こいつは虫を食べたりはしないんだが、苦手そうだな……」
大輝さんが最初プルーメルの蜜を採れた時は嬉しそうに言ったのに、俺が苦手そうだと分かると「美味しいんだが……」と残念そうに肩を落とした。
「見た目が苦手なら中身の蜜だけ取り出そう。プルーメルは栄養価が高いから優馬は飲んでおいた方がいいしな」
残念そうにしたものの気を取り直して、笑いながらそう言った。その日は早めに穴蔵に入り、火の起こし方も教えてもらった。
細めの木々を集め、溶岩の石というものを真ん中に置くと火が起こるとのことだった。
面白いことに、溶岩の石は火山のある国で採れるものの、火を起こすたびに周りに石がピョンピョンと出てくるので、1つ持っていれば無限に手に入ることになる。
「あのよくある石をこすり合わせたり、木をくるくる回したりして火を起こすんじゃないんですね」
「あぁ、火の魔術が使える人間はそれで起こすが、それ以外の人間は溶岩の石で火を起こしてるな。あ、近づきすぎると……」
「いてっ……」
「近づきすぎると溶岩の石が当たるぞと言おうとしたんだが、遅かったな……。すまない」
ピョンピョンと出てくる小さい溶岩の石は熱くはないものの地味に痛かった。
「いて、いててっ……」
「ははっ、大丈夫か?」
後ずさるも追いかけてくるようにして溶岩の石が飛んできて、慌ててる俺を笑いながら引っ張り立たせてくれる。
起こした火の上に、大輝さんがカバンから小さな鍋みたいなのを出し、水と乾燥したユモルの葉を入れた後、プルーメルの蓋を開けて鍋へと落とす。甘い香りがふわふわと漂い、思わず唾を飲み込む。
大輝さんは続けてカバンからパンを取り出し、プルーメルの蜜をそれにもかけて、手渡される。歩き通しなのでゴクリとまた喉が鳴った。
「美味しいから食べてみろ」
プルーメル入りのユモルを出してくれる。大輝さんに頷き、渡されたプルーメルの蜜がかかったパンを一口頬張ると優しさとほわほわとした甘さに包まれた。
結構な甘さなはずなのに、甘すぎるといったこともなく、そして身体の疲れを取ってくれるような気遣いが染み渡る。
「お、おいしい……!」
大輝さんがまた「ははっ」と笑い、プルーメルをかけたパンをもう1個差し出してくれる。
プルーメルは蜜だけでなく、そのツボのような部分も食べることができるらしく、そのツボをスライスしてパンに乗せてくれた。
そのプルーメルのスライスされたツボも甘くて美味しくて、いくらでも食べれそうだった。
大輝さんと食べながら、前の世界でウツボカズラで見た恐怖シーンを大輝さんに話すと大輝さんは笑って聞いてくれた。
グルファン王国はこの世界で一番大きな国で、それ以外の国はほとんど小さな国が多いらしい。
以前行った湖近くのタルラークという国がグルファン王国の次に大きいけど、グルファン王国の方が圧倒的な広さを保持している。
この国には何月という概念はなく、以前、良太に見せてもらった年間表のように四季と月の形で日にちの確認をしているとのことだった。
グルファン王国はあまり気候に左右されず、フグラセン国のように冬の時期でも暖かい気候や、国によっては寒い気候だけの所などあるらしい。
「おっ、今日はプルーメルの蜜が採れたぞ」
大輝さんが細い木の枝にぶら下がっている黄色い果実をもぎ取って言った。大輝さんが言うには、美味しい蜜だと言うのだが、その植物の見た目がどうも食欲をそそらない見た目なのだ……。
「あの……前の世界でこういう食虫植物があった気がします……」
ツボのような見た目には蓋があり、甘い匂いで虫などを引き寄せて食べる植物だ。昔テレビでネズミがその植物に落ちて溶けるというシーンを思い出して、ゾゾっとする。
プルーメルの蜜はそのまま飲むこともできるので、そのツボの蓋を開けて飲むと言うのが主流の飲み方らしい。
「あぁ、ウツボカズラだな……こいつは虫を食べたりはしないんだが、苦手そうだな……」
大輝さんが最初プルーメルの蜜を採れた時は嬉しそうに言ったのに、俺が苦手そうだと分かると「美味しいんだが……」と残念そうに肩を落とした。
「見た目が苦手なら中身の蜜だけ取り出そう。プルーメルは栄養価が高いから優馬は飲んでおいた方がいいしな」
残念そうにしたものの気を取り直して、笑いながらそう言った。その日は早めに穴蔵に入り、火の起こし方も教えてもらった。
細めの木々を集め、溶岩の石というものを真ん中に置くと火が起こるとのことだった。
面白いことに、溶岩の石は火山のある国で採れるものの、火を起こすたびに周りに石がピョンピョンと出てくるので、1つ持っていれば無限に手に入ることになる。
「あのよくある石をこすり合わせたり、木をくるくる回したりして火を起こすんじゃないんですね」
「あぁ、火の魔術が使える人間はそれで起こすが、それ以外の人間は溶岩の石で火を起こしてるな。あ、近づきすぎると……」
「いてっ……」
「近づきすぎると溶岩の石が当たるぞと言おうとしたんだが、遅かったな……。すまない」
ピョンピョンと出てくる小さい溶岩の石は熱くはないものの地味に痛かった。
「いて、いててっ……」
「ははっ、大丈夫か?」
後ずさるも追いかけてくるようにして溶岩の石が飛んできて、慌ててる俺を笑いながら引っ張り立たせてくれる。
起こした火の上に、大輝さんがカバンから小さな鍋みたいなのを出し、水と乾燥したユモルの葉を入れた後、プルーメルの蓋を開けて鍋へと落とす。甘い香りがふわふわと漂い、思わず唾を飲み込む。
大輝さんは続けてカバンからパンを取り出し、プルーメルの蜜をそれにもかけて、手渡される。歩き通しなのでゴクリとまた喉が鳴った。
「美味しいから食べてみろ」
プルーメル入りのユモルを出してくれる。大輝さんに頷き、渡されたプルーメルの蜜がかかったパンを一口頬張ると優しさとほわほわとした甘さに包まれた。
結構な甘さなはずなのに、甘すぎるといったこともなく、そして身体の疲れを取ってくれるような気遣いが染み渡る。
「お、おいしい……!」
大輝さんがまた「ははっ」と笑い、プルーメルをかけたパンをもう1個差し出してくれる。
プルーメルは蜜だけでなく、そのツボのような部分も食べることができるらしく、そのツボをスライスしてパンに乗せてくれた。
そのプルーメルのスライスされたツボも甘くて美味しくて、いくらでも食べれそうだった。
大輝さんと食べながら、前の世界でウツボカズラで見た恐怖シーンを大輝さんに話すと大輝さんは笑って聞いてくれた。
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