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第六章 終結(神殿編)
再訪 良太side
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タルラーク国王陛下が2人を連れて行った後、神殿へと向かっていた。以前、ホルアンが神殿はタルラーク国の南側と言っていたからここからさほど遠くはないと思ったのだ。ユーシアは今、神殿にいると言っていた。ホルアンにルウファの方が安全だとユーシアに伝えるように言ったものの、実際のところユーシアがルウファに戻っているかは分からない。
神殿に行ったらもう一つ確認したいことがあった。僕を召喚した神官についてだ。以前、召喚されるべき人間ではなかったからゆうにぃは元の世界に戻れないと聞いた。でも、本当にそうなのだろうか?あの時、その場しのぎの詭弁だったら?もし万が一戻れることなんてあってはならない。
ずっと歩き続けていると大雨が降り始めた。木の穴蔵で休み、瞼を閉じてゆうにぃのことを考える。真っ暗闇の中、誰かの気配がする。木の穴蔵にいたはずなのに辺りは真っ暗だ。そしてこれが夢なのだと分かった。夢ならいつの日か見たゆうにぃとセックスしている夢を見せてくれたらいいのに。背後から歪な雰囲気を感じ取り振り返る。
「どうしてお前がここに?」
「結界に綻びが出ている」
振り返った先にいたのは魔王だった。どうも僕の夢の中に入り込んでいるらしい。あれから魔力は大分戻って来てはいた。魔界へ行くのに魔力を使う。だから次に行くときはニーファを収穫する時にと思っていた。必要最低限にしておきたいと思ったけど、肝心の二―ファがなくなってしまうのは意味がない。
「はぁ、分かった。一度戻る」
僕が答えるとさっと魔王は消え失せた。瞼を開けると休んでいた木の穴蔵だった。さほど暗くもなっておらず、大雨は降り続けていたので眠っていたのはほんの一瞬だったようだ。ため息をついて、木の穴蔵に誰も入ってこれないように結界を張り、魔鏡を取り出し魔界へ行くための言葉『➖➖➖』を唱えた。
暗闇で、禍々しい空気も以前と変わりがない。ぐるっと見渡すも夢に現れた魔王はここにはいないようだ。妊娠する実・ニーファがある場所へと向かう。奥に進むにつれ、魔障が濃くなり魔獣がチラホラと出てくる。
暗闇から瞳の色だけを浮かべてするどい目でこちらをじっと見ているが、襲い掛かるようなことはしてこない。以前よりも魔力が戻っているからだろうか?魔力が完全に戻ったわけではないけど、今回の再訪ではあまり魔力が減っていないようにも思う。以前の時は直前にゆうにぃに貞操保護魔術をかけて魔力が大幅に減っていた。魔力の戻り方を確認していて分かったことは魔力は比例して回復するようだ。魔力が少なければ回復する速度も遅くなり、魔力が多くなれば回復速度も増え、魔力の消費量も少なくて済むのかもしれない。魔術の書では魔力の戻り方についはあまり載っていなかった。バルドも言っていたが、魔力が枯渇しかける事例があまりないのかもしれない。
程なくして黄色い実がチラホラと見えてきた。その傍らには魔王が佇んでいる。僕が来たことに気付き、夢の時と同じように振り返った。黒い霧を纏い、歪な瞳で僕を見る。綻び部分を見ると、確かに亀裂が入っていて、蜂のような魔物がそこから中へと入ろうと針でそこを攻撃している。
目を閉じて手を掲げた。すぐに結界を施すことができ、蜂の魔物はどこかへと去って行った。他にも綻びがないか一周回って、確認し気になる所は直した。
「魔界への馴染みが凄いな……」
魔王が僕を見下ろして言う。その意味が分からず一体どういうことか首を傾げると、奥からグルルと1匹の魔物がやって来た。虎の下半身に背中には羽が、そして顔は牛のような魔物。以前、ラウリアにカケラを投げつけた時と同じ魔物だ。その魔物に攻撃の意志はないようで、じっとこちらを見ながらゆっくりと近づいてくる。
「夢の中に入れるのは魔界への馴染みが凄いか、魔界に繋がる何かを考えている相手くらいだ」
その答えから僕は前者に当たるらしい。先ほどの魔物が目の前にやって来て服従するようにお腹を見せた。恐れられている魔物とは思えない行動だ。
「……そう。次、来る時はニーファが成熟した時だ」
「今回の結界で大丈夫だろう」
来た道を戻り歩き続けると、後ろから先ほどの魔物が虎模様の尻尾を揺らしながらついてくる。魔界の入口へと到着し、振り返ってその魔物を見た。犬のようにお座りし、こちらをじっと見ている。手をそっと伸ばすと顔を近づけ、牛のような顔のそれは目を細め、顎を手に乗せるとゴロゴロと喉を鳴らしている。……こんな風にゆうにぃも僕に従順ならいいのに。
(ゆうにぃは今、一体どこにいるのだろう……)
魔物の頭を撫でて魔界を後にした。
神殿に行ったらもう一つ確認したいことがあった。僕を召喚した神官についてだ。以前、召喚されるべき人間ではなかったからゆうにぃは元の世界に戻れないと聞いた。でも、本当にそうなのだろうか?あの時、その場しのぎの詭弁だったら?もし万が一戻れることなんてあってはならない。
ずっと歩き続けていると大雨が降り始めた。木の穴蔵で休み、瞼を閉じてゆうにぃのことを考える。真っ暗闇の中、誰かの気配がする。木の穴蔵にいたはずなのに辺りは真っ暗だ。そしてこれが夢なのだと分かった。夢ならいつの日か見たゆうにぃとセックスしている夢を見せてくれたらいいのに。背後から歪な雰囲気を感じ取り振り返る。
「どうしてお前がここに?」
「結界に綻びが出ている」
振り返った先にいたのは魔王だった。どうも僕の夢の中に入り込んでいるらしい。あれから魔力は大分戻って来てはいた。魔界へ行くのに魔力を使う。だから次に行くときはニーファを収穫する時にと思っていた。必要最低限にしておきたいと思ったけど、肝心の二―ファがなくなってしまうのは意味がない。
「はぁ、分かった。一度戻る」
僕が答えるとさっと魔王は消え失せた。瞼を開けると休んでいた木の穴蔵だった。さほど暗くもなっておらず、大雨は降り続けていたので眠っていたのはほんの一瞬だったようだ。ため息をついて、木の穴蔵に誰も入ってこれないように結界を張り、魔鏡を取り出し魔界へ行くための言葉『➖➖➖』を唱えた。
暗闇で、禍々しい空気も以前と変わりがない。ぐるっと見渡すも夢に現れた魔王はここにはいないようだ。妊娠する実・ニーファがある場所へと向かう。奥に進むにつれ、魔障が濃くなり魔獣がチラホラと出てくる。
暗闇から瞳の色だけを浮かべてするどい目でこちらをじっと見ているが、襲い掛かるようなことはしてこない。以前よりも魔力が戻っているからだろうか?魔力が完全に戻ったわけではないけど、今回の再訪ではあまり魔力が減っていないようにも思う。以前の時は直前にゆうにぃに貞操保護魔術をかけて魔力が大幅に減っていた。魔力の戻り方を確認していて分かったことは魔力は比例して回復するようだ。魔力が少なければ回復する速度も遅くなり、魔力が多くなれば回復速度も増え、魔力の消費量も少なくて済むのかもしれない。魔術の書では魔力の戻り方についはあまり載っていなかった。バルドも言っていたが、魔力が枯渇しかける事例があまりないのかもしれない。
程なくして黄色い実がチラホラと見えてきた。その傍らには魔王が佇んでいる。僕が来たことに気付き、夢の時と同じように振り返った。黒い霧を纏い、歪な瞳で僕を見る。綻び部分を見ると、確かに亀裂が入っていて、蜂のような魔物がそこから中へと入ろうと針でそこを攻撃している。
目を閉じて手を掲げた。すぐに結界を施すことができ、蜂の魔物はどこかへと去って行った。他にも綻びがないか一周回って、確認し気になる所は直した。
「魔界への馴染みが凄いな……」
魔王が僕を見下ろして言う。その意味が分からず一体どういうことか首を傾げると、奥からグルルと1匹の魔物がやって来た。虎の下半身に背中には羽が、そして顔は牛のような魔物。以前、ラウリアにカケラを投げつけた時と同じ魔物だ。その魔物に攻撃の意志はないようで、じっとこちらを見ながらゆっくりと近づいてくる。
「夢の中に入れるのは魔界への馴染みが凄いか、魔界に繋がる何かを考えている相手くらいだ」
その答えから僕は前者に当たるらしい。先ほどの魔物が目の前にやって来て服従するようにお腹を見せた。恐れられている魔物とは思えない行動だ。
「……そう。次、来る時はニーファが成熟した時だ」
「今回の結界で大丈夫だろう」
来た道を戻り歩き続けると、後ろから先ほどの魔物が虎模様の尻尾を揺らしながらついてくる。魔界の入口へと到着し、振り返ってその魔物を見た。犬のようにお座りし、こちらをじっと見ている。手をそっと伸ばすと顔を近づけ、牛のような顔のそれは目を細め、顎を手に乗せるとゴロゴロと喉を鳴らしている。……こんな風にゆうにぃも僕に従順ならいいのに。
(ゆうにぃは今、一体どこにいるのだろう……)
魔物の頭を撫でて魔界を後にした。
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