【本編完結・外伝投稿予定】異世界で双子の弟に手篭めにされたけど薬師に救われる

miian

文字の大きさ
256 / 286
最終章 終焉(ナミル・魔界編)

魔障

しおりを挟む
”あははは!この世界はもう終わりだ。さぁ、ゆうにぃ、僕と一緒に行こう”

 どれだけやめてと懇願しても、良太の暴走は止まらなかった。良太は笑い声をあげた後、俺は黒い靄に取り囲まれた。恐怖で目を閉じようとした時、ぎゅっと俺を抱きしめる力で大輝さんが傍にいると分かった。

 次に目を開くと、真っ黒な靄に取り囲まれていた。その黒い靄は大輝さんを取り囲み、ぎゅっと握りしめられていた手は引き離された。大輝さんと俺の間には黒い靄の隔たりができ、大輝さんの姿は見えなくなっていた。

「だいきさんっ!だいきさんっ!」
「優馬!優馬、俺は大丈夫だから、ここから抜け出すことを考えるんだ!必ず助けに行くから」

 黒い靄の向こうで、大輝さんの剣を振るう音が聞こえる。

(俺が叫び続けた所で、邪魔になるだけだ……。良太に……良太に会って、ここから大輝さんを出して、世界を追い詰めないでと頼もう……)

 辺りをぐるっと見渡す。ここは一体どこなのだろうか?何も見えなくて真っ暗な場所。
 どこからともなく声が聞こえる。

「ゆうにぃ!怖いから一緒に寝ていい?」

 ぼやけた映像。それはきっと小さい頃の良太が俺と一緒に寝ようとしている時のものだ。

「ゆうにぃ、一緒に帰ろ」
「これ美味しいね、ゆうにぃ」
「ゆうにぃ、遊ぼう」
「ふふっ、ゆうにぃ、面白いね」

 歩くたびに良太と俺の想い出のような映像が流れる。
 学校の帰り道、何かを食べている時、休みの何もすることがない時、テレビを一緒に見ている時。
 どれもこれも懐かしいものばかりだ。

(これは良太の記憶……?)

 また前に進むと違う映像が流れてきた。ベッドに横たわる良太、その傍には俺がいる。

「うぅ……」
「良太?大丈夫?」
「ゆうにぃ、ありがとう……」

 これは良太が熱で寝込んでいる時の記憶だ。片割れの弟が死ぬんじゃないかって小さい頃は心配して傍にいた。熱で死ぬはずはないのに、俺より小さい良太のことが心配だった。その映像だけ鮮明に映っていることに気付いた。良太の俺を見る眼差しは嬉しそうだ。良太が傍にいて喜んでくれるから俺も嬉しかった。プツリとその映像は消えた。

 また前に歩き始めると、流れてくる映像はこちらの世界に来てからのものだった。良太が俺を押し倒す光景。組み敷きながら俺の身体を良太が貪る映像。

「ゆうにぃっ!」
「ゆうにぃ、大好き」
「ゆうにぃ?」
「ゆうにぃ、どうして……?」

 自分の裸と良太との光景をこうやって見させられるのは地獄で早くこの場を立ち去りたい。ここは一体どこなんだろう。魔界ではないように思う。まるで良太の記憶の中に入っているような不思議な感覚。
 
「どうして僕のことを見てくれないの?」
「ゆうにぃ、それ本気で思ってる?!」
「どうして僕から離れるの、ゆうにぃ?」
「僕がいないとゆうにぃはこの世界で何もできないくせに」
「ゆうにぃを護れるのは僕だけだ」
「この世界では僕を頼るしかないの、ゆうにぃ」

 先ほどまでの良太とは変わり、今度は怖い表情をしてずっと俺に何かを言っている。

「ゆうにぃ……僕を捨てないで……置いて行かないで……」

 次はどうしてか泣いてすがる良太が映る。その良太は小さく丸くなって1人で心ぼそうだ。

「あつい……こわい、助けて……ゆうにぃ……」

 今度は、目の前に身を焼かれるように悶え苦しんでいる姿の良太が映る。助けを求める声。
 その声を助けたくなってそっとその良太に手を伸ばすと、すっと消えた。
 ここが本当のところどこか、分からない。良太の記憶の中なのか、意識なのか。
 でも、確実に分かることは、良太は俺のことをずっと考えているってことだ。小さい時から今も。

「……りょうた」

 どうしてか名前を呼んでいた。その瞬間、ぐにゃりと視界が歪んだ。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...