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最終章 終焉(ナミル・魔界編)
魔障
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”あははは!この世界はもう終わりだ。さぁ、ゆうにぃ、僕と一緒に行こう”
どれだけやめてと懇願しても、良太の暴走は止まらなかった。良太は笑い声をあげた後、俺は黒い靄に取り囲まれた。恐怖で目を閉じようとした時、ぎゅっと俺を抱きしめる力で大輝さんが傍にいると分かった。
次に目を開くと、真っ黒な靄に取り囲まれていた。その黒い靄は大輝さんを取り囲み、ぎゅっと握りしめられていた手は引き離された。大輝さんと俺の間には黒い靄の隔たりができ、大輝さんの姿は見えなくなっていた。
「だいきさんっ!だいきさんっ!」
「優馬!優馬、俺は大丈夫だから、ここから抜け出すことを考えるんだ!必ず助けに行くから」
黒い靄の向こうで、大輝さんの剣を振るう音が聞こえる。
(俺が叫び続けた所で、邪魔になるだけだ……。良太に……良太に会って、ここから大輝さんを出して、世界を追い詰めないでと頼もう……)
辺りをぐるっと見渡す。ここは一体どこなのだろうか?何も見えなくて真っ暗な場所。
どこからともなく声が聞こえる。
「ゆうにぃ!怖いから一緒に寝ていい?」
ぼやけた映像。それはきっと小さい頃の良太が俺と一緒に寝ようとしている時のものだ。
「ゆうにぃ、一緒に帰ろ」
「これ美味しいね、ゆうにぃ」
「ゆうにぃ、遊ぼう」
「ふふっ、ゆうにぃ、面白いね」
歩くたびに良太と俺の想い出のような映像が流れる。
学校の帰り道、何かを食べている時、休みの何もすることがない時、テレビを一緒に見ている時。
どれもこれも懐かしいものばかりだ。
(これは良太の記憶……?)
また前に進むと違う映像が流れてきた。ベッドに横たわる良太、その傍には俺がいる。
「うぅ……」
「良太?大丈夫?」
「ゆうにぃ、ありがとう……」
これは良太が熱で寝込んでいる時の記憶だ。片割れの弟が死ぬんじゃないかって小さい頃は心配して傍にいた。熱で死ぬはずはないのに、俺より小さい良太のことが心配だった。その映像だけ鮮明に映っていることに気付いた。良太の俺を見る眼差しは嬉しそうだ。良太が傍にいて喜んでくれるから俺も嬉しかった。プツリとその映像は消えた。
また前に歩き始めると、流れてくる映像はこちらの世界に来てからのものだった。良太が俺を押し倒す光景。組み敷きながら俺の身体を良太が貪る映像。
「ゆうにぃっ!」
「ゆうにぃ、大好き」
「ゆうにぃ?」
「ゆうにぃ、どうして……?」
自分の裸と良太との光景をこうやって見させられるのは地獄で早くこの場を立ち去りたい。ここは一体どこなんだろう。魔界ではないように思う。まるで良太の記憶の中に入っているような不思議な感覚。
「どうして僕のことを見てくれないの?」
「ゆうにぃ、それ本気で思ってる?!」
「どうして僕から離れるの、ゆうにぃ?」
「僕がいないとゆうにぃはこの世界で何もできないくせに」
「ゆうにぃを護れるのは僕だけだ」
「この世界では僕を頼るしかないの、ゆうにぃ」
先ほどまでの良太とは変わり、今度は怖い表情をしてずっと俺に何かを言っている。
「ゆうにぃ……僕を捨てないで……置いて行かないで……」
次はどうしてか泣いてすがる良太が映る。その良太は小さく丸くなって1人で心ぼそうだ。
「あつい……こわい、助けて……ゆうにぃ……」
今度は、目の前に身を焼かれるように悶え苦しんでいる姿の良太が映る。助けを求める声。
その声を助けたくなってそっとその良太に手を伸ばすと、すっと消えた。
ここが本当のところどこか、分からない。良太の記憶の中なのか、意識なのか。
でも、確実に分かることは、良太は俺のことをずっと考えているってことだ。小さい時から今も。
「……りょうた」
どうしてか名前を呼んでいた。その瞬間、ぐにゃりと視界が歪んだ。
どれだけやめてと懇願しても、良太の暴走は止まらなかった。良太は笑い声をあげた後、俺は黒い靄に取り囲まれた。恐怖で目を閉じようとした時、ぎゅっと俺を抱きしめる力で大輝さんが傍にいると分かった。
次に目を開くと、真っ黒な靄に取り囲まれていた。その黒い靄は大輝さんを取り囲み、ぎゅっと握りしめられていた手は引き離された。大輝さんと俺の間には黒い靄の隔たりができ、大輝さんの姿は見えなくなっていた。
「だいきさんっ!だいきさんっ!」
「優馬!優馬、俺は大丈夫だから、ここから抜け出すことを考えるんだ!必ず助けに行くから」
黒い靄の向こうで、大輝さんの剣を振るう音が聞こえる。
(俺が叫び続けた所で、邪魔になるだけだ……。良太に……良太に会って、ここから大輝さんを出して、世界を追い詰めないでと頼もう……)
辺りをぐるっと見渡す。ここは一体どこなのだろうか?何も見えなくて真っ暗な場所。
どこからともなく声が聞こえる。
「ゆうにぃ!怖いから一緒に寝ていい?」
ぼやけた映像。それはきっと小さい頃の良太が俺と一緒に寝ようとしている時のものだ。
「ゆうにぃ、一緒に帰ろ」
「これ美味しいね、ゆうにぃ」
「ゆうにぃ、遊ぼう」
「ふふっ、ゆうにぃ、面白いね」
歩くたびに良太と俺の想い出のような映像が流れる。
学校の帰り道、何かを食べている時、休みの何もすることがない時、テレビを一緒に見ている時。
どれもこれも懐かしいものばかりだ。
(これは良太の記憶……?)
また前に進むと違う映像が流れてきた。ベッドに横たわる良太、その傍には俺がいる。
「うぅ……」
「良太?大丈夫?」
「ゆうにぃ、ありがとう……」
これは良太が熱で寝込んでいる時の記憶だ。片割れの弟が死ぬんじゃないかって小さい頃は心配して傍にいた。熱で死ぬはずはないのに、俺より小さい良太のことが心配だった。その映像だけ鮮明に映っていることに気付いた。良太の俺を見る眼差しは嬉しそうだ。良太が傍にいて喜んでくれるから俺も嬉しかった。プツリとその映像は消えた。
また前に歩き始めると、流れてくる映像はこちらの世界に来てからのものだった。良太が俺を押し倒す光景。組み敷きながら俺の身体を良太が貪る映像。
「ゆうにぃっ!」
「ゆうにぃ、大好き」
「ゆうにぃ?」
「ゆうにぃ、どうして……?」
自分の裸と良太との光景をこうやって見させられるのは地獄で早くこの場を立ち去りたい。ここは一体どこなんだろう。魔界ではないように思う。まるで良太の記憶の中に入っているような不思議な感覚。
「どうして僕のことを見てくれないの?」
「ゆうにぃ、それ本気で思ってる?!」
「どうして僕から離れるの、ゆうにぃ?」
「僕がいないとゆうにぃはこの世界で何もできないくせに」
「ゆうにぃを護れるのは僕だけだ」
「この世界では僕を頼るしかないの、ゆうにぃ」
先ほどまでの良太とは変わり、今度は怖い表情をしてずっと俺に何かを言っている。
「ゆうにぃ……僕を捨てないで……置いて行かないで……」
次はどうしてか泣いてすがる良太が映る。その良太は小さく丸くなって1人で心ぼそうだ。
「あつい……こわい、助けて……ゆうにぃ……」
今度は、目の前に身を焼かれるように悶え苦しんでいる姿の良太が映る。助けを求める声。
その声を助けたくなってそっとその良太に手を伸ばすと、すっと消えた。
ここが本当のところどこか、分からない。良太の記憶の中なのか、意識なのか。
でも、確実に分かることは、良太は俺のことをずっと考えているってことだ。小さい時から今も。
「……りょうた」
どうしてか名前を呼んでいた。その瞬間、ぐにゃりと視界が歪んだ。
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