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1巻
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「うん、大丈夫……だと思う」
全然自信はないけれど。
「あと、従騎士の仕事内容はわかる?」
「多分……。基本的にはメンターのお世話でしょ?」
メンターとは、師匠と弟子のように、新人に仕事を教える先生のことだ。つまりこの場合第二騎士団団長、ユーリウスのことである。魔術師としてならばメンターのお世話をしたことも、逆にメンターを務めたこともある。
「そう。食事の準備。衣類の準備、洗濯、ベッドメーキングなど。鎧や剣の手入れ、馬の世話……こんなところかな」
「なら、大丈夫!」
アウレリアは笑って答えた。
カールは食堂の隣にある保管室へアウレリアを案内する。
「着替えとかシーツはここにあるから」
「うん」
この辺の事情は魔術師団とあまり変わらないので、アウレリアは少し安心する。
「食事は基本的には食堂で食べるけど、忙しいときは食堂の親父さんに頼めば部屋食を用意してくれる。紹介しておいたほうがいいかな」
「うん、お願い」
食事は騎士の基本だ。身体を作る上で大事なものなので、調理責任者と親しくなっておくことは重要だと思ったのだ。
カールはアウレリアをつれて食堂に入った。何人かの騎士が話をしている。そのうちのひとりが声を掛けてきた。
「よう、新人か?」
「はい。ライナー先輩。アーベル・フォルトナー、俺の従兄弟で今日から団長の従騎士になりました」
「団長の? そりゃ、大変だな」
アウレリアは男のセリフに不安が募る。
本当に大丈夫なんだろうか。
「アーベル、こちらはライナー・バルツァー隊長」
「アーベル・フォルトナーです。よろしくお願いします」
ユーリウスに挨拶したときと同じように、アウレリアは元気よくお辞儀をした。
「まあ、そんなにかしこまるなよ。よろしくな」
「はい。あの……団長の従騎士はそんなに大変なのでしょうか?」
アウレリアは思わず尋ねてしまった。
「ああ、あんまり指示はしてくれないから自分で考えて動けよ。でもあの人の下で従騎士を務められたら、立派な騎士になれるぞ」
「そうですか……。頑張ります」
「おう、頑張れ」
ライナー隊長はそう言うと、アウレリアの頭をくしゃくしゃと撫でた。
(や、やだ。触らないでよー)
「ライナー先輩、ちょっとやめて下さい。こいつ、人に触られるのに慣れてないんで」
カールが慌てて制止しようとする。すでにアウレリアの顔は真っ赤になっていた。
魔術師は人との接触を嫌う者が多い。それは身体を巡る魔力が人との接触により反発を起こすことがあるからだ。相性が悪いと静電気のような痛みが走る場合もある。だから普段はローブを着こんで肌をさらさないようにするし、髪も垂らしたままでいることが多い。
幸いアウレリアが得意な治癒系の魔術は、反発を起こしにくいため、実際に反発を体験したことはない。が、それでも身体が他人と触れ合わないように気をつけている。
「まるで魔術師みたいだな」
(う、当たってる)
的を射た指摘にアウレリアはどきりとする。
「そうなんですよ。こいつの親が魔術師なんで、触られるのに慣れてないんですよ」
弟の上手な言い訳にアウレリアは内心ほっとした。
「そうか、すまんな」
申し訳なさそうに謝ってくれたので、アウレリアは機嫌を直した。
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ、俺はこいつを案内しないといけないので、失礼します」
「おう、頑張れよ」
カールはアウレリアを連れて、厨房へ入っていた。
「親父さーん。いるー?」
カールは大声で食堂の調理責任者を呼びながら、厨房の奥へ向かう。
「そんなでかい声を出さんでも、聞こえとるわ」
不機嫌そうな、壮年の男性が棚の陰から現れる。
(うわっ、すごく渋い人)
「親父さん。こいつ今日から団長の従騎士になった、俺の従兄弟のアーベル」
「アーベル・フォルトナーです。よろしくお願いします」
「おまえ、細いし小さいな。もっと飯を食え」
アウレリアが挨拶をすると、壮年の男性はしげしげと彼女の身体つきを見て言う。
「あの、お名前を教えて下さい」
早く騎士団に溶け込もうと、アウレリアは脅えつつも名前を尋ねた。
「わしのことは食堂の親父とでも呼んでくれればいい」
「わかりました。では、親父さんと呼ばせて頂きます」
「おまえは固いなぁ。もっと大らかに生きろ」
「は、はい」
やはり騎士団と魔術師団ではずいぶんと雰囲気が異なる様子だ。
カールに建物の中を案内してもらい、厩舎で馬に引きあわされたあと、最後に団長の宿舎へ連れていかれた。団長と副団長の部屋は隣り合っているので、宿舎での世話についても教えてもらう。
「だいたい、こんなところかな」
「会う人が多すぎて覚えきれないよ」
「そう? とりあえず、あとは夕飯と入浴の準備だな。今日は団長の分も俺がやるから、よく見といて。明日からは頼むな」
「わかった」
アウレリアは素直に頷いた。ここでは弟が先輩だ。以前より従騎士らしくなった弟の姿に、アウレリアは感心していた。
「あと、肝心の場所は近いうちに案内するから……」
「わかった」
あまりのめまぐるしさに、アウレリアは本来の目的を忘れるところだった。
普段、一度にこんなにたくさんの人と会うことがないので、アウレリアは戸惑ってしまう。
(とりあえず、カールを見て早く仕事を覚えないと……)
アウレリアはカールが着替えと入浴の準備をするのを見ながら、収納場所や必要な道具を覚えていく。大体の準備が終わると、カールは自分のメンターであるディートハルトの準備をするために部屋を出ていってしまった。
(前途多難……かも)
三 騎士団の日常
アウレリアはユーリウスが部屋に戻るまで、とりあえず衣類の入ったチェストを整理して時間を潰していた。
扉が開いて、ユーリウスが帰ってくる。
「お疲れ様です」
アウレリアが声を掛けると、ユーリウスは驚いたような顔をして一瞬固まった。
「そうか、今日から従騎士になったんだったな」
「はい」
「えーと、アーベル、着替えは……」
ユーリウスは慣れていない様子で言いよどんだ。
「はい、カールが教えてくれました。そちらに用意してあります」
「そうか」
返事はしたもののユーリウスは着替えを持たずに、部屋に備え付けられた浴室へ姿を消す。
アウレリアは手持ち無沙汰で、ふと目にとまった本を開いてみる。兵法に関する書物で、なかなか面白い。彼女はいつの間にか、夢中になって読んでいた。
ふと気づくと、ユーリウスがシャワーを済ませて浴室から出てきていた。
アウレリアは慌てて本を元の位置に戻す。
ユーリウスは髪を拭きながら、腰にタオルを巻いただけの姿で浴室から歩いてくる。
アウレリアは頬が紅潮するのを抑えられなかった。
なるべく裸の上半身が視界に入らないように横を向く。
(なんで裸で出てくるの? 腰が隠れてるだけましだけど……いつもこんな様子だったら、わたし、もたないかも……)
「面白いか?」
「はい?」
「その本だ」
アウレリアが先ほどまで読みふけっていた本を指す。
「はい。とても面白いです」
アウレリアの返事は、緊張のあまり大声になってしまう。
「そうか、今日はこれで下がっていい」
「はい。失礼します」
アウレリアはドキドキとうるさい心臓をなだめすかして、どうにか部屋を辞した。
(相変わらず無愛想な人……)
廊下で物思いにふけっていると、ちょうど隣の部屋からカールが出てきた。
「カール」
「ああ、そっちも終わったのか。じゃあ夕飯を食べに行こう」
「うん」
カールと話しているうちに、アウレリアはようやく平常心を取り戻していく。
アウレリアはカールに連れられて、昼間案内された食堂へ足を踏み入れる。昼間とは違って今は人であふれていた。
「この時間は従騎士や、騎士以外の、裏方連中の食事時間だな。そこに盛られた皿から好きなだけ取って食べればいい」
「なるほど。効率的だな」
アウレリアはカールと一緒に食事を済ませると、宿舎へ戻った。カールが最初に案内してくれた部屋だ。
彼女は疲労困憊でベッドに倒れ込んだ。
「ふあー、もう無理」
「姉さん、そのまま寝る気? 髪くらいはほどいておいたら?」
「もう、面倒くさい」
アウレリアはうつ伏せのまま、やけになってカールに答える。
「ま、俺が頼んだことだし、できる限り手伝うから許して」
カールの手が、首の後ろできっちりとまとめて編み込まれた髪をそっとほどいていく。優しい弟の手の感触に安心して、アウレリアは睡魔に身を任せた。
翌朝早くカールに起こされたアウレリアは、ユーリウスの従騎士として忙しく働き始めた。
ユーリウスが起き出す前に朝食を取り、着替えを準備する。ユーリウスが起きたあとは、すぐにベッドのシーツを替えて、洗濯に出す。ついでに自分の分の洗濯もお願いする。さすがに下着の類は自分で洗濯することにした。女物の下着を見られたら正体がばれてしまう。
それが終わると再び団長室へ戻る。書類の配達や、団長の休憩に備えて飲み物を準備するなど、やるべきことは山のようにあった。
アウレリアはその合い間に時間を見つけて馬の世話をすることにした。馬で移動することは魔術師団では少ないものの、全くないわけではないので一応乗馬はできる。それに加えてアウレリアは魔術で馬の意思がなんとなくわかるので、世話をするのは得意だった。
ユーリウスの乗る青毛の馬は、とても大きく立派な牝馬だった。ブラシを掛ける間も、大人しくしてくれている。
「シュヴァルツ、美人だね」
青毛の美しさに思わずアウレリアが声を掛けていると、後ろから声がした。
「そうだろう」
「だ、団長?」
(なんでこんなところにこの人がいるの?)
アウレリアは驚いて声を上げた。
「なんでこんなところに、とでも言いたそうだな」
気持ちを見透かされて、アウレリアはますます動揺した。
「馬を大事にしない騎士はいない」
「はあ」
ユーリウスはそれだけ言うと、厩舎を出ていった。
いったい何が言いたかったんだろう?
「お前の御主人様は、よくわからない人だね」
しかし青毛からは否定するような意思が返ってきて、アウレリアは驚いた。
「そう?」
アウレリアは青毛にゆっくりとブラシを掛けつつ考える。
(もしかしたら、騎士なら馬を大事にしろってことを言いたかったのかな?)
だとしたらすごくわかりにくい。彼は非常に不器用な男なのかもしれないとアウレリアは思った。
四 恋の自覚
アウレリアはユーリウスの世話をして過ごすうちに、彼が無愛想だがとても優しいことに気づいた。直接口に出しては言わないが、さりげない行動で騎士のあるべき姿を示してくれる。それは馬の世話の仕方だったり、真摯に訓練に打ち込む姿だったりした。
指示された仕事の多さに、無理かもしれないと思いつつも頑張ると、ちょうど時間内に終えることができたりする。アウレリアの技量を考えた上で量を調整してくれているのだ。
アウレリアはユーリウスの処理能力の高さにも感心していた。
書類を溜め込んでしまう、どこかの魔術師団長とは大違いだ。
今は鍛錬の時間で、ユーリウスはディートハルトと手合わせをしていた。アウレリアは指示された通り、武器庫に練習用の長剣を取りに向かっていた。少し道に迷いながらも、どうにか武器庫にたどり着くと、練習用の二本を持ち貸出簿に記録する。
訓練場に戻ると、アウレリアは持ってきた長剣をユーリウスに渡した。
彼はそのうちの一振りをディートハルトに手渡す。
ディートハルトも黙って剣を受け取ると、距離を取って構えた。訓練場の周りには、団長たちの手合わせを見物しようと騎士たちが集まり始めている。
アウレリアは固唾を呑んで訓練の様子を見守る。
「はじめ!」
審判役の騎士の声を合図に、ふたりは同時に動いた。打ち合わせられる剣は、まるで一つの舞のように美しく、流れるように動く。アウレリアはいつの間にかユーリウスの動きに見とれていた。
(団長すごい! あんなに重い長剣を軽々と振り回すなんて!)
ふたりの剣がぶつかり合う音と、足音だけが訓練場に響いている。見学している騎士たちも、無言でふたりの剣技に見とれている。
アウレリアの目はユーリウスの姿に釘付けになっていた。剣技の腕はディートハルトと互角なのに、アウレリアの目はなぜか彼ばかりを追ってしまう。強い闘志をまとった眼差しに見とれていたのかもしれない。
ふたりは汗をかきながらも、その手を休めることなく打ち込みあっている。結局試合は決着がつかず、引き分けとなった。
アウレリアは戻ってきたユーリウスに、タオルを手渡し、代わりに剣を受け取った。いつもは無愛想な彼が珍しくアウレリアに微笑みかけてきた。
アウレリアの鼓動が跳ね上がる。
(びっくりしたー!! 団長が笑うと可愛い……かも)
アウレリアは受け取った剣を握りしめたまま、しばし茫然としていた。
§
アウレリアが騎士団に潜入して数日が過ぎ、仕事にも慣れてきたころ、アウレリアはカールから呼び出された。ようやく本来の目的である鎧の修理に取り掛かることができる。
カールから魔石の修理の依頼を受けたときから、アウレリアはずっとその魔石を見ることを楽しみにしていた。
魔石には、それぞれ独自の術式が使われていることが多く、魔術師にとっては格好の研究材料なのだ。
(ふふ、楽しみー。どんな魔石が使われているのかな)
カールはアウレリアをつれて武器庫へ入る。先日は余裕がなくてろくに中も見なかったが、武器庫にはさまざまな武器が並べられている。普段訓練で使用する武器や防具とは別に、奥の部屋には正装用の物がしまわれていた。
カールはその中から一つの鎧を取りだした。
「これなんだけど……」
カールは不安そうにアウレリアの顔を見上げた。
アウレリアは鎧にわずかに残っている魔石の欠片から、魔術の痕跡を探って驚愕した。
(ちょっと、これは……)
「なにこれ。ちょっとすごいよ、この魔石」
「そうなの?」
魔術に関してはほとんど才能のない弟にはわからないらしい。
「あのね、この魔石を作った人は三重の防御魔術を掛けてる。こんなに防御を重ねて掛けるのは、すごく難しくて、繊細な制御が必要なのよ」
「ふーん。それで、直りそう?」
アウレリアの興奮をよそに、カールは大して感心している様子もない。
「同じ効果の魔石を作らないといけないから、二日くらいかかると思う。石を外して解析できれば、作るのを少しは短縮できると思うけど……」
「二日! そんなにかかるの?」
アウレリアの答えにカールは涙を滲ませる。
「うん。それ以上はうちの団長でも無理」
「じゃあお願い、姉さん」
このためにわざわざ男装して潜入したのだ。もとよりそのつもりだ。
「うん。じゃあ、これ外すね」
アウレリアはカールが外せなかった魔石をいとも簡単に外した。用意しておいた袋に外した魔石を入れて、懐に隠す。
「やっと、すこし安心した」
この弟はどうしてこう能天気なのか。まだ直してもいないのに、安心してどうする。
「そのセリフは直し終わってから言ってね。まだ何もしてないのに気が早い!」
「はい、すみません」
お互いの軽口に笑いながら、奥から練習用の武具が置かれた部屋へ戻る。
直後、入り口に団長が立っているのに気づき、ふたりは青ざめる。
(ちょっと、なんで団長がここに? どうしよう。でも武具の手入れは従騎士の仕事だから怪しくない……はず)
「団長、何か御用ですか?」
素早く立ち直ったアウレリアが声を掛ける。
「いや、アーベルに頼みたいことがあったのだが、忙しいようだな。あとでいい」
ユーリウスはそっけなく言うと、踵を返した。
「大丈夫です。用事は終わりましたから」
アウレリアが声を掛けると、ユーリウスはふたりの前に戻ってくる。
「そうか、ならこの書類を届けてほしい」
アウレリアはユーリウスが差し出した書類を受け取った。確認すると宛先は第一騎士団となっている。
「わかりました。第一騎士団まで届けてまいります」
言うなりアウレリアは、ふたりを置いて駆けだした。普段あまり走ることがなく、最初は慣れない配達の仕事が辛かったのだが、続けているうちに体力がついたのか、段々と楽になってきていた。
魔術師団は第一騎士団と連携して行動することも多いので、よく知っている。だがそれゆえに知り合いも多いので、いつもばれないかと冷や冷やしながら配達をしていた。
髪を下ろしてローブで顔を隠すようにしている魔術師団副団長と、今の、髪を編み込んで元気に走りまわる自分の姿は印象がかなり違うはず。それにあえて堂々と振る舞うほうが気づかれにくいだろうと、努めて普通を装った。
無事配達を終えて第二騎士団の詰所へ戻る途中、アウレリアは従騎士のクルトの姿を見つけた。
クルトは建物の陰で誰かと言い争っているようだ。
「お前が―――だから―――なんだ」
「ほんとう――すみま――」
険悪そうな雰囲気にアウレリアは思わず足を止めた。よく見るとクルトが話している相手は彼の仕えるロベルトという騎士だった。
「どうしたの、クルト?」
「なんだお前? お前には関係ない!」
アウレリアが声をかけると、ロベルトはクルトの姿を遮るように立ちはだかる。
「だけど、クルトが脅えて」
ロベルトの振り上げた拳が彼女の頬を掠め、壁に打ち付けられる。アウレリアの声は途中で宙に消えた。クルトの脅えた瞳がアウレリアを見つめている。
「アーベル、いいから……」
震える声がアウレリアをロベルトから遠ざけようとする。
「どういうことですか? 拳で相手を黙らせようなど、騎士の行いとは思えませんが」
冷静なアウレリアの指摘に、ロベルトは顔を真っ赤にさせた。
「こいつ!」
アウレリアは今度こそ殴られると思い、目をつぶった。
しかし――いつまでたっても衝撃が訪れず、恐る恐る目を開く。
見れば、ユーリウスがロベルトの拳を受け止めていた。
「団長……」
ロベルトが茫然と、自分の拳を受け止めた相手を見つめる。
「どういうことだ? 無抵抗の者に拳を振り上げるなど、騎士のふるまいではない」
ユーリウスの低い声がロベルトを問いつめる。
「それは……あの、わたしの従騎士があまりに要領が悪いので指導していたら、横から口出しを」
「だとしても、口頭で注意すれば済むだろう」
ロベルトの言い訳はユーリウスの冷たい声に遮られた。
アウレリアは感謝の思いで彼を見上げる。
「さっさと任務に戻れ。この件については後日改めてふたりから話を聞く」
ロベルトに引っ張られながらも、クルトが感謝の眼差しをアウレリアに送ってきた。彼女も目で応えると踵を返し、団長室へ戻ろうとする。
するとすでにその場を去ったはずのユーリウスが、目の前に立ちはだかっていた。アウレリアは恐る恐る尋ねる。
全然自信はないけれど。
「あと、従騎士の仕事内容はわかる?」
「多分……。基本的にはメンターのお世話でしょ?」
メンターとは、師匠と弟子のように、新人に仕事を教える先生のことだ。つまりこの場合第二騎士団団長、ユーリウスのことである。魔術師としてならばメンターのお世話をしたことも、逆にメンターを務めたこともある。
「そう。食事の準備。衣類の準備、洗濯、ベッドメーキングなど。鎧や剣の手入れ、馬の世話……こんなところかな」
「なら、大丈夫!」
アウレリアは笑って答えた。
カールは食堂の隣にある保管室へアウレリアを案内する。
「着替えとかシーツはここにあるから」
「うん」
この辺の事情は魔術師団とあまり変わらないので、アウレリアは少し安心する。
「食事は基本的には食堂で食べるけど、忙しいときは食堂の親父さんに頼めば部屋食を用意してくれる。紹介しておいたほうがいいかな」
「うん、お願い」
食事は騎士の基本だ。身体を作る上で大事なものなので、調理責任者と親しくなっておくことは重要だと思ったのだ。
カールはアウレリアをつれて食堂に入った。何人かの騎士が話をしている。そのうちのひとりが声を掛けてきた。
「よう、新人か?」
「はい。ライナー先輩。アーベル・フォルトナー、俺の従兄弟で今日から団長の従騎士になりました」
「団長の? そりゃ、大変だな」
アウレリアは男のセリフに不安が募る。
本当に大丈夫なんだろうか。
「アーベル、こちらはライナー・バルツァー隊長」
「アーベル・フォルトナーです。よろしくお願いします」
ユーリウスに挨拶したときと同じように、アウレリアは元気よくお辞儀をした。
「まあ、そんなにかしこまるなよ。よろしくな」
「はい。あの……団長の従騎士はそんなに大変なのでしょうか?」
アウレリアは思わず尋ねてしまった。
「ああ、あんまり指示はしてくれないから自分で考えて動けよ。でもあの人の下で従騎士を務められたら、立派な騎士になれるぞ」
「そうですか……。頑張ります」
「おう、頑張れ」
ライナー隊長はそう言うと、アウレリアの頭をくしゃくしゃと撫でた。
(や、やだ。触らないでよー)
「ライナー先輩、ちょっとやめて下さい。こいつ、人に触られるのに慣れてないんで」
カールが慌てて制止しようとする。すでにアウレリアの顔は真っ赤になっていた。
魔術師は人との接触を嫌う者が多い。それは身体を巡る魔力が人との接触により反発を起こすことがあるからだ。相性が悪いと静電気のような痛みが走る場合もある。だから普段はローブを着こんで肌をさらさないようにするし、髪も垂らしたままでいることが多い。
幸いアウレリアが得意な治癒系の魔術は、反発を起こしにくいため、実際に反発を体験したことはない。が、それでも身体が他人と触れ合わないように気をつけている。
「まるで魔術師みたいだな」
(う、当たってる)
的を射た指摘にアウレリアはどきりとする。
「そうなんですよ。こいつの親が魔術師なんで、触られるのに慣れてないんですよ」
弟の上手な言い訳にアウレリアは内心ほっとした。
「そうか、すまんな」
申し訳なさそうに謝ってくれたので、アウレリアは機嫌を直した。
「いえ、大丈夫です」
「じゃあ、俺はこいつを案内しないといけないので、失礼します」
「おう、頑張れよ」
カールはアウレリアを連れて、厨房へ入っていた。
「親父さーん。いるー?」
カールは大声で食堂の調理責任者を呼びながら、厨房の奥へ向かう。
「そんなでかい声を出さんでも、聞こえとるわ」
不機嫌そうな、壮年の男性が棚の陰から現れる。
(うわっ、すごく渋い人)
「親父さん。こいつ今日から団長の従騎士になった、俺の従兄弟のアーベル」
「アーベル・フォルトナーです。よろしくお願いします」
「おまえ、細いし小さいな。もっと飯を食え」
アウレリアが挨拶をすると、壮年の男性はしげしげと彼女の身体つきを見て言う。
「あの、お名前を教えて下さい」
早く騎士団に溶け込もうと、アウレリアは脅えつつも名前を尋ねた。
「わしのことは食堂の親父とでも呼んでくれればいい」
「わかりました。では、親父さんと呼ばせて頂きます」
「おまえは固いなぁ。もっと大らかに生きろ」
「は、はい」
やはり騎士団と魔術師団ではずいぶんと雰囲気が異なる様子だ。
カールに建物の中を案内してもらい、厩舎で馬に引きあわされたあと、最後に団長の宿舎へ連れていかれた。団長と副団長の部屋は隣り合っているので、宿舎での世話についても教えてもらう。
「だいたい、こんなところかな」
「会う人が多すぎて覚えきれないよ」
「そう? とりあえず、あとは夕飯と入浴の準備だな。今日は団長の分も俺がやるから、よく見といて。明日からは頼むな」
「わかった」
アウレリアは素直に頷いた。ここでは弟が先輩だ。以前より従騎士らしくなった弟の姿に、アウレリアは感心していた。
「あと、肝心の場所は近いうちに案内するから……」
「わかった」
あまりのめまぐるしさに、アウレリアは本来の目的を忘れるところだった。
普段、一度にこんなにたくさんの人と会うことがないので、アウレリアは戸惑ってしまう。
(とりあえず、カールを見て早く仕事を覚えないと……)
アウレリアはカールが着替えと入浴の準備をするのを見ながら、収納場所や必要な道具を覚えていく。大体の準備が終わると、カールは自分のメンターであるディートハルトの準備をするために部屋を出ていってしまった。
(前途多難……かも)
三 騎士団の日常
アウレリアはユーリウスが部屋に戻るまで、とりあえず衣類の入ったチェストを整理して時間を潰していた。
扉が開いて、ユーリウスが帰ってくる。
「お疲れ様です」
アウレリアが声を掛けると、ユーリウスは驚いたような顔をして一瞬固まった。
「そうか、今日から従騎士になったんだったな」
「はい」
「えーと、アーベル、着替えは……」
ユーリウスは慣れていない様子で言いよどんだ。
「はい、カールが教えてくれました。そちらに用意してあります」
「そうか」
返事はしたもののユーリウスは着替えを持たずに、部屋に備え付けられた浴室へ姿を消す。
アウレリアは手持ち無沙汰で、ふと目にとまった本を開いてみる。兵法に関する書物で、なかなか面白い。彼女はいつの間にか、夢中になって読んでいた。
ふと気づくと、ユーリウスがシャワーを済ませて浴室から出てきていた。
アウレリアは慌てて本を元の位置に戻す。
ユーリウスは髪を拭きながら、腰にタオルを巻いただけの姿で浴室から歩いてくる。
アウレリアは頬が紅潮するのを抑えられなかった。
なるべく裸の上半身が視界に入らないように横を向く。
(なんで裸で出てくるの? 腰が隠れてるだけましだけど……いつもこんな様子だったら、わたし、もたないかも……)
「面白いか?」
「はい?」
「その本だ」
アウレリアが先ほどまで読みふけっていた本を指す。
「はい。とても面白いです」
アウレリアの返事は、緊張のあまり大声になってしまう。
「そうか、今日はこれで下がっていい」
「はい。失礼します」
アウレリアはドキドキとうるさい心臓をなだめすかして、どうにか部屋を辞した。
(相変わらず無愛想な人……)
廊下で物思いにふけっていると、ちょうど隣の部屋からカールが出てきた。
「カール」
「ああ、そっちも終わったのか。じゃあ夕飯を食べに行こう」
「うん」
カールと話しているうちに、アウレリアはようやく平常心を取り戻していく。
アウレリアはカールに連れられて、昼間案内された食堂へ足を踏み入れる。昼間とは違って今は人であふれていた。
「この時間は従騎士や、騎士以外の、裏方連中の食事時間だな。そこに盛られた皿から好きなだけ取って食べればいい」
「なるほど。効率的だな」
アウレリアはカールと一緒に食事を済ませると、宿舎へ戻った。カールが最初に案内してくれた部屋だ。
彼女は疲労困憊でベッドに倒れ込んだ。
「ふあー、もう無理」
「姉さん、そのまま寝る気? 髪くらいはほどいておいたら?」
「もう、面倒くさい」
アウレリアはうつ伏せのまま、やけになってカールに答える。
「ま、俺が頼んだことだし、できる限り手伝うから許して」
カールの手が、首の後ろできっちりとまとめて編み込まれた髪をそっとほどいていく。優しい弟の手の感触に安心して、アウレリアは睡魔に身を任せた。
翌朝早くカールに起こされたアウレリアは、ユーリウスの従騎士として忙しく働き始めた。
ユーリウスが起き出す前に朝食を取り、着替えを準備する。ユーリウスが起きたあとは、すぐにベッドのシーツを替えて、洗濯に出す。ついでに自分の分の洗濯もお願いする。さすがに下着の類は自分で洗濯することにした。女物の下着を見られたら正体がばれてしまう。
それが終わると再び団長室へ戻る。書類の配達や、団長の休憩に備えて飲み物を準備するなど、やるべきことは山のようにあった。
アウレリアはその合い間に時間を見つけて馬の世話をすることにした。馬で移動することは魔術師団では少ないものの、全くないわけではないので一応乗馬はできる。それに加えてアウレリアは魔術で馬の意思がなんとなくわかるので、世話をするのは得意だった。
ユーリウスの乗る青毛の馬は、とても大きく立派な牝馬だった。ブラシを掛ける間も、大人しくしてくれている。
「シュヴァルツ、美人だね」
青毛の美しさに思わずアウレリアが声を掛けていると、後ろから声がした。
「そうだろう」
「だ、団長?」
(なんでこんなところにこの人がいるの?)
アウレリアは驚いて声を上げた。
「なんでこんなところに、とでも言いたそうだな」
気持ちを見透かされて、アウレリアはますます動揺した。
「馬を大事にしない騎士はいない」
「はあ」
ユーリウスはそれだけ言うと、厩舎を出ていった。
いったい何が言いたかったんだろう?
「お前の御主人様は、よくわからない人だね」
しかし青毛からは否定するような意思が返ってきて、アウレリアは驚いた。
「そう?」
アウレリアは青毛にゆっくりとブラシを掛けつつ考える。
(もしかしたら、騎士なら馬を大事にしろってことを言いたかったのかな?)
だとしたらすごくわかりにくい。彼は非常に不器用な男なのかもしれないとアウレリアは思った。
四 恋の自覚
アウレリアはユーリウスの世話をして過ごすうちに、彼が無愛想だがとても優しいことに気づいた。直接口に出しては言わないが、さりげない行動で騎士のあるべき姿を示してくれる。それは馬の世話の仕方だったり、真摯に訓練に打ち込む姿だったりした。
指示された仕事の多さに、無理かもしれないと思いつつも頑張ると、ちょうど時間内に終えることができたりする。アウレリアの技量を考えた上で量を調整してくれているのだ。
アウレリアはユーリウスの処理能力の高さにも感心していた。
書類を溜め込んでしまう、どこかの魔術師団長とは大違いだ。
今は鍛錬の時間で、ユーリウスはディートハルトと手合わせをしていた。アウレリアは指示された通り、武器庫に練習用の長剣を取りに向かっていた。少し道に迷いながらも、どうにか武器庫にたどり着くと、練習用の二本を持ち貸出簿に記録する。
訓練場に戻ると、アウレリアは持ってきた長剣をユーリウスに渡した。
彼はそのうちの一振りをディートハルトに手渡す。
ディートハルトも黙って剣を受け取ると、距離を取って構えた。訓練場の周りには、団長たちの手合わせを見物しようと騎士たちが集まり始めている。
アウレリアは固唾を呑んで訓練の様子を見守る。
「はじめ!」
審判役の騎士の声を合図に、ふたりは同時に動いた。打ち合わせられる剣は、まるで一つの舞のように美しく、流れるように動く。アウレリアはいつの間にかユーリウスの動きに見とれていた。
(団長すごい! あんなに重い長剣を軽々と振り回すなんて!)
ふたりの剣がぶつかり合う音と、足音だけが訓練場に響いている。見学している騎士たちも、無言でふたりの剣技に見とれている。
アウレリアの目はユーリウスの姿に釘付けになっていた。剣技の腕はディートハルトと互角なのに、アウレリアの目はなぜか彼ばかりを追ってしまう。強い闘志をまとった眼差しに見とれていたのかもしれない。
ふたりは汗をかきながらも、その手を休めることなく打ち込みあっている。結局試合は決着がつかず、引き分けとなった。
アウレリアは戻ってきたユーリウスに、タオルを手渡し、代わりに剣を受け取った。いつもは無愛想な彼が珍しくアウレリアに微笑みかけてきた。
アウレリアの鼓動が跳ね上がる。
(びっくりしたー!! 団長が笑うと可愛い……かも)
アウレリアは受け取った剣を握りしめたまま、しばし茫然としていた。
§
アウレリアが騎士団に潜入して数日が過ぎ、仕事にも慣れてきたころ、アウレリアはカールから呼び出された。ようやく本来の目的である鎧の修理に取り掛かることができる。
カールから魔石の修理の依頼を受けたときから、アウレリアはずっとその魔石を見ることを楽しみにしていた。
魔石には、それぞれ独自の術式が使われていることが多く、魔術師にとっては格好の研究材料なのだ。
(ふふ、楽しみー。どんな魔石が使われているのかな)
カールはアウレリアをつれて武器庫へ入る。先日は余裕がなくてろくに中も見なかったが、武器庫にはさまざまな武器が並べられている。普段訓練で使用する武器や防具とは別に、奥の部屋には正装用の物がしまわれていた。
カールはその中から一つの鎧を取りだした。
「これなんだけど……」
カールは不安そうにアウレリアの顔を見上げた。
アウレリアは鎧にわずかに残っている魔石の欠片から、魔術の痕跡を探って驚愕した。
(ちょっと、これは……)
「なにこれ。ちょっとすごいよ、この魔石」
「そうなの?」
魔術に関してはほとんど才能のない弟にはわからないらしい。
「あのね、この魔石を作った人は三重の防御魔術を掛けてる。こんなに防御を重ねて掛けるのは、すごく難しくて、繊細な制御が必要なのよ」
「ふーん。それで、直りそう?」
アウレリアの興奮をよそに、カールは大して感心している様子もない。
「同じ効果の魔石を作らないといけないから、二日くらいかかると思う。石を外して解析できれば、作るのを少しは短縮できると思うけど……」
「二日! そんなにかかるの?」
アウレリアの答えにカールは涙を滲ませる。
「うん。それ以上はうちの団長でも無理」
「じゃあお願い、姉さん」
このためにわざわざ男装して潜入したのだ。もとよりそのつもりだ。
「うん。じゃあ、これ外すね」
アウレリアはカールが外せなかった魔石をいとも簡単に外した。用意しておいた袋に外した魔石を入れて、懐に隠す。
「やっと、すこし安心した」
この弟はどうしてこう能天気なのか。まだ直してもいないのに、安心してどうする。
「そのセリフは直し終わってから言ってね。まだ何もしてないのに気が早い!」
「はい、すみません」
お互いの軽口に笑いながら、奥から練習用の武具が置かれた部屋へ戻る。
直後、入り口に団長が立っているのに気づき、ふたりは青ざめる。
(ちょっと、なんで団長がここに? どうしよう。でも武具の手入れは従騎士の仕事だから怪しくない……はず)
「団長、何か御用ですか?」
素早く立ち直ったアウレリアが声を掛ける。
「いや、アーベルに頼みたいことがあったのだが、忙しいようだな。あとでいい」
ユーリウスはそっけなく言うと、踵を返した。
「大丈夫です。用事は終わりましたから」
アウレリアが声を掛けると、ユーリウスはふたりの前に戻ってくる。
「そうか、ならこの書類を届けてほしい」
アウレリアはユーリウスが差し出した書類を受け取った。確認すると宛先は第一騎士団となっている。
「わかりました。第一騎士団まで届けてまいります」
言うなりアウレリアは、ふたりを置いて駆けだした。普段あまり走ることがなく、最初は慣れない配達の仕事が辛かったのだが、続けているうちに体力がついたのか、段々と楽になってきていた。
魔術師団は第一騎士団と連携して行動することも多いので、よく知っている。だがそれゆえに知り合いも多いので、いつもばれないかと冷や冷やしながら配達をしていた。
髪を下ろしてローブで顔を隠すようにしている魔術師団副団長と、今の、髪を編み込んで元気に走りまわる自分の姿は印象がかなり違うはず。それにあえて堂々と振る舞うほうが気づかれにくいだろうと、努めて普通を装った。
無事配達を終えて第二騎士団の詰所へ戻る途中、アウレリアは従騎士のクルトの姿を見つけた。
クルトは建物の陰で誰かと言い争っているようだ。
「お前が―――だから―――なんだ」
「ほんとう――すみま――」
険悪そうな雰囲気にアウレリアは思わず足を止めた。よく見るとクルトが話している相手は彼の仕えるロベルトという騎士だった。
「どうしたの、クルト?」
「なんだお前? お前には関係ない!」
アウレリアが声をかけると、ロベルトはクルトの姿を遮るように立ちはだかる。
「だけど、クルトが脅えて」
ロベルトの振り上げた拳が彼女の頬を掠め、壁に打ち付けられる。アウレリアの声は途中で宙に消えた。クルトの脅えた瞳がアウレリアを見つめている。
「アーベル、いいから……」
震える声がアウレリアをロベルトから遠ざけようとする。
「どういうことですか? 拳で相手を黙らせようなど、騎士の行いとは思えませんが」
冷静なアウレリアの指摘に、ロベルトは顔を真っ赤にさせた。
「こいつ!」
アウレリアは今度こそ殴られると思い、目をつぶった。
しかし――いつまでたっても衝撃が訪れず、恐る恐る目を開く。
見れば、ユーリウスがロベルトの拳を受け止めていた。
「団長……」
ロベルトが茫然と、自分の拳を受け止めた相手を見つめる。
「どういうことだ? 無抵抗の者に拳を振り上げるなど、騎士のふるまいではない」
ユーリウスの低い声がロベルトを問いつめる。
「それは……あの、わたしの従騎士があまりに要領が悪いので指導していたら、横から口出しを」
「だとしても、口頭で注意すれば済むだろう」
ロベルトの言い訳はユーリウスの冷たい声に遮られた。
アウレリアは感謝の思いで彼を見上げる。
「さっさと任務に戻れ。この件については後日改めてふたりから話を聞く」
ロベルトに引っ張られながらも、クルトが感謝の眼差しをアウレリアに送ってきた。彼女も目で応えると踵を返し、団長室へ戻ろうとする。
するとすでにその場を去ったはずのユーリウスが、目の前に立ちはだかっていた。アウレリアは恐る恐る尋ねる。
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