魔王様のメイド様

文月 蓮

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番外編

とうとうきてしまいました 3 ※R18

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 ロザリアの視界に魔王の金色の瞳が大きく映った。
 ベッドに押し倒されたロザリアは、身体の芯に熱が点るのを感じた。

――これは、だめだ。

 熱っぽさはこれまで感じていたものとは比べ物にならないほど、激しさを増している。全身の血が脈打つような感覚がして、思考がかすんでいく。
 理性を繋ぎとめていく糸が、まるでぶつりぶつりと音をたててちぎれていくようだった。

――ほしい、ほしい。エヴァンジェリスタがほしい。

 膨れ上がる本能が理性をたやすく駆逐する。

「エヴァ……、やだっ、おかしくなる……」

 自分が制御できない恐怖に、ロザリアはおびえた。
 唇からこぼれる息がどんどん上がっていく。眦に涙が盛り上がり、頬を伝う。
 もはや自分が嬉しいのか、悲しいのか、恐ろしいのかもよくわからない。
 どこまでも浮き上がってしまいそうな感覚に、ロザリアは魔王の身体にしがみついた。

「ロザリア。もっと、我に蕩けたおまえを見せて……」

 魔王のうっとりとしたささやきが、耳から侵入しロザリアの脳を揺さぶる。

――なに、これぇ?

 全身をベルベットで撫でられるような感覚に、彼女は身体を震わせた。
 彼の欲望にけぶる瞳、撫でるような声のほうがよほどとろけているような気がした。
 ロザリアのおなかの奥にたまった熱が高まり、蜜を溢れさせる。
 じわりと下腹部に広がった濡れた感触に、ロザリアは熱い吐息をこぼした。

「……っは、あ……」

 もじもじと膝をすり合わせ、集まる熱を散らそうと勝手に腰がうごめく。
 魔王の体液によってもたらされる催淫効果とまったく異なる、魔猫の本能がロザリアを突き動かしていた。

「かわいい……」

 魔王は彼女の唇に己のそれを重ねてくる。
 深い口付けに、ただでさえ荒い息がさらに速まった。
 全身から力が抜けて、もう考えられない。

「ロザリア、我がほしい?」
「ほしっ、はやくっ……!」

 ただ一刻も早く彼と繋がりたいという焦燥がロザリアの内部に渦巻いている。力の入らない腕に精一杯の力をこめてしがみつく。

「ん、いい返事だね」

 魔王は手早く彼女の着ていた服を脱がせる。
 彼の手が肌に触れると、ロザリアはそれだけでわなないた。

「っは、あ……」

 下着を足から引きぬかられると、あふれた蜜が銀の糸を引く。

「あふれてるね。発情期になるとこんなに……違うのか……」

 魔王は恍惚と呟き、自分も一糸纏わぬ姿となる。
 ロザリアはもういっときも待てなかった。いますぐ彼と繋がらなければ、死んでしまいそうだ。とけ合ってひとつになりたい。この身の空虚を埋め、焦燥に焼かれる身体を満たしてほしい。

「エヴァ、エヴァっ、も、ほしいっ……!」
「だめだよ。そんなにあせらないで。我の子猫ちゃん」
「だって、ああーーーっ」

 魔王の指があふれる蜜を掻き分けて内部へ侵入する。
 いつもは丹念に全身に愛撫を施され、ぐずぐずにとろけたところで挿入されることがほとんどだったが、今日の魔王はいつになく性急だった。
 二本の指がぬかるんだそこをかき回す。

「あ、あ……」

 ロザリアはその刺激に大きく目を見開きぼんやりと視線を宙に彷徨わせる。

「ん、やわらかいね。もう、いれてもいい?」
「はやく、ちょうだいっ!」

 思考はとけた脳の片隅に追いやられていて、なにも考えられない。
 魔王は指を引き抜くと、彼女の身体を抱き上げた。
 ふわりと浮き上がるような感覚がしたかと思うと、彼の太ももの上に乗せられる。

「さ、おいで。もっと深く我と繋がりたいだろう?」
「もう、ほしいの。はやく。たす、けてっ」

 ロザリアはぽろぽろと涙をこぼす。彼が与えてくれる快楽を知っている身体は、その先に待つ者を期待して震えていた。

「ん、きょうは我も余裕がないからすぐにイってしまうかも」

 魔王は彼女の腰をつかんで、持ち上げる。屹立する楔が彼女の内部へゆっくりとしずんでいく。

「っひ、あ、ああぁーーーーーっ!」

 視界がちかちかと明滅した。
 太い楔が内部をこすりながら奥へと突き進む。
 あまりに激しい快楽に、ロザリアの腰は勝手に逃れようと動いた。けれど、魔王が腰をつかんでいるせいで逃れられない。

「や、まって……」

 太ももの内側が痙攣し始めて、限界が近い。

「いいよ。そのまま気持ちよくなって」
「っひ、あ、や、だめぇ……」
「我も、いままでいちばんできもちいい」

 熱のこもった彼の声に促されて、ロザリアの意識は絶頂へと追い上げられた。

「あああぁぁっ、ああーーー」

 背中がしなり、張り詰めたあと、彼女は全身をがくがくと震わせる。

「っく、っは、我ももっていかれそう」

 魔王はぎゅっと彼女を抱きしめて共に昇りつめそうになった波をやり過ごした。
 けれど彼は大きく息を吐くと、再び彼女の腰をつかんで揺さぶりはじめる。

「ひうっ、っや、も、イってる……からぁ」

 絶頂から降りる隙を与えられず、ロザリアの意識はなんども押し上げられる。

「きもちいいでしょ?」
「きもち、い、から……も、やだぁ……」

 もはやロザリアはなにを喋っているのかもわからなくなっていた。

「おまえは、誰のもの?」
「エヴァ……、エヴァンジェリスタの……」
「そうだよ。忘れないで。そして我はおまえのものだよっ……」

 抜けてしまいそうなほどぎりぎりまで引き抜かれた楔が、一気に埋められる。

「っひあああアアアッ!」

 ロザリアは咄嗟に魔王にしがみつく。意図せず彼の角に触れてしまい、魔王は快楽に顔を歪ませた。

「我もイくっ!」

 宣言と同時に彼女の奥深くに熱い飛沫が注がれる。
「っや、なに? あついっ……!」

 子種を注がれただけでは、ここまで熱く感じるのはおかしい。
 ロザリアは違和感に首を振った。

「逆らわずに我の魔力を受け止めて」
「っひ、あ……、あつぃよぅ!」

 全身が熱く沸き立ち、魔王の魔力が細胞の隅々にまで行き渡る。発情の熱とはまるで違う焼かれるような感覚に、ロザリアは身をよじった。

「この魔力はおまえの身体を完全なる伴侶に作り変える。我と共に最期の時を迎えるまで、ともに歩めるように……」

 ロザリアは衝撃に目を見開いた。

「エヴァ、それはっ……!」

 魔人の血を引く魔王の寿命は恐らく千年ほど。ロザリアもまた母から魔人の血を引いているとはいえ、魔猫の血が濃く現れた彼女の寿命は長くとも三百年ほどしかない。
 ロザリアは自分が彼を残して先に逝くことを知っていた。
 魔力を持たぬ人間から見れば気の遠くなるような長い年月も、魔界の住人にとってはさほどの長さではない。
 それでも彼女が亡き後、数百年の時を彼が孤独のうちに過ごすことは望んでいなかった。
 今だけでいい。自分が生きている間だけでも愛されたいと望むのは欲深いことだろうか。
 そんな彼女の心の奥底に秘められた願いを、魔王は知っていたかのように生命の根源となる魔力を分け与えている。

「だめっ……」

 魔王が彼女に魔力を分け与えれば、ロザリアの寿命は確かに延びるだろうが、魔王の寿命は確実に縮む。
 ロザリアが事前に彼の意図を知っていればきっと全力で止めただろう。
 けれど発情に浮かされて、その兆候を見逃してしまった。
 ロザリアの頬から止まることのない涙がぱたぱたとシーツを濡らす。

「我の子を孕めばいい。そして我の命を受け取って!」
「ひあぁぁア!」

 彼女の身体の奥深くに打ち込まれた楔からあふれた魔力が、彼女の細胞を塗り替えていく。命の理を書き換え、伴侶たる者と最期まで共に歩めるほどの時を分け与えられる。

「ロザリア、愛してるっ!」

 魔王の悲痛な叫びを聞きながら、ロザリアは意識を飛ばした。
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