1 / 81
第一部
誕生の記憶
しおりを挟む
気づいた時には、暗く狭い場所に閉じ込められていた。
でも、不思議と怖くはなかった。
温かく、時折くるりと上下が入れ替わるその場所は、ひどく落ち着く。いつまでもこの場所で揺蕩っていたい。
優しい男性の声と、女性の声が交互に聞こえてくる。
なんと言っているのかはよくわからないが、彼らが私に話しかけてくる。
声の調子や、断片的な言葉をつなぎ合わせてみると、どうやら私が生まれてくるのを待っているらしい。
そうか、私は赤ちゃんなのだ。ようやく私は自分の置かれた状況を理解しつつあった。
さっきまで苦しかったような、ずっと眠っていたような、そんな気もして、記憶は曖昧だ。
けれども、父親や母親らしき人の声が聞こえると、きゅっと胸がうずいた。
会いたい。
この優しい声の主たちに会いたい気持ちが強くなる。
けれど何かがまだその時ではないとささやく。
私はひたひたと迫る睡魔に意識を委ねた。
どれだけの時間が流れただろうか。
やがてその時が来たのだとわかった。
空に亀裂ができて、眩しい光が差し込んで来る。
世界が、壊れる。
いいえ、ちがう。
壊れたのは、タマゴの殻だった。
会いたかった。やっと会えるのだ。喜びのままに叫んだ私は硬直した。
「ピギャー」
あれ? なんだか、声がおかしい。私、こんな声だった?
大きく目を見開いて声の主を探す。けれど薄い膜がかかったように視界にはぼんやりとした人影しか映らない。
むむ、おかしいぞ?
「ああ、生まれた」
「ルチア!」
どうやら私の名前はルチアと言うらしい。
割れたタマゴの殻を押しのけて、ぺろりとした感触が身体を舐めた。
ええ? な、舐められた?
視界いっぱいに大きな影が映る。
「かわいいな」
「かわいいわ」
両親らしき影が、交互に私を舐めて喜んでいる。
彼らの姿はぼんやりとしているが、その形が人ではないことは明らかだった。
尖った耳に、大きな翼、そしてかぎ爪を持つ手。
長い尻尾を持つ強大な存在。
そんな彼らは私の誕生を心から喜び、慈しんでくれる。
どうやら、私ルチアはドラゴンに生まれ変わったようです。
でも、不思議と怖くはなかった。
温かく、時折くるりと上下が入れ替わるその場所は、ひどく落ち着く。いつまでもこの場所で揺蕩っていたい。
優しい男性の声と、女性の声が交互に聞こえてくる。
なんと言っているのかはよくわからないが、彼らが私に話しかけてくる。
声の調子や、断片的な言葉をつなぎ合わせてみると、どうやら私が生まれてくるのを待っているらしい。
そうか、私は赤ちゃんなのだ。ようやく私は自分の置かれた状況を理解しつつあった。
さっきまで苦しかったような、ずっと眠っていたような、そんな気もして、記憶は曖昧だ。
けれども、父親や母親らしき人の声が聞こえると、きゅっと胸がうずいた。
会いたい。
この優しい声の主たちに会いたい気持ちが強くなる。
けれど何かがまだその時ではないとささやく。
私はひたひたと迫る睡魔に意識を委ねた。
どれだけの時間が流れただろうか。
やがてその時が来たのだとわかった。
空に亀裂ができて、眩しい光が差し込んで来る。
世界が、壊れる。
いいえ、ちがう。
壊れたのは、タマゴの殻だった。
会いたかった。やっと会えるのだ。喜びのままに叫んだ私は硬直した。
「ピギャー」
あれ? なんだか、声がおかしい。私、こんな声だった?
大きく目を見開いて声の主を探す。けれど薄い膜がかかったように視界にはぼんやりとした人影しか映らない。
むむ、おかしいぞ?
「ああ、生まれた」
「ルチア!」
どうやら私の名前はルチアと言うらしい。
割れたタマゴの殻を押しのけて、ぺろりとした感触が身体を舐めた。
ええ? な、舐められた?
視界いっぱいに大きな影が映る。
「かわいいな」
「かわいいわ」
両親らしき影が、交互に私を舐めて喜んでいる。
彼らの姿はぼんやりとしているが、その形が人ではないことは明らかだった。
尖った耳に、大きな翼、そしてかぎ爪を持つ手。
長い尻尾を持つ強大な存在。
そんな彼らは私の誕生を心から喜び、慈しんでくれる。
どうやら、私ルチアはドラゴンに生まれ変わったようです。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる