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第一部
チートじゃなかったの?
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初めて精霊と契約してから、一年くらいが過ぎた。
「お母しゃん……」
ようやく、「キュ」とか「ピギャー」以外にも言葉をしゃべれるようになった。でも舌の動きがいまひとつで、舌足らずになってしまうのが目下の悩みだ。
「ルチア、どうしたの?」
母は相変わらず美しい。
ドラゴンはあまり年をとらないのだろうか。しわがないのでドラゴンの年齢はよくわからないままだ。
最近は少しずつ父や母からドラゴンや精霊について学んでいる。
「目が回りましゅ」
私はふらふらと母の腕の中に倒れこんだ。
あれから風、地、火の三つの属性の精霊と契約することができた。そのために、精霊の糧となる魔力の供給が追いつかなくなって、いつも魔力切れ寸前だ。
成長すれば魔力も増えるのでそのうち改善すると教えられたのだが、今のところは我慢するしかない。
魔力切れを起こすと貧血のような症状が現れる。
せっかく四属性の魔法が使えるというのに、私はいつもふらふらで、魔法の練習どころではない。
今も気持ちが悪くて、母に助けを求める。
「かわいそうに。私が代わってあげられたらいいのに」
私は母に運ばれ、巣の上に横になった。
顔や頭を長い舌で舐められると、気持ちの悪さが少しだけましになる。
母のひんやりとした鱗に頭を乗せて、私は目をつぶった。
私は水竜である母の血を強く引き継いでいるらしく、水の精霊とはとても相性がいい。
普通ならば水竜は水の精霊としか契約できないことが多いらしい。
水と火、風と地はそれぞれ相性がよくないので、よほどの魔力の持ち主でなければ、同時に契約できない。
なのに私がすべての属性を使うことができるのは、この身体に流れる血のおかげだ。
ドラゴンは同じ種のドラゴンと結婚するのが一般的らしい。
それなのに、我が家系は変わり者が多いのか、異種のドラゴンとの婚姻を繰り返してきた。
火竜である父の両親は火竜と風竜なので、父には火と風の両方を操る適性がある。
そして想像はつくと思うが、水竜である母は、地竜と水竜の両親から生まれたので、地と水の両方の魔法を使う適性がある。
火と風、地と水は相性がとてもいいので、この二つの種の間ではたまに結婚する者がいるのだ。けれども互いの相性が悪い、火竜と水竜、風竜と水竜はめったに結婚しない。
なので父と母は火竜と水竜というかなり珍しいドラゴンの夫婦なのだ。
そういうわけで、四つのドラゴンの種の血を引く私は、四つの属性すべてに適性がある。
ちなみに同じ条件で生まれたはずの兄たちは、風竜と地竜だがぞれぞれの属性にしか適性がないらしいのだ。
解せぬ~。
そんなわけでせっかく四つの属性すべての魔法が使える状態で、ひゃっほいチートだぁ、と喜べたのは母から複数属性の持ち主の特性を聞くまでだった。
いくら複数の精霊と契約できたとしても糧となる魔力は一人分しかない。つまり、精霊一霊あたりに割り当てられる魔力が少なくなってしまうので、その分魔法の威力も弱くなるのだ。
考えてもみてほしい。
全部の属性魔法を使えるけれども威力はすべて初級止まりと、使える属性はひとつだけれど上級の魔法が使えるのであれば、上級のほうが明らかにかっこいいではないか。
つまるところ、私の魔法の才はよほどの魔力がなければ強くなることは見込めない。
こうなったら、身体を鍛えて強くなろうと思ったのだが、こうも体調不良が続くと身体を鍛えるどころではない。
これって、詰んでる?
「お母しゃん……」
ようやく、「キュ」とか「ピギャー」以外にも言葉をしゃべれるようになった。でも舌の動きがいまひとつで、舌足らずになってしまうのが目下の悩みだ。
「ルチア、どうしたの?」
母は相変わらず美しい。
ドラゴンはあまり年をとらないのだろうか。しわがないのでドラゴンの年齢はよくわからないままだ。
最近は少しずつ父や母からドラゴンや精霊について学んでいる。
「目が回りましゅ」
私はふらふらと母の腕の中に倒れこんだ。
あれから風、地、火の三つの属性の精霊と契約することができた。そのために、精霊の糧となる魔力の供給が追いつかなくなって、いつも魔力切れ寸前だ。
成長すれば魔力も増えるのでそのうち改善すると教えられたのだが、今のところは我慢するしかない。
魔力切れを起こすと貧血のような症状が現れる。
せっかく四属性の魔法が使えるというのに、私はいつもふらふらで、魔法の練習どころではない。
今も気持ちが悪くて、母に助けを求める。
「かわいそうに。私が代わってあげられたらいいのに」
私は母に運ばれ、巣の上に横になった。
顔や頭を長い舌で舐められると、気持ちの悪さが少しだけましになる。
母のひんやりとした鱗に頭を乗せて、私は目をつぶった。
私は水竜である母の血を強く引き継いでいるらしく、水の精霊とはとても相性がいい。
普通ならば水竜は水の精霊としか契約できないことが多いらしい。
水と火、風と地はそれぞれ相性がよくないので、よほどの魔力の持ち主でなければ、同時に契約できない。
なのに私がすべての属性を使うことができるのは、この身体に流れる血のおかげだ。
ドラゴンは同じ種のドラゴンと結婚するのが一般的らしい。
それなのに、我が家系は変わり者が多いのか、異種のドラゴンとの婚姻を繰り返してきた。
火竜である父の両親は火竜と風竜なので、父には火と風の両方を操る適性がある。
そして想像はつくと思うが、水竜である母は、地竜と水竜の両親から生まれたので、地と水の両方の魔法を使う適性がある。
火と風、地と水は相性がとてもいいので、この二つの種の間ではたまに結婚する者がいるのだ。けれども互いの相性が悪い、火竜と水竜、風竜と水竜はめったに結婚しない。
なので父と母は火竜と水竜というかなり珍しいドラゴンの夫婦なのだ。
そういうわけで、四つのドラゴンの種の血を引く私は、四つの属性すべてに適性がある。
ちなみに同じ条件で生まれたはずの兄たちは、風竜と地竜だがぞれぞれの属性にしか適性がないらしいのだ。
解せぬ~。
そんなわけでせっかく四つの属性すべての魔法が使える状態で、ひゃっほいチートだぁ、と喜べたのは母から複数属性の持ち主の特性を聞くまでだった。
いくら複数の精霊と契約できたとしても糧となる魔力は一人分しかない。つまり、精霊一霊あたりに割り当てられる魔力が少なくなってしまうので、その分魔法の威力も弱くなるのだ。
考えてもみてほしい。
全部の属性魔法を使えるけれども威力はすべて初級止まりと、使える属性はひとつだけれど上級の魔法が使えるのであれば、上級のほうが明らかにかっこいいではないか。
つまるところ、私の魔法の才はよほどの魔力がなければ強くなることは見込めない。
こうなったら、身体を鍛えて強くなろうと思ったのだが、こうも体調不良が続くと身体を鍛えるどころではない。
これって、詰んでる?
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