ドラゴンが最強だなんて誰が言った?

文月 蓮

文字の大きさ
20 / 81
第二部

冒険者ギルドに行きたい

しおりを挟む
「その……、冒険者ギルドって、どんなところなんですか?」

 私がおずおずとクラウディオに尋ねると、彼は肩をすくめた。

「話が、長く、なりそうだ。歩きながらで、いいか?」
「はい」

 私は一も二もなくうなずいた。
 まずは魔法で倒した角兎ホーン・ラビットから、魔石を回収する。魔石は倒した三匹のうちの一匹にしかなかったが、どんな魔物からでも採集できるわけでもない。
 私は背中の荷物をきちんと背負いなおして、クラウディオと共に歩き始めた。
 クラウディオと私が今目指しているのは、ザッフィーロ国のヴェルディという北部の街らしい。

「ヴェルディの、街を、知らない、なんて、あんたは、どこから、来たんだ?」
「えっと……」

 私は自分がドラゴンであることを隠しておくつもりだった。
 父や母とも、人の住む場所に行くのならば、けっしてドラゴンだと知られてはいけないと、種族を隠すことを約束したのだ。
 ドラゴンハンターに素材として狙われるのはまっぴらだし。

「私はここからずっと北の山のふもとで育ちました」
「北の、山というと、マリーニ山脈の、辺りか?」

 私が人の世界に降りるにあたって、あまり不自然ではないように素性を考えていたのだが、にわかに自信がなくなってくる。
 しかも、あの辺の山がマリーニ山脈って呼ばれているなんて、初めて知ったよ。

「そうです。モリーニの町の近くで……」

 私は森人しんじんの町の名前を告げる。

「そうか……」

 しばらく無言のまま歩いた。

「そんなに、小さいのに、旅に出るとは、なにか、深いわけが、あるのだな」
「え、ちょ、小さい?」

 私は驚いてクラウディオの顔を見上げた。
 彼は私のことを、いったい何歳だと思っているのだろう。

「私、小さくなんてないよ?」
「どう見ても、十には、届いていない、ように、見えるが……」
「十五歳です」
「む……」

 クラウディオは少し後ろめたそうに視線を逸らした。

「えっと、冒険者ギルドについて、だったな……」
「はい」

 どうも、クラウディオさんと話していると調子が狂う。ゆっくりとした話し方がうつってしまいそうだ。

「名前、性別、年齢、種族を登録すると、ギルドカードが、もらえる」

 クラウディオは、首元をごそごそと探って、鎖がついたプレートを取り出した。

「見てみろ」

 銀色の板に、文字が刻まれている。
 文字と星のマークが三つ刻まれている。
 やばい、やばい、やばい。私、文字が読めない!!!!
 あんまりにも文字とは縁遠い生活をしていたせいで、文字の勉強するのを忘れていた。
 だって、ドラゴンは文字がなくても生活できるし!

「ごめん……。読めない」

 私はしょんぼりとプレートをクラウディオに返した。

「これが、ギルドランク」

 クラウディオはプレートの星を指す。

「登録した、ばかりだと、若葉。試験があって、星になる。ひとつから、五つまで」

 えっと、ギルドランクは若葉から星五つまであって、試験に合格すると増えるってことか。じゃあ、星一つだと初級で、五つなら上級ってところかな?
 星三つのクラウディオは中級ということになる。

「ここが、年齢。二十二」

 ごめん、クラウディオ。もっと年上だと思ってた。

「種別は、人。性別は、男。名前は、クラウディオ、だな」

 私はプレートに刻まれている文字をそっとなぞった。
 よし。街についたら文字の勉強をするんだ。

「見せてくれて、ありがとう……」
「ああ」

 クラウディオは甲冑の中にプレートをしまう。

「なくても、冒険はできる、が、魔石の、買取りを、してくれるのは、ギルドだけだ」

 なるほど。

「あとは、直接、ギルドで、教えてもらえば、いい」
「いろいろと、教えてくれてありがとう」

 クラウディオはなんだかちょっと疲れて見えた。

「これも、冒険者の、務めだ。それより、日が、暮れるまでには、ヴェルディに、着きたい。急ぐぞ」
「はいっ。クラウディオ」

 私は彼の好意に甘えて、ヴェルディの街に向かって進む足を早めた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...