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第三部
次なる目標は
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結局その日はセッキの村の酒場の上に泊めてもらって、翌朝ヴェルディの街へ戻った。
冒険者ギルドは朝のクエスト受注ラッシュ時間は過ぎていたようで、窓口で並ぶことなく私たちの順番がきた。
「討伐が完了しました」
討伐証明となる岩鳥の尾羽と魔石、それから私のギルドカードを窓口に提出する。
「ちょっとお待ちください」
ギルドの職員はすぐに岩鳥の尾羽が通常のものと違うことに気付いたようで、あわてた様子で席を立った。
しばらくして戻ってきた職員の手には銀貨の袋と、銀色のギルドカードが握られている。
「岩鳥の変異種であることを確認しました。クエストのランクを星三つに変更し、完了したことを認めます」
「やった」
私は思わずこぶしを握って喜びをかみ締めた。
「討伐報酬も十二枚から、二十枚に変更となります。魔石については最上級で、金貨一枚となります。換金されますか?」
「はい、お願いします」
「では、報酬と代金は銀貨でお支払いいたします。それから、ルチアさんのギルドランクについてなのですが……」
ヴィートの予想通り、試験なしでギルドランクの昇格が認められた。
若葉だったとはいえ、星三つのクエストを達成したことと、クラウディオやヴィートとの連携も問題ないと彼らが推薦してくれたことで、ちょっと異例のことながらギルドランクの昇格が決定した。
そんなわけで、私は討伐報酬の銀貨二十枚と魔石の代金、銀貨十二枚と合わせて三十二枚、それから赤銅色から銀色に変わったギルドカードを受け取った。
報酬の分配と今後のことを話し合うために、一旦窓口からギルド内のカフェっぽいところに移動した。
ここでは昼間は飲み物やちょっとした軽食を、夜になるとお酒も提供しているらしい。
とりあえず私はいつものようにジュースを注文した。
お子様だと二人に笑われたけど、気にしない。
「じゃあ、分配するか」
最初に報酬は山分けと決めていたので、まずは銀貨を一人十枚ずつ分けてテーブルの上に山を三つ作る。これで三十枚。残りの二枚はクラウディオとヴィートの山に一枚ずつ追加する。
「ルチア、一枚、多いぞ」
「いいの。私あんまり役に立てなかったから……」
がんばってくれたのは、オルテンシアだもの。
オルテンシアのことを思い出すと、どうしても落ち込んでしまう。
ドラゴンが最強だなんて、絶対に嘘だ。
本当に強かったら、契約している精霊に無茶をさせるなんてしない。
「じゃあ、これはギルドランクの昇格祝いだ。とっておけ」
ちょっと落ち込んでいた私に、ヴィートが自分の分の山から一枚の銀貨をすっと滑らせて、私の分の山に追加する。
「では、俺からも、昇格おめでとう」
クラウディオもまた、自分の山から銀貨を一枚私の山に移動させた。
「いいの?」
「ルチアが役に立てなかったということは無い。きちんと自分の役割を果たしたんだ。胸を張って受け取ればいい」
「そう……かな」
「俺たちが、いいと、言っている。気にするな」
「うん。……ありがと」
それぞれに分配した銀貨を片付けると、ちょうど注文した飲み物が運ばれてきた。
ちょっと桃に似た感じのジュースでおいしい。
クラウディオとヴィートはコーヒーっぽいものを飲んでいる。一口飲ませてもらったけど、苦くて私には無理だった。
「さて、結論を、だそう」
「何のことだ?」
クラウディオの言葉に、ヴィートは驚いている。
「このまま、パーティを、組むか、どうかだ」
そうだね。あまりにもヴィートとパーティを組んでいても違和感がなくてすっかり忘れていたけど、この岩鳥の討伐クエストを受けたのは、彼とパーティを一緒に組むかどうかを見極めるためだったね。
「あまりにも自然で、すっかり忘れていた。私はぜひ二人とパーティを組みたいと思う。どうだろうか?」
ヴィートは期待をこめた目で私たちを見つめている。
「ルチアの、判断に、任せる」
クラウディオは静かな目で私の答えを待っている。
「それなら、ぜひお願いします。私はもっと強くなりたい。ヴィートとならもっと強くなれると、思うから。クラウディオにも、もうしばらく教えてもらえると、助かります」
「もちろんだよ」
「ああ、師匠として、全力を、尽くす」
クラウディオがこぶしを握って、私のほうに突き出した。
ヴィートもそれを見て、同じようにこぶしを突き出してくる。
ええっと、何だっけ。フィストバンプだったかな?
「仲間だという合図だ」
「うん」
私はうれしくなって、同じようにこぶしを握り、付き合わせた。
「これからも、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「よろしく、たのむ」
みんななんとなく笑顔になる。
うん。ちゃんと仲間になれたって感じがする。
「じゃあ、いずれはパーティでコルシの洞窟へ行くというのが目標でいいだろうか?」
ヴィートの提案にクラウディオがうなずく。
「迷宮に、潜るなら、最低でも、星二つまで、ランクを、上げたほうが、いい」
「あとはできるなら、回復役がほしいな」
「確かに」
「この街のギルドにはあまり登録されていないようだから、拠点を別の街に移すほうがいいかもしれない」
「コルシの、洞窟の、近くなら、多く、ないか?」
「それはいい」
二人の話を聞いていると、ダンジョンに行くにはもう少し時間がかかりそうだ。
「じゃあ、とりあえずコルシの洞窟の近くの街に移動して、回復役を探しながら、私はギルドランクを上げればいいってこと?」
「その通りだ。ルチア」
「ん」
ヴィートは大げさに手を広げているし、クラウディオは言葉少なにうなずいている。
よし。次の目的も決まったし、また、頑張るぞー!
冒険者ギルドは朝のクエスト受注ラッシュ時間は過ぎていたようで、窓口で並ぶことなく私たちの順番がきた。
「討伐が完了しました」
討伐証明となる岩鳥の尾羽と魔石、それから私のギルドカードを窓口に提出する。
「ちょっとお待ちください」
ギルドの職員はすぐに岩鳥の尾羽が通常のものと違うことに気付いたようで、あわてた様子で席を立った。
しばらくして戻ってきた職員の手には銀貨の袋と、銀色のギルドカードが握られている。
「岩鳥の変異種であることを確認しました。クエストのランクを星三つに変更し、完了したことを認めます」
「やった」
私は思わずこぶしを握って喜びをかみ締めた。
「討伐報酬も十二枚から、二十枚に変更となります。魔石については最上級で、金貨一枚となります。換金されますか?」
「はい、お願いします」
「では、報酬と代金は銀貨でお支払いいたします。それから、ルチアさんのギルドランクについてなのですが……」
ヴィートの予想通り、試験なしでギルドランクの昇格が認められた。
若葉だったとはいえ、星三つのクエストを達成したことと、クラウディオやヴィートとの連携も問題ないと彼らが推薦してくれたことで、ちょっと異例のことながらギルドランクの昇格が決定した。
そんなわけで、私は討伐報酬の銀貨二十枚と魔石の代金、銀貨十二枚と合わせて三十二枚、それから赤銅色から銀色に変わったギルドカードを受け取った。
報酬の分配と今後のことを話し合うために、一旦窓口からギルド内のカフェっぽいところに移動した。
ここでは昼間は飲み物やちょっとした軽食を、夜になるとお酒も提供しているらしい。
とりあえず私はいつものようにジュースを注文した。
お子様だと二人に笑われたけど、気にしない。
「じゃあ、分配するか」
最初に報酬は山分けと決めていたので、まずは銀貨を一人十枚ずつ分けてテーブルの上に山を三つ作る。これで三十枚。残りの二枚はクラウディオとヴィートの山に一枚ずつ追加する。
「ルチア、一枚、多いぞ」
「いいの。私あんまり役に立てなかったから……」
がんばってくれたのは、オルテンシアだもの。
オルテンシアのことを思い出すと、どうしても落ち込んでしまう。
ドラゴンが最強だなんて、絶対に嘘だ。
本当に強かったら、契約している精霊に無茶をさせるなんてしない。
「じゃあ、これはギルドランクの昇格祝いだ。とっておけ」
ちょっと落ち込んでいた私に、ヴィートが自分の分の山から一枚の銀貨をすっと滑らせて、私の分の山に追加する。
「では、俺からも、昇格おめでとう」
クラウディオもまた、自分の山から銀貨を一枚私の山に移動させた。
「いいの?」
「ルチアが役に立てなかったということは無い。きちんと自分の役割を果たしたんだ。胸を張って受け取ればいい」
「そう……かな」
「俺たちが、いいと、言っている。気にするな」
「うん。……ありがと」
それぞれに分配した銀貨を片付けると、ちょうど注文した飲み物が運ばれてきた。
ちょっと桃に似た感じのジュースでおいしい。
クラウディオとヴィートはコーヒーっぽいものを飲んでいる。一口飲ませてもらったけど、苦くて私には無理だった。
「さて、結論を、だそう」
「何のことだ?」
クラウディオの言葉に、ヴィートは驚いている。
「このまま、パーティを、組むか、どうかだ」
そうだね。あまりにもヴィートとパーティを組んでいても違和感がなくてすっかり忘れていたけど、この岩鳥の討伐クエストを受けたのは、彼とパーティを一緒に組むかどうかを見極めるためだったね。
「あまりにも自然で、すっかり忘れていた。私はぜひ二人とパーティを組みたいと思う。どうだろうか?」
ヴィートは期待をこめた目で私たちを見つめている。
「ルチアの、判断に、任せる」
クラウディオは静かな目で私の答えを待っている。
「それなら、ぜひお願いします。私はもっと強くなりたい。ヴィートとならもっと強くなれると、思うから。クラウディオにも、もうしばらく教えてもらえると、助かります」
「もちろんだよ」
「ああ、師匠として、全力を、尽くす」
クラウディオがこぶしを握って、私のほうに突き出した。
ヴィートもそれを見て、同じようにこぶしを突き出してくる。
ええっと、何だっけ。フィストバンプだったかな?
「仲間だという合図だ」
「うん」
私はうれしくなって、同じようにこぶしを握り、付き合わせた。
「これからも、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
「よろしく、たのむ」
みんななんとなく笑顔になる。
うん。ちゃんと仲間になれたって感じがする。
「じゃあ、いずれはパーティでコルシの洞窟へ行くというのが目標でいいだろうか?」
ヴィートの提案にクラウディオがうなずく。
「迷宮に、潜るなら、最低でも、星二つまで、ランクを、上げたほうが、いい」
「あとはできるなら、回復役がほしいな」
「確かに」
「この街のギルドにはあまり登録されていないようだから、拠点を別の街に移すほうがいいかもしれない」
「コルシの、洞窟の、近くなら、多く、ないか?」
「それはいい」
二人の話を聞いていると、ダンジョンに行くにはもう少し時間がかかりそうだ。
「じゃあ、とりあえずコルシの洞窟の近くの街に移動して、回復役を探しながら、私はギルドランクを上げればいいってこと?」
「その通りだ。ルチア」
「ん」
ヴィートは大げさに手を広げているし、クラウディオは言葉少なにうなずいている。
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