チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第1章 アストリア王国に転生

19 レオポルド辺境伯の回想

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 レオポルド家は父も兄も騎士である。
 父の父も騎士だった。
 騎士は主君の為に戦うものだと言う。

 俺、クロッシュア・ラグリス・レオポルドは三男だった。
 父からは全く相手にされていなかった。


 2歳上の次兄は俺の事を『チビ』と呼んでしごいてくれた。
 唯一俺をかまってくれる存在だと思っていた。

 だがそれは、稽古と言う名の憂さ晴らしだった。
 無闇に意味も無く毎日叩かれた。
 顔は叩かれなかったが見えない所は常にあざだらけだった。

 俺は幼い心で考えた。
 痛みを和らげる方法、攻撃を緩和する方法、反撃する方法を。


「稽古だ!」

 と言われて容赦なく毎日毎日叩かれるので、一生懸命工夫を凝らす。


 父も兄達も俺も一般的な土属性が、生まれながらの魔法適正だった。
 ところが俺は10歳に成った時に、家族で1人だけマジックシールドと言う魔法を発現した。
 叩かれ続けて、思いが叶ったのだろうか?
『一念岩をも通す』と言う事だろうか?

 俺はその魔法の事を家族に黙っていた。隠していた。
 努力して、研究して、練習して、いざと言う時の為にスキルを昇華させた。


 たゆまぬ努力により、マジックシールド(魔法盾)ディフレクターシールド(偏向盾)リフレクションシールド(反射盾)マルチリフレクションシールド(万能盾)へとレベルアップした。

 しかし、シールドは3分間で消滅する。
 再びシールドを発動するには、2分待たなくてはならない。
 スキルを活かす工夫をして、その特性は秘密にしなければならなかった。




 俺は10歳から王都の騎士学校に入学した。
 騎士学校の寮で同室になったオデールがよく言っていた。

「1番練習したやつが1番強く成れるんだ!」

 オデールはクラスで1番強かった。
 俺は彼より練習した、彼に気付かれないように。

 15歳の時、騎士学校卒業試験の剣術大会決勝で彼と戦った。
 そしてスキル、練習、強さを隠し続けた結果、俺は彼に勝った。
 その結果、主席となり騎士学校を卒業した。



 俺は、王国の騎士団に入って、同期入隊員の班長に成った。
 同期のリーダーになった俺は、一生懸命腹心を作り、仲間を増やす。
 大勢の人間の信頼を得て、グループを作る。
 酒、女、賭け事を黙認してやる。
 真面目な者にも落ちこぼれにも手を差し伸べた。
 仲間を先輩や上司から守ってやる。一緒に罰を受けてやる。時には一緒に反論してやる。


 騎士団の中で己の派閥を築き上げた3年後、俺は国境警備騎士隊に志願した。エリートが自ら志願して入る事は珍しい事だった。

 真面目に勤める一方で権謀術数も駆使して、国境警備騎士隊の指揮官に成り上った。
 前任の指揮官の密輸入斡旋の汚職を暴いて、一時的な代行指揮官に任命された。
 そして長年の悲願だった、国境のウォルフ辺境伯領乗っ取りに急いで取り掛かった。

 俺はウォルフ辺境伯の1人娘に、騎士学校時代から片思いをしていた。
 しかも1人娘と結婚すれば、辺境伯領主に成れる。だが貴族末端の三男騎士が、辺境伯の婿に成れる訳が無い。

 俺は国境警備騎士隊指揮官の立場と人脈を駆使して、彼女と結婚する方法を考えた。
 敵の侵攻からの防備を口実にして騎士隊を街に入れ、領主とその家族を監禁して、有無を言わせず娘を嫁にした。
 すぐに領主の名前で結婚を発表して、娘婿として政治行政裁判を独裁した。
 電撃作戦は上手く成功した。国王や国軍に動く隙を与えなかった。
 

「楽隠居をさせる」として嫁の両親を郊外に軟禁し、俺に逆らう役人を左遷して、言い成りになる者で周りを固めた。
 辺境伯領と国境警備騎士隊の軍事力を背景に国を押さえ込んで、表立って文句を言わせなかった。

 表向きは只の『婿取り』だった。



「後は既成事実を早く作って、後戻り出来なくすれば良い」

 1年後に子供が生まれたが女だった。
 しかし、跡取りでは無いが既成事実は作れた。


 子供などに興味は無い筈だったが、思いもよらず可愛くてしょうがなかった。

「俺は無慈悲な悪徳領主だ、子供などかまうものか!」

 周りの者にそう豪語するが、可愛くてしょうがない。

「娘のために良い父親に成りたい」

 と思うように成ってしまった。



 或る日、気が付くと街には市が開き、亜人達が屋台で商売をしていた。
 アースガルズから来た亜人の商人が、税金を沢山納めてくれる。

 実は、俺がこの領を狙ったもう1つの目的がアースガルズとの交易だった。
 アースガルズは神々の国に続く豊かな国だという噂だ。
 この領の何処かにアースガルズへの橋が有ると言う。しかし俺はその橋を見つける事は出来なかった。それは領主が持つギフトだったのだ。

 娘の1歳の誕生日に、義父と義母により俺の娘にそのギフトが贈られた。考えてみれば領が発展し始めたのは、その頃からだったのだ。

 領の内政は順調に発展し続けた。他領で飢饉や不作に成っても我が領は豊作だった。雨も適度に降り、嵐は避けて通った。
 我が領以外で、食料や物資が不足して価格が高騰しても、我が領は物が溢れていた。
 価格高騰のお陰で、より財政が豊かに成った。
 他領から大量に物資を買い付けに来たが、我が領は物不足に成らなかった。


 俺は増えた財政で、開墾・治水・灌漑・道路などインフラ整備もした。
 更に街は発展して、それに比例して税収も増え続けた。

 貧しい者に施しをして職も斡旋して、富む者には投資や新規事業を働きかけた。
 何もかもが良い方向へと進んでいった。


「ギフト『虹の橋ビフレスト』の恵みじゃ!」

 と義父が言っていた。


 幼く無邪気で快活な娘は、マイペースで遊んでいるだけに見える。
 娘は土属性魔法と光属性魔法に適正があった。
 ワシも妻も妻の両親も、家族の誰も光属性魔法を持っていなかった。

 娘の光属性魔法は、特記事項『女神の御親友』の所為だとしか思えなかった。


「パパンッ! 光属性と土属性がレベル5になったのぅ!」

 5歳に成った娘にそう聞かされた。

 王国の宮廷魔道師や聖女と同じレベル5に成ったと言う。
 上級貴族でもレベル3ぐらいが普通である。
 誰でもレベル4に成れば爵位を貰って宮廷貴族に成れると言われている。
 そのぐらい貴重なレベルで、しかも希少な光属性魔法である。

 10歳に成ったら王都の魔法学院に通わせなければならない。
 悪い虫が付かなければ良いのだが。
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