チートなんて簡単にあげないんだから~結局チートな突貫令嬢~

まきノ助

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第3章 魔族王国の迷子令嬢

88 刺客対策準備中

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 私達は暴漢を冒険者ギルドに引き渡して被害届を書きました。
 事の成りいきを詳しく書いて、両替商の指図である事を暴漢が認めた事も明記しました。


 ギルド長が事情聴取をして、被害届を確認します。

「むっ、両替商かぁ……尻尾をつかむのは難しいぞ。今までも似たような事があったんだが、いずれも罪にならず、未だにのさばってやがるんだ」

「そうなんですか……」


「裁判しても証拠不十分で無罪に成ったり、被害者が居なくなって裁判が行われなかったりしたんだ。暴漢たちもいつの間にか釈放されてたなぁ……」

「よし、思う壺だわ」
 ミレーヌが小声で呟きました。

「何だって? 何て言ったんだ?」

「いえ、独り言です。一応被害届は出しましたので、あとはお任せいたしますね」

「了解、所定の手続きをちゃんとやっとくから。期待しないで待っててくれ」

「「は~い」」

 マリエルとミレーヌは被害届を書き、事情聴取を終えたので拠点に戻りました。


 私達6人は、手分けして拠点の中に罠を仕掛けます。
 味方が罠に掛からない様に一定の規則を設けました。
 通路や廊下の真ん中を堂々と歩けば罠に掛からないという物です。ドアなどの前にも罠はありません。怪しい行動を取る者が罠に掛かる様にしたのです。

「刺客は堂々と真ん中を闊歩して歩かないだろうから。外は通路から外れた所に、家の中は廊下の端に罠を仕掛けようぜ」

「「「おぅ」」」


 私は目印の為にインベントリから取り出したハーブを庭の罠の上に刺していきました。ハーブはしおれずに生きています。

 暗くなってきたので皆で外に食事に行く事にしました。噂を流す為でもあるのです。


「おっ、『タイガーケイブ』の面々は、珍しくレストランで夕食かい?」

「おぅよ。明日から男のメンバーだけが町を離れる事になったので、ちょっと豪華な食事をするんだ」

「へぇぇ、男だけ出掛けるのかい?」

「あぁ、男限定の依頼を頼まれちまったんだ」

「ふ~ん」


「女2人は、このお嬢ちゃんと拠点で大人しく留守番さ」

「女だけで心配ないのか?」

「なぁに、2・3日で帰って来るし、女って言ってもA級冒険者だから大丈夫さ」

「あら、こんな可憐な女子を置いてくなんて、イイ男が放って置かないわよ!」

「はぁっはっはっはぁぁ。違ぇねえなぁ! 美人さん達を取られちまわない様に、早く帰って来るこったぁ!」

「「「あ~はっはっは~」」」


 『タイガーケイブ』のメンバーはエールを飲みながら他のテーブルの冒険者達と大きな声で話し続けました。
 レストランには沢山のお客がいるので、きっと刺客にも噂が届くでしょう。


 しばらく席を外していたリーダーのジルベルトが帰ってきて、ミレーヌとマリエルに耳打ちします。

「1番仲の良い、ライバルでもある『ベアーファング』に助っ人を依頼した。俺達と同じA級冒険者パーティーだ」

「分かったわ、ありがとう。罠の事は話してくれたの?」

「あぁ、堂々と真ん中を通れば罠に掛からないと教えといたぞ」


「通信魔導具も渡してくれたの?」

「勿論だ。俺達と一緒に隣の家に待機して貰う事になったから、賊が忍び込んだら連絡してくれ」

「分かったわ。マリエルちゃんも大丈夫ね?」

「はい」

 たっぷりと飲み食いして会話を楽しんでから『タイガーケイブ』のメンバーは拠点に引き上げました。




 翌朝1番に、『タイガーケイブ』の男3人は馬車で町の外へ出かけました。

 町から見えない所で馬車を降りて民家に預かってもらい、商人に変装して拠点の隣の家に戻ります。
 先に隣の家に潜んでいた『ベアーファング』の冒険者5人と合流しました。
 後は刺客が襲ってくるのを待つだけです。


 私は土属性魔法が得意なので、空いてる時間に庭に落とし穴を作ります。

「マリエルちゃん楽しそうね?」

「はい、罠を作るのも楽しいですけど、賊が罠にハマルのを想像するのも楽しいですね」

「まぁ、意外とサディスティックなのね」

「でも、怪我をしない様に無力化するのですから、優しいと思いますよ」

「そうねぇ。悪人は殺してもいいと思うけど……」

「あら、リーゼさんの方がサディスティックじゃないですか」

「そうね、うふふふふ」




 深夜12時を過ぎました。
 私達は交代で仮眠を取っています。

「マリエルちゃん交代よ。起きて頂戴」

「は~い」


 私は電気を消してる部屋の窓から外を見ます。
 ところどころに緑色の丸い光がポツンポツンと見えていました。
 私は女神エイルの親友に成った事で、薬草採取の特殊能力があるのでした。
 女神エイルは医療の女神であり、薬草学の女神でもあったのです。
 エイルちゃんの能力が私にも加護として備わっていたのでした。

「あの緑色の丸いのは……、あっ『青紫蘇』あおじそって表示されたわ。きっと私が庭に刺したハーブなのね」


 他にもいくつか、緑に光る丸が見えます。

「向こうにあるのは……『ペパーミント』だわ」


 その緑の光が急に見えなくなりました。

「あれ? 野良猫に食べられちゃったかしら」


 暗闇に目が慣れてきて、何かが動くのが見えます。

 数人が2メートルの石壁を乗り越えて庭に降り立ちました。鉄製の正面ゲートは閉まったままです。
 たぶん、この窓から見えない所でも一斉に行動をしているのでしょう。


「ミレーヌさん、侵入者です」

「分かったわ、リーゼ起きて! 侵入者よ」

「う~ん、やっと来たのね」


 ミレーヌは通信魔導具でジルベルトに連絡します。

「来たわよ」

「了解、準備万端整ってるぞ」



「うわっ……」

 マリエルが2階の窓から見ていると、押し殺した短い叫びを残して人影が1つ消えました。


「うふふ、賊の1人が私の作った落とし穴に落ちたみたい。中には下水スライムが10匹入ってるの、きっと装備と服が溶けて裸になってしまうでしょうね」

「へぇぇ、面白い罠を作ったわね」


「他にも色々と面白いのがありますよ」

「そう、楽しんでるのね」

「はい」


『オラもワクワクすっぞぅ!』

 インベントリの中からアダモちゃんの声が、私だけに聞こえました。

「あ痛たたたっ……。アダモちゃん、頭痛にしないでっ!」

『は~い』
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