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第2話 ○○たくさんカフェ

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「うふふふ。安心して。
 私は人間よ」

 早速確定したよ。
 この人、私“は”人間って早速白状したよ。
 いや、どちらかと言うと犬の生首よりも、この人の方がよっぽど怖いんだけど。

 何でそんな前髪長いの?
 何でそんな猫背なの?
 何でそんなひたひた歩くの?
 何でそんな幽霊感丸出しの白無垢を着ているの?

「何でだよぉ!」

「?」

 疑問が浮かび過ぎて、思わず疑問が口から漏れてしまった。
 だってしょうがないじゃない、ワタシも怖いから。

 もう逃げられそうにないし、逃げたら一生追い掛けられそうな予感しかしないので、観念して中に入る。
 だって手が動くタイプの招き猫みたいな動きをしてて、めっちゃ不気味なんだもの。

 店の中は、うん、、、猫カフェっぽい感じだね。
 照明は暖色の落ち着いた印象で照明器具には、、、
 え?あれって神社のお祓い棒に付いてるワサワサした紙じゃないの?

「うふふふ。あれがないと灯りを壊そうとする子がいるのよ」

「心を読まないで貰えますか?怖いので」

 いや、灯りを壊そうとする子の存在も怖いけど。

 壁と天井は白系で清潔感があって、猫カフェに有りがちな円形のソファーが幾つかとテーブル席も少し。
 キャットタワーもあるし、猫が中に入りたがるでお馴染みのハウスも、、、ハウスも?

「あの、、、一つお聞きしても良いですか?」

「うふふふ。何かしら?」

「ハウスには一つにつき一つの生首が入ってるんですか?」

「大丈夫よ。大人しい子達だから」

 答えになってねぇ、、、。
 要するにハウスには生首のあやかしがマストで一つは入ってるって事だね。

 いや、普通に置物みたいな感じで収まっていれば良いんだけどさ、良くはないけど。
 それならまだマシかなって思うんだけど、横向きに転がった状態で『みゃぁう』とかって話掛けて来ると、ビクッてするよね。
 猫の生首だから、可愛いっちゃ可愛いんだけど。

「うふふふ。可愛いでしょう?」

「だから心を読まないで貰えます?怖いんで」

 これはもう、どうせ逃げられないんだから慣れるしかないんだろうな。
 どうしたって見ちゃうし。
 どちらかと言うと、見えちゃうし。

 店長さんはテーブル席に座って、ワタシに着席を促した。

「それじゃあ勤務形態について、一通り説明するわね」

 今のところ全てが常識外れだけれども、勤務形態なんかの説明は丁寧で、とてもホワイトな労働環境が期待出来る感じだった。
 トータルで考えると全然ブラックだけれど。

「休日については基本的に定休日と合わせて貰う事になるわ。
 ただ事前に知らせてくれれば定休日をずらして対応するわ。うふふふ」

 それにしても、くぐもってるなぁ。
 どうしてこんなにも、声が怪しくくぐもっていのだろうか。
 くぐもり過ぎてて、不気味さ100倍なんだけれど。

 あと笑い方も不気味だ。
 「うふふ」なら上品なお姉様感があるけれど、「うふふふ」だと何だか不気味な印象しか受けない。
 声のくぐもりも相まって。

「因みに店長とワタシ以外にスタッフさんはいないんですか?」

 1人が休むとわざわざ定休日をずらすぐらいだから、2人で営業するつもりなのかと思うけれど。

「いないわ。だって向いてる子が少ないんだもの。
 赤股さんは、声を聞いただけでピンと来たわ。
 うふふふふふふふふふ」

 こっわ!
 直接は言わないけど、こっわ!
 見えないけど、目の所がキラーンと光った気がしたわ!
 最早不気味を通り越して、恐怖しか感じないぐらいに、こっわ!

 ワタシは改めてやっちまった事を理解して30秒ほど半目になった。


 第2話 生首たくさんカフェ
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