人面犬ですけど何か?

眠ゐ犬

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第11話 温めておきましたけど何か?

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「たらいまー。とろすけー。おもらし」

 ド深夜に帰って来たご主人が騒がしいので目を覚ました。
 俺は繊細な性格でお馴染みのわんちゃんだからな。
 うるせぇやつがいると寝れないんだよ。

 それにしてもお漏らしって芸は初めて聞いたけど最近の飼い主ってのは、そんな前衛的な芸を仕込んでんのか?
 俺は高貴な血筋を疑われがちな品のあるわんちゃんだから、お漏らしは便所の中でしかしねぇけどな。
 爺犬になったらわからんが。

「ご主人。てめぇまた玄関で寝るのかよ」

 昨日もそうだったが玄関に仰向けでグースカ寝だしたので、デキる犬でお馴染みの俺はご主人の顔面に真っ白なハンケチーフを掛けてやった。

「そして翌朝、ご主人は何者かの手により黒いノートに名前を書かれて命を落とした。
 死因は腎臓麻痺だった。」

「ご主人様を勝手に殺すな馬鹿助!あはははは!」

 どっちかっつーと腎臓麻痺の方に注目しろよ。

「ビールじゃん。風呂上がりのビール容易しといてくれたの?気が利きますなぁ。
 あっれ?何かお客さんの小便みたいに温いんだけど。
 まいっか。ビールってさぁ温くても結局旨いよね。見た目も相まってお客さんの小便みたいになるけど」

 俺が抱き枕にしてたビールだからな。

「温めておきました」

「犯人はお前かよ!次からは冷えたビールを出すように!あはははは!」

 こいつ朝っぱらからどんだけ陽気なんだよ。
 それにしても昨日からの成長が1ミリも見えない魅力の無さだな。
 エロスのマの字もありゃしねぇ。

「朝飯作るけど食う?」

「食う」

 今日の朝食メニューはパンとナンとチャパティだ。
 おかず、どれ?

「そう言えばご主人って何歳なんだ?」

「31。女に年齢聞くとか失礼じゃない?ムッチムチの28歳だけどさ」

「3歳サバ読んだろ」

「何で知ってんの!?あんたエスパー!?それとも伊藤!?」

「どちらか選べと言われれば伊藤」

「伊藤かぁ。伊藤の方かぁ」

 何故そんな他人の屁を嗅いだ時の様な苦い顔をしているのか。
 ご主人は俗に言う伊藤アレルギーの持ち主なのかもしれないな。

「屁、こいたでしょ?」

「温めておきました」

「温めておくなよ!出すなら冷風にしなさいよ!」

 冷風の屁って死に掛けて体温下がらなきゃ出せないだろ。
 どうやらご主人は俺の屁にあまり良い印象を抱いていない様なので、これからはベランダに出て屁をこく事にしようと思ふ。
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