Genius≒Pervert~最強バンド、伝説への序章

伊瀬カイト

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VOLCANYOS ①

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「お兄ちゃんさ、ギターは頑張ってると思うけど上手くはないでしょ?」

「うぐっ!」

 妹に正論を言われて稔琉は心的ダメージを受けた。

「それに他のメンバーはどうするの?
 仮性神様はソロでもギターの弾き語りで頑張ってるのに、メンバー探しとかでもたもたして、ライブの回数が減ったら私、お兄ちゃんを一生怨むから」

 そう言った里菜からは恨むではなく、明らかに怨念の方で言っているのが感じられた。
 弾き語りをしているのは初耳だったが、引き籠りの里菜が時折外出しているのはその為かと察した稔琉。
 それにしてはやたらと早く帰宅することが多いので、どんな状況なのか謎は深まるばかりだが。

「身内だから応援してあげたいけどさ、そもそもお兄ちゃんみたいな常識人が仮性神様と上手くやっていけると思う?」

「ぐはっ…」

 里菜の言葉に吐血しかける稔琉。いや、心の中では吐血している。
 ミュージシャンを志す者にとって常識人と言う称号は、何よりもきついハードパンチである。
 完全にダウンしかかった稔琉だったが、どうにか強い気持ちを持って膝から崩れるのを我慢した。

「上手くいくかは分からんよ。けどよ、人生一度くらいはあんなヤバい奴とバンドで演ってみたいと思うじゃんよ。
 だからどうしたらあいつから色よい返事が貰えるか一緒に考えてくれ!頼むよ!」

 そう言って手を合わせて懇願する稔琉に、里菜は小さく溜息を吐いた。

「私も仮性神様が新しいバンドを組んでくれたら嬉しいけどさ…。
 どうしても知りたいなら私みたいな一ファンじゃなくって、もっと仮性神様のことを知ってる人に聞いてみれば良いんじゃない?」

 それは確かにその通りだろうが、稔琉には伊織の交友関係に伝手がない。
 伊織のクラスの女子にでも聞けば、何かしら知らない情報を得ることは出来るだろうが、それが伊織の勧誘に使えるかと言えば、そこまででもないだろう。
 だからそれは難しいと言おうとした時、里菜は言葉を続けた。

「ちょうど今日、日本オナニー最前線のお三方が組んだ新しいバンドのライブがあるよ。お兄ちゃんも一緒に行く?」

「え?ああ。それなら着いて行こうかな」

 話は決まり、夕方にROCK LOCKという決して大きくはないライブハウスを訪れた稔琉。
 ステージがある地下へ繋がる階段の前に黒板の立て看板が置かれていて、チョークで書かれた出演バンドの一番上にVOLCANYOSという名前が書いてある。
 里菜曰く、このバンドが日本オナニー最前線の伊織を除く3人が組んだスリーピースバンドなのだそうだ。

 地下に下りて入口で里菜が名前を告げ、お金とチケット2枚を引き換える。
 今回のライブは学生の新人バンド限定で、チケット500円+ドリンクチャージ500円の良心的な価格設定だった。

「お金は後で返してね」

「ああ、わかってるよ」

 流石に中学生の妹からライブとドリンク代を奢って貰う訳にはいかないと稔琉は返事をした。
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