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第54話 花見酒
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「桜の木だな」
『うむ、桜だ』
穏やかな日差しと、少しずつ春らしい暖かさを感じられるようになった、四月中旬。
昨日の深酒から目を覚まして引き戸を開けたら、外に桜の木が立っていた。
少し違和感を感じないか?
生えていた、ではなくて立っていた、だ。
そう、桜の木が二本の足で立っていた。
まあ、うん。
どう考えてもあやかしだな。
立派な桜の木の太い二本の根っこが、人の足みたいな形になっているし、あれで誰かが盗んで来た桜だとか言われても困ってしまう。
あれはどう考えても、自分の足で歩いてここまで来たのだろう。
「あいつって意志の疎通取れると思うか?」
『知らん。知りたければ話掛けてみたらどうだ?』
それもそうか。
見た感じはソメイヨシノらしき綺麗な桜の木なんだが、何にしても庭の真ん中にズドンといるのは少々インパクトが強いと言うか、邪魔になる。
翠達、三人娘が桜を遠巻きに見ているので、少し怖がっているのかもしれないからな。
「おう。お前ってその足で歩いて来たのか?」
雪駄を履いて庭に下り、桜に近付いて話掛けてみる。
言葉が伝わったとして返事のしようが無さそうなものだが、桜は人間が腰を曲げるみたいにして、幹の下から三分の一ぐらいの所を曲げてくの字になった。
幾らか花弁が舞って地面に落ちる。
何こいつ、結構面白い奴だな。
その光景を見た三人娘は、興味深そうに近付いて来ると、そのまま桜に抱き着いた。
うんしょよいしょと木登りをして、それぞれ枝に腰掛ける。
桜はクネクネ動く向日葵のおもちゃみたいに、愉快に幹をくねらせて踊っている。
早速仲良くなったみたいだな。
「悪いんだが、ここだと邪魔になるから池の傍まで移動してくれるか?」
俺が声を掛けると、桜はノッシノッシと歩き始めて、池の傍で地面に足を埋めた。
よく観察してみると、樹皮の模様が顔っぽくなっていて、目と口がニッコリと笑っているように見える。
翠が枝を掴んでぶら下がると、黄翠と深翠もぶら下がって遊ぶ。
もしも、この光景を絵画にしたならば、題名は“桜と幼女”だろうか。
見たまま過ぎやしないかい。
屋敷から五人姉妹も出て来て、桜の下に集まる。
河童達も湖面の凍った池の上に集まって、腰を下ろした。
あやかしが集まって気分が高揚したのか、幹を揺すって踊り出す桜。
体を振られて楽しそうな三人娘。
『おい、桜と言えばあれだろう』
「まあそうだよな。あれしかないよな」
俺と化け狐は、何も言わずとも意見が一致して、屋敷へと戻り。
日本酒の入った一升瓶と、升と塩を持って皆の所に戻った。
桜と言ったら花見酒だろう。
升の角に塩を盛って、並々と酒を注いだら、塩をつまみに酒を飲む。
ドッカリと地べたに座って、綺麗な桜を見上げながら飲む酒の味は格別だ。
「お前らも飲みたければ自分達でコップを持って来な」
河童達が物欲しそうにしていたので言ってやると、ぞろぞろ屋敷の中へ入っていった。
あいつらも結構な酒好きだからな。
花見なんてイベントは大好物に違いない。
桜の花弁が舞って、一片酒に浮かぶのも風情があってとても良い。
「あやかしの花弁って健康面とか大丈夫か?」
花弁の入った酒は河童に譲ってやった。
翌日腹を壊したそうだ。
『うむ、桜だ』
穏やかな日差しと、少しずつ春らしい暖かさを感じられるようになった、四月中旬。
昨日の深酒から目を覚まして引き戸を開けたら、外に桜の木が立っていた。
少し違和感を感じないか?
生えていた、ではなくて立っていた、だ。
そう、桜の木が二本の足で立っていた。
まあ、うん。
どう考えてもあやかしだな。
立派な桜の木の太い二本の根っこが、人の足みたいな形になっているし、あれで誰かが盗んで来た桜だとか言われても困ってしまう。
あれはどう考えても、自分の足で歩いてここまで来たのだろう。
「あいつって意志の疎通取れると思うか?」
『知らん。知りたければ話掛けてみたらどうだ?』
それもそうか。
見た感じはソメイヨシノらしき綺麗な桜の木なんだが、何にしても庭の真ん中にズドンといるのは少々インパクトが強いと言うか、邪魔になる。
翠達、三人娘が桜を遠巻きに見ているので、少し怖がっているのかもしれないからな。
「おう。お前ってその足で歩いて来たのか?」
雪駄を履いて庭に下り、桜に近付いて話掛けてみる。
言葉が伝わったとして返事のしようが無さそうなものだが、桜は人間が腰を曲げるみたいにして、幹の下から三分の一ぐらいの所を曲げてくの字になった。
幾らか花弁が舞って地面に落ちる。
何こいつ、結構面白い奴だな。
その光景を見た三人娘は、興味深そうに近付いて来ると、そのまま桜に抱き着いた。
うんしょよいしょと木登りをして、それぞれ枝に腰掛ける。
桜はクネクネ動く向日葵のおもちゃみたいに、愉快に幹をくねらせて踊っている。
早速仲良くなったみたいだな。
「悪いんだが、ここだと邪魔になるから池の傍まで移動してくれるか?」
俺が声を掛けると、桜はノッシノッシと歩き始めて、池の傍で地面に足を埋めた。
よく観察してみると、樹皮の模様が顔っぽくなっていて、目と口がニッコリと笑っているように見える。
翠が枝を掴んでぶら下がると、黄翠と深翠もぶら下がって遊ぶ。
もしも、この光景を絵画にしたならば、題名は“桜と幼女”だろうか。
見たまま過ぎやしないかい。
屋敷から五人姉妹も出て来て、桜の下に集まる。
河童達も湖面の凍った池の上に集まって、腰を下ろした。
あやかしが集まって気分が高揚したのか、幹を揺すって踊り出す桜。
体を振られて楽しそうな三人娘。
『おい、桜と言えばあれだろう』
「まあそうだよな。あれしかないよな」
俺と化け狐は、何も言わずとも意見が一致して、屋敷へと戻り。
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桜と言ったら花見酒だろう。
升の角に塩を盛って、並々と酒を注いだら、塩をつまみに酒を飲む。
ドッカリと地べたに座って、綺麗な桜を見上げながら飲む酒の味は格別だ。
「お前らも飲みたければ自分達でコップを持って来な」
河童達が物欲しそうにしていたので言ってやると、ぞろぞろ屋敷の中へ入っていった。
あいつらも結構な酒好きだからな。
花見なんてイベントは大好物に違いない。
桜の花弁が舞って、一片酒に浮かぶのも風情があってとても良い。
「あやかしの花弁って健康面とか大丈夫か?」
花弁の入った酒は河童に譲ってやった。
翌日腹を壊したそうだ。
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