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1日目 仁義なき合戦
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「よし、こんなもんかな。」
顔をあげると、いつの間にか日が傾いていたようでオレンジ色の光がまぶしいです。
今回は少し時間がかかってしまいました。この子もだいぶオンボロですからね、仕方がありません。
明るいうちに終わらせるつもりでしたが、今日はここでテントを張ることになりそうです。
「おーい、チカー。今日はここに泊まるからテントはろうぜー。」
そう同行人に声をかけながら腰を上げます。自分でも気が付かないうちに固まってしまっていたようで、腰を伸ばすと痛気持ちいい感覚がします。
身体を前後左右に動かして解しながら、ふと気が付きました。
「チカー?テントー。」
いつもは邪魔なくらいうるさい奴の声が、今日はちっとも聞こえてきません。
修理に手間取っているうちに、飽きてどこかへ行ってしまったのでしょうか。
何があるかわからないから、あまり遠くへ行くなと言い含めておいたはずだったのですが。
「おーい、チカー。テントはってメシにしようぜー。」
少し声を張りながら同行人を探します。いつものことながら自由な奴です。
事前に辺りを調べているとはいえ、このガラクタの山です。
何かが潜んでいたとしてもおかしくはありません。
なかなか同行人の姿が見えないことに、さすがにおかしいと焦り始めたその時でした。
「はーちゃん!」
同行人の聞きなれた声が聞こえ、そちらに顔を向けた瞬間に、視界が白一色に塗りつぶされました。
加えて鈍い顔の痛み。遅れて刺すような冷たさ。
「いえーい!ワンヒット!チカのリード!」
「チカ!おまえなぁ・・・んぶっ」
「ツーヒット!チカ選手つよいつよい!」
雪。あたり一面の白。ガラクタの山に降り積もる雪は、それはもう冷たくて。
この生意気でうるさい同行人は、私がオンボロ車と格闘している間、あまりにも退屈だったようで、作業が終わったとみるや否や身を隠して虎視眈々とタイミングを計っていたようでした。
なにかに襲われたか、人さらいでも出たのかと、ひとが本気で心配していたというのに。
「チカ、覚悟はできてるんだろうな。」
思っていたよりも低めの声が出てしまいました。とはいえ、今はこれくらいがちょうどいいでしょう。
「や、やっとお目覚めかねはーちゃん!さあ試合は始まったばかりだよ!」
私の声の低さに少し驚いたのか、同行人の声は若干上ずっていましたが、どうやら引く気はないようです。
固まっていた体も、ちょうどほぐれてきていたところです。それに、こんなにコケにされて黙ってはいられません。とことんやってやるとしましょう。
「おらくらえ!」
「やるぞー!よいしょー!」
そうして、テントを張るという目的も忘れたまま、私たちは仁義なき雪合戦へと身を投じたのでした。
合戦は日が落ちるまで続き、終わったころにはふたりともへとへとで。
たまにはこうやって遊ぶのもいいかもな、なんて言いながら笑いあいました。
その後はもちろん、二人とも体の芯まで冷え切ってしまい、ガタガタと体を震わせながら寄り添いあって夜を過ごしたのでした。
顔をあげると、いつの間にか日が傾いていたようでオレンジ色の光がまぶしいです。
今回は少し時間がかかってしまいました。この子もだいぶオンボロですからね、仕方がありません。
明るいうちに終わらせるつもりでしたが、今日はここでテントを張ることになりそうです。
「おーい、チカー。今日はここに泊まるからテントはろうぜー。」
そう同行人に声をかけながら腰を上げます。自分でも気が付かないうちに固まってしまっていたようで、腰を伸ばすと痛気持ちいい感覚がします。
身体を前後左右に動かして解しながら、ふと気が付きました。
「チカー?テントー。」
いつもは邪魔なくらいうるさい奴の声が、今日はちっとも聞こえてきません。
修理に手間取っているうちに、飽きてどこかへ行ってしまったのでしょうか。
何があるかわからないから、あまり遠くへ行くなと言い含めておいたはずだったのですが。
「おーい、チカー。テントはってメシにしようぜー。」
少し声を張りながら同行人を探します。いつものことながら自由な奴です。
事前に辺りを調べているとはいえ、このガラクタの山です。
何かが潜んでいたとしてもおかしくはありません。
なかなか同行人の姿が見えないことに、さすがにおかしいと焦り始めたその時でした。
「はーちゃん!」
同行人の聞きなれた声が聞こえ、そちらに顔を向けた瞬間に、視界が白一色に塗りつぶされました。
加えて鈍い顔の痛み。遅れて刺すような冷たさ。
「いえーい!ワンヒット!チカのリード!」
「チカ!おまえなぁ・・・んぶっ」
「ツーヒット!チカ選手つよいつよい!」
雪。あたり一面の白。ガラクタの山に降り積もる雪は、それはもう冷たくて。
この生意気でうるさい同行人は、私がオンボロ車と格闘している間、あまりにも退屈だったようで、作業が終わったとみるや否や身を隠して虎視眈々とタイミングを計っていたようでした。
なにかに襲われたか、人さらいでも出たのかと、ひとが本気で心配していたというのに。
「チカ、覚悟はできてるんだろうな。」
思っていたよりも低めの声が出てしまいました。とはいえ、今はこれくらいがちょうどいいでしょう。
「や、やっとお目覚めかねはーちゃん!さあ試合は始まったばかりだよ!」
私の声の低さに少し驚いたのか、同行人の声は若干上ずっていましたが、どうやら引く気はないようです。
固まっていた体も、ちょうどほぐれてきていたところです。それに、こんなにコケにされて黙ってはいられません。とことんやってやるとしましょう。
「おらくらえ!」
「やるぞー!よいしょー!」
そうして、テントを張るという目的も忘れたまま、私たちは仁義なき雪合戦へと身を投じたのでした。
合戦は日が落ちるまで続き、終わったころにはふたりともへとへとで。
たまにはこうやって遊ぶのもいいかもな、なんて言いながら笑いあいました。
その後はもちろん、二人とも体の芯まで冷え切ってしまい、ガタガタと体を震わせながら寄り添いあって夜を過ごしたのでした。
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