5 / 5
5日目 ふたつにひとつ
しおりを挟む「悩ましいな・・・。」
私は今、重大な選択を迫られています。
右と左、どちらを選ぶべきか。人生最大の選択と言っても過言ではないでしょう。
「過言だよはーちゃん。」
おや、声に出ていたようですね。
でもそれも仕方ないでしょう。だって、どちらもこんなに魅力的なのですから。
「あー、ダメだ!選べない!」
「大げさだなー。こういうのは直感だよはーちゃん。」
そうは言っても、選べないものは選べないのです。
だってこんな・・・こんな・・・
「『世界のオモシロイ落ち葉100選』と『大解明!イチバン硬い鱗!』、どっちも読みたいに決まってる!ねえチカ!どっちがいいかな!」
「うーん、どっちでもいいんじゃない?」
コイツめ・・・。私が本気で悩んでいるというのに、全く興味が無いようです。
「そういうチカはもう決まったのか?」
「もっちろん!前呼んだヤツの続きがあったから、今回はコレにするよ!」
そう言ってチカが掲げた本は、たしかに見覚えがあるタイトルでした。
「それ続きあったんだ。確かに面白かったよな。」
「そうでしょそうでしょ!うーん、はやく読みたいなー!」
だから早く決めて、とでも言いたげな視線が私に突き刺さります。
確かに、このままグズグズしているわけにはいきません。
「もうどっちも持ってっちゃえば?」
「・・・それはダメ。」
日ごろから、なるべく無駄な物は積むなと彼女に言いつけています。
そんな私が、自分だけ甘えたことをするわけにはいきません。
「んー、それじゃあさ、今日はここに泊まっちゃおうよ!」
「へ?」
「それで今日どっちか読んで、読まなかった方を持っていけばいいじゃん!」
「え、でも。」
「私もひとつ多く読めるってことでしょ?ラッキー!」
「・・・ありがと。」
そんなわけで、今日はここに泊まることになりました。
なんだか甘やかされてしまって、嬉しいやら悔しいやら。
何かお礼でもしないと気が収まりません。
ここは例のアレを渡す好機と見ました。さあ受け取るがいい。
「チカ。」
「んー。」
生返事。
私が声を掛けても、本に夢中になっている彼女の視線は下を向いたまま。
「チカ。」
「なーにー。」
また生返事。少しくらいこっちを向きなさい。
こうなれば。
「あげる。」
彼女と本の間にソレを差し出しました。
これなら嫌でも視界に入るでしょう。
「うわあなになに!なにも見えないってば!」
おっと、さすがに近すぎたみたいですね。わざとではありませんよ。
顔を上げた彼女に、改めて差し出します。
「これあげる。」
「わ、なにこれカワイイ!」
それは、黄色い葉っぱが挟まった透明な薄い板。
以前イチョウ並木に立ち寄った時に拾ってきたイチョウの葉を乾燥させて、これまた以前拾っていたプラスチックケースに挟んでみました。
植物を乾燥させて保存する方法を読んだことがあったので試してみたのですが、上手くいってよかったです。
渡すタイミングを伺っていましたが、ちょうど良い機会でしたね。
こう見えて彼女は物語が好きなので、栞代わりになるでしょう。
「これって、この前のイチョウだよね。」
「そう。試しに作ってみた。」
「わー!ありがとうはーちゃん!」
照れ臭くて、いつもよりも雑に渡してしまいましたが、喜んでくれたようでなによりです。
「へへ。ほらはーちゃん。」
嬉しそうに笑いながら、チカが自分の隣をポンポンと叩きます。
「ん。」
私が隣に腰を下ろすと、彼女は満足そうな表情を見せて、再び物語の世界に戻っていきました。
さて、私もめくるめく不思議の世界に飛び立つとしましょう。
今日はちょっとだけ夜更かしすることになりそうです。
さて、ここでひとつ重大な問題が。
「チカ!大変だ!どっちを読もう!」
「もー!どっちでもいいよー!」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
続・冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
の続編です。
アンドリューもそこそこ頑張るけど、続編で苦労するのはその息子かな?
辺境から結局建国することになったので、事務処理ハンパねぇー‼ってのを息子に押しつける俺です。楽隠居を決め込むつもりだったのになぁ。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる