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第21話

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「遅くないかジェリー」

 検査自体は直ぐ終わる。カオルが戻って来ない。

「遅い。遅過ぎるわ。まさか元の世界に」

「ねぇな。カオル自身ではどうにもならねぇはずだ」

 そもそも異なる世界から異なる世界への転移。そんな高等技術。誰にでも出来るものではない。

「入るか」

 ジキルが扉を開ける。受付の神官がにこやかな笑顔を浮かべている。

「おい、俺の前に入ったやつはどうした」

「どなたも来ていませんが、どうなさったのですか?」

「なんだと。オッドアイの美人の男がいただろ」

「いえ。そのような方は。いつまでも騒ぐようならお城の警備兵に連絡しますよ」

 舌打ちをして神殿を出るジキル。床に小さな血痕を見つけた。騒ぎを起こせば、どうなるかジキルは分かっている。潔く神殿を出た。

「団長。どうだったのよ」

「何かがあったのは、確かだ。行くぞ。
 ここで騒いでいてもしょうがない」

「行くって何処にいるのよ」

「スノー。情報屋だ」

 ジキルが向かったのは騎士団寮の近く。ぼろぼろの演習場のロッカー室。下に綺麗な新しい階段。降りて行くと、執務机とその椅子に座り机に肘をついたいじわるそうな笑いを浮かべる銀色の猫耳を持ち、オッドアイの獣人。

「スノー。邪魔する」

「毎回毎回。邪魔だと思うなら来ないでよ。ジキル。煮干しは。この前もツケにしたんだけど。
 またツケにするつもりかにゃ。それはないでしょうにゃ。今回はお引き取りください」

「煮干しより美味い飯を作ってくれるやつがいる。神殿に連れ去られた。手伝え」

「煮干しよりも美味い飯。興味あるにゃ。
 何処の神殿にゃ。まさかピオス神殿じゃないよにゃあ」

「そうよ。何かあるのかしら」

「美人さんマジで言ってる。マジか。
 難攻不落の迷宮神殿だよ」

 スノーは執務机の後ろにある本棚から赤い背表紙の本を取り出した。
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