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第77話
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桜音ちゃんは日曜日に予定があると言って、珍しく栗栖家には来なかった。
こないだ……のはセーフ!?セーフだよな?手を出さないって約束したけど……セーフだと思おう。うん……そう思おう!
ハサミでキュウリを切っていく。かごにキレイに並べつつ、そんなことを思った。蝉の声がやけにミーンやらジージーやらうるさい。
いや……あまりにも……なんというか、来年、一緒にいれるのかな?と思ったら寂しくなったと言うか……うん……いや、違うか。単に桜音ちゃんが可愛くて、気づいたら抱き寄せてしまっていた。
ハァ……何やってんだろ。もうちょっと余裕持ちたい……と、ため息が出た。
家に帰ってシャワーを浴びて、昼ご飯を食べる。キュウリの浅漬けをパリパリ食べる。畑仕事後の体にちょうどいい塩分と水分をくれて美味しい。
ムーが自分にもなにかくれーと僕が昼ご飯を食べてる足元に絡みつく。
「おまえ……もう食べただろ!?」
帰ってきて一番にムーの食事を出したのに、これだー。しかしキラキラの目に負けて、さつまいものおやつを出してくる。
今日はもう野菜を出荷したから、とりあえず昼寝して、体力回復させよう。ゴロンと横になる。ムーがピトッと茶色の毛並みをくっつけてくる。あ、暑い……。
「ムー……夏は離れたほうが良くないか?」
ん?とムーは一度顔をあげたが、また僕の足を枕にして、寝始める。
……クーラーの温度、一度下げるか。
ヒンヤリとした空気が流れる。夏の疲れでスヤスヤと涼しくて心地よい部屋で、熟睡してしまった。……気づけば、カナカナと鳴く蝉の声と夕方の赤い空が部屋から見えた。
「寝すぎた……夕飯作るかなぁ……」
なんかもったいない時間の使いかたしちゃったなと思った時だった。僕の電話が鳴る。
桜音ちゃん?……なんだ?胸騒ぎがした。
『ごめんなさい。千陽さん……なんか……今、家に帰って……来たんですけど……』
声、震えてる!?
「うん?どうしたの!?」
嫌な予感がしたから、すでに僕は電話の声を聞きながら、階段を滑るように降りていく。玄関でスニーカーを手を使わずに履く。
『誰か後ろからやっぱり……いるような気がして……そしたら……今、家を覗いてる人が……』
今にも泣き出しそうな声。
バンッと飛び出す。ムーが僕を追いかけてきたから、よし!番犬!来い!と一緒に連れて行く。家の前に軽トラ置いといてよかった!
桜音ちゃんの家の前に車を停める。その瞬間、ムーと僕は車から飛び出した。桜音ちゃんの家に入ろうとした瞬間だった。庭の方に人影!
「誰だ!」
僕がそう言うとムーもワン!と吠える。逃げようとした人影を僕は追いかける。逃がすかよ!
相手は焦っているらしく、庭木に遮られてしまう。僕は助走をつけて、相手の背中めがけてガッと飛び蹴りをした。前のめりに倒れ込む相手の片腕を掴んで持ち、後ろに回して、首を抑えた。上からのしかかる。
ムーがワンワンと吠えて、自分もその気になって僕が取り押さえた相手を踏んでる。ムー、番犬は最初に飛びかかるもんだぞ?
「おい、抵抗するなよ。下手に動けば腕の骨、折るからな」
低い声で僕が言うと、相手は首をゆっくりこちらに回す。……高校生?よく見たら制服を着てる?
「怪しいものじゃ……」
「十分怪しいだろ?人の家、忍び込んで、何をしてる?」
ムーの吠える声で僕が来たことに気づいたのか、玄関のドアをそーっと開け、怯えた目で、怖そうに、こちらを伺う桜音ちゃんがいた。
「千陽さん、大丈夫ですか?……警察に電話……え?なんで?」
桜音ちゃんが不審者を見て、目を丸くした。
「松沢くん!?」
「知り合い?」
「同じクラスの人です」
ハハハと力なく笑って見せる僕の足の下の不審者は……桜音ちゃんの同級生だったらしい。
こないだ……のはセーフ!?セーフだよな?手を出さないって約束したけど……セーフだと思おう。うん……そう思おう!
ハサミでキュウリを切っていく。かごにキレイに並べつつ、そんなことを思った。蝉の声がやけにミーンやらジージーやらうるさい。
いや……あまりにも……なんというか、来年、一緒にいれるのかな?と思ったら寂しくなったと言うか……うん……いや、違うか。単に桜音ちゃんが可愛くて、気づいたら抱き寄せてしまっていた。
ハァ……何やってんだろ。もうちょっと余裕持ちたい……と、ため息が出た。
家に帰ってシャワーを浴びて、昼ご飯を食べる。キュウリの浅漬けをパリパリ食べる。畑仕事後の体にちょうどいい塩分と水分をくれて美味しい。
ムーが自分にもなにかくれーと僕が昼ご飯を食べてる足元に絡みつく。
「おまえ……もう食べただろ!?」
帰ってきて一番にムーの食事を出したのに、これだー。しかしキラキラの目に負けて、さつまいものおやつを出してくる。
今日はもう野菜を出荷したから、とりあえず昼寝して、体力回復させよう。ゴロンと横になる。ムーがピトッと茶色の毛並みをくっつけてくる。あ、暑い……。
「ムー……夏は離れたほうが良くないか?」
ん?とムーは一度顔をあげたが、また僕の足を枕にして、寝始める。
……クーラーの温度、一度下げるか。
ヒンヤリとした空気が流れる。夏の疲れでスヤスヤと涼しくて心地よい部屋で、熟睡してしまった。……気づけば、カナカナと鳴く蝉の声と夕方の赤い空が部屋から見えた。
「寝すぎた……夕飯作るかなぁ……」
なんかもったいない時間の使いかたしちゃったなと思った時だった。僕の電話が鳴る。
桜音ちゃん?……なんだ?胸騒ぎがした。
『ごめんなさい。千陽さん……なんか……今、家に帰って……来たんですけど……』
声、震えてる!?
「うん?どうしたの!?」
嫌な予感がしたから、すでに僕は電話の声を聞きながら、階段を滑るように降りていく。玄関でスニーカーを手を使わずに履く。
『誰か後ろからやっぱり……いるような気がして……そしたら……今、家を覗いてる人が……』
今にも泣き出しそうな声。
バンッと飛び出す。ムーが僕を追いかけてきたから、よし!番犬!来い!と一緒に連れて行く。家の前に軽トラ置いといてよかった!
桜音ちゃんの家の前に車を停める。その瞬間、ムーと僕は車から飛び出した。桜音ちゃんの家に入ろうとした瞬間だった。庭の方に人影!
「誰だ!」
僕がそう言うとムーもワン!と吠える。逃げようとした人影を僕は追いかける。逃がすかよ!
相手は焦っているらしく、庭木に遮られてしまう。僕は助走をつけて、相手の背中めがけてガッと飛び蹴りをした。前のめりに倒れ込む相手の片腕を掴んで持ち、後ろに回して、首を抑えた。上からのしかかる。
ムーがワンワンと吠えて、自分もその気になって僕が取り押さえた相手を踏んでる。ムー、番犬は最初に飛びかかるもんだぞ?
「おい、抵抗するなよ。下手に動けば腕の骨、折るからな」
低い声で僕が言うと、相手は首をゆっくりこちらに回す。……高校生?よく見たら制服を着てる?
「怪しいものじゃ……」
「十分怪しいだろ?人の家、忍び込んで、何をしてる?」
ムーの吠える声で僕が来たことに気づいたのか、玄関のドアをそーっと開け、怯えた目で、怖そうに、こちらを伺う桜音ちゃんがいた。
「千陽さん、大丈夫ですか?……警察に電話……え?なんで?」
桜音ちゃんが不審者を見て、目を丸くした。
「松沢くん!?」
「知り合い?」
「同じクラスの人です」
ハハハと力なく笑って見せる僕の足の下の不審者は……桜音ちゃんの同級生だったらしい。
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