転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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折り紙に思いをのせて

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 紙のシワを伸ばして、端と端を合わせて三角形を作り、正方形になるようにチョキチョキハサミで切る。

「なに、貧乏くさいことしてんだ?」

「貧乏くさいとか言わないでよっ!折り紙作ってるのよ。いろいろ貰い物をした時の包装紙をとっておいたのよ。いろんな柄の紙があって綺麗でしょう?」

「紙なんて買えば良いだろ??」

 これだから公爵家のお坊ちゃんはーっ!意外とこの世界じゃ紙は貴重で高価な物なのよ!
 あれっ?もうその考え方が貧乏性なのかしら……。
 まあ、彼は不自由なく過ごしてきたものね。フッと鼻で笑うとリヴィオがその反応なんだよ!?と言っている。無視して折鶴を折っていく。私の後ろから覗き込んで折り方を見ているリヴィオが言う。

「へぇ……器用なもんだな。裁縫苦手な割に……」

「なっ!?なんで知ってるのよ!?」

 ギクリとし、思わず手が止まった。

 ニヤリと笑って内緒だと言うリヴィオ。

 社交界では女性たちが集まって刺繍をする会がある。互いに考えた模様を見せ合うこともある。お誘いの招待状が来ていたが、これだけは行くまいと思っていた。バレてないはずなのに……なぜ知っているの!?

 ……ま、まぁいいわ。頬に一筋の汗をタラリとさせつつ、聞き流しておくことにした。

 私は完成した赤色の模様の入った包装紙の鶴を受付に飾った。なかなか綺麗に折れたし、風流じゃないのーと出来に自己満足する。

 父、母、兄、妹の4人家族で訪れたお客様は予定より少し遅れてきた。

「お兄ちゃんのせいよ!だって急にアイスクリーム食べたいって言い出したもん」

「なんだよ!おまえだって可愛いもの見たいからって街の雑貨屋でどんだけ時間使ったとおもってんだよーっ!」

 兄と妹が喧嘩しながらはいってきた。優しそうなお父さんは止めなさいと静かに言うが、子どもたちは聞いていない。

「すみませんねぇ。いつもこいつら喧嘩ばっかりしてるんですよ」
 
「いえいえ、賑やかでいいじゃないですかー」

 受け付けで宿泊の手続きをしていた父が謝る。

「ん?これなにー?」

 置いてあった折り紙の鶴を可愛らしい妹さんが言い合いを止めて気づいて手に取る。

「紙で折ったものです。良かったら教えましょうか?」

「やってみたいわ!」

 喫茶コーナーの机へ私は連れていき、兄と妹の二人に紙を渡す。

「ベルネーロさんのお子さん達はなんて名前なんです?」

 私が聞くと兄の方が返事をした。

「ボクはエドで妹がフィーだよ。」

「そうですか。では、エドとフィー。好きな色の紙を選んでくださいな」

 二人はいろんな色や柄の中から好きな紙を選ぶ。

「そう……こう三角に折ります……上手ですね!」

 初めてする子に鶴は難しい。……が、二人共一生懸命折っている。その様子を微笑ましげにお茶を飲みながら父母であるベルネーロさんが見つめている。
 幸せそのものを描いた温かみのある家族である。

 ……と、思っていたが、喧嘩ばかりというのは本当だったらしい。

「お兄ちゃんずるい!フィーが先に行くの!」

「ノロマなのが悪いんだろー」

 大浴場まで走っていく二人にお茶を運んでいたスタッフがやんわりとあぶないですよ~と声をかけるがお構まいなしで行ってしまう。
 
 アラアラとのんびりとした声でベルネーロ夫妻がゆっくりと追いかける。

 売店でもひと騒動起こす。

「サニーちゃんのぬいぐるみにするー!エドはそのダッサイカミナリどんにしなさいよー」

「はぁ!?なんでフィーに指図されないとだめなんだよ!」

 ……カミナリどん、さりげなく失礼なこと言われてるよ!ベシッとエドがフィーにカミナリどんを投げつけ、デンデンデデン♪と所在なさげに音楽が鳴るカミナリどん。おでこにあたったフィーは大声で泣き出す。

「うえええん!エドが玩具なーげーたー!」

「こら!エド、投げたらだめでしょ」

 母親に叱られてエドはムッとして口を閉ざす。

 夕食の時になって、大広間でベルネーロさんの家族が3人しかいないことに気づいた。エドがいない。

「あの……エドくん、どうしたんですか?」

 困った顔をしてベルネーロ夫妻が私を見た。

「叱ったら、拗ねてしまい、夕飯はいらないと部屋に閉じこもってます」

「お兄ちゃんなんて知らない!」

 プンプンな顔で怒ってるフィー。

「でもお腹空きますよね。私、少しお部屋の様子を見てきてもいいですか?」

 ベルネーロ夫妻がありがとうございますと言う。
 部屋を覗くと、隅っこにちょこんと三角座りをして顔を膝に埋めている男の子がいた。拗ねてる姿が可愛くてクスッと笑う。音に気づいて、顔をあげた。

「な、なんだよっ!」

「お腹空きませんか?お食事を食べる所へ、案内させてください」

 プイッとまだへそを曲げている彼は横を向く。

「パクっ!」

「うわっ!なにすんだ!?」

「これ、可愛いでしょう?パクパク人形です」

 指に嵌めて、折り紙で作った物でツンツンとつついてみる。

「ここに目を書くと……ほら!カエルになります」 

 プッ!と吹き出すエド。

「おもしろい!やってみていい?」

「良いですよ。指に嵌めてくださいね」

「ほんとに口が動いてるみたいだ!」

 私は作り方を教える。そして言った。

「これにはもう1つ遊び方があるんですよ」

 本来なら占いになるんだけど…。

「私、エドはお兄ちゃんとして、とても頑張ってると思いますよ」

 ニッコリと笑って言う私に目を丸くした。

「ほんとにそう思う?でも時々、妹にイライラしちゃってダメなこともしちゃうし、嫌なことも言っちゃうんだ。フィーって、ママも独り占めしちゃうしさ!」

「エドもママが大好きですから、そこは仕方ありません。気持ちを抑える必要もありません」

 でも……と私は付け加えた。そしてパクパク人形の紙に書き出す。

『ジャンケンする』『5秒数える』『深呼吸する』『話をゆっくりしてみる』『時間をおく』などを番号のふった後ろの裏に文字を書く。

「怒りたくなったら、たまにこれを使ってみてください」

「なんだこれー!?面白いね」

「そうでしょう!?私も日本……じゃなかった。昔、ある人に教えて貰ったんですよ!」

 私も怒りっぽかったんですよ言うとエドがほんとに!?と言う。ええと私は頷く。

 これは前世の母が私に教えてくれたものだった。幼い頃の私に手を焼いたことがあったのだろう。

「ふぅん。……使ってみるよ。ありがとう」

「じゃあ、行きましょうか?案内しますよ!スペシャルなお子様ランチなんですよ!」

「美味しい?」

 エドと私は手を繋ぐ。

「もちろんです!うちの旅館の料理は美味しいですよ。せっかく作ったのに食べてもらえないと困るところでした」

 こうして、ベルネーロ一一家は家族揃って、食事をすることができた。

「けっこうハマるな!」

 折り紙にハマったリヴィオが器用に折っている。……なんでもできちゃうな。この人。と実は手先が不器用な私は羨ましく見た。

 ……もしや刺繍もさせたらできるんじゃないの?邪な考えが浮かぶ。

「ねえねえ。リヴィオこれあげるわ」

「なんだ?……裁縫セット!?まさかオレに!?」

「私より才能ありそうだし!」

「貴族の娘なら練習しろよおおお!」

 シュッシュッと私は作った手裏剣をリヴィオに飛ばして、拒否権を発動させたのだった。



 

 
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