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ウィリアムとルイーズ
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なんとリヴィオの祖父母が『花葉亭』にやってきたのだ。
リヴィオの祖父であり前国王の弟ウィリアムはリヴィオが歳をとったらこうなるだろうと言うくらい容貌が似ていた。魔力が高いのか歳よりも若く見える。
ただ、リヴィオとはまったく性格が違う。正反対と言っていい。
やる気なさげに欠伸をしたり、興味なさげにボーッとしていたりする。
祖母、ルイーズは相変わらず、元気そうだ。
「客足が遠のいていると聞いて、泊まりにきてあげましたわよ!」
フワフワッと優雅に扇子で仰いでいる。ウィリアムが眠そうな顔で言葉を付け加える。
「わたしが行ってくると言ったら、君も一緒に行きたいと言ったんじゃなかったかい?」
「マリアが心配なんですわっ!マリアがあなたの影響を受けて働いているというから、様子を見に来たのですわ!少しお説教を……」
「えーと、マリアなら今日は『海鳴亭』の方へ行ってます」
逃げたわね……と苦い顔になるルイーズ。
「まったく、年頃なのに結婚もせずにフラフラと!ハリーとオリビアの教育はどうなってるのかしら!?」
「ルイーズ、わたしはもう温泉とやらで、のんびりしたいのだが?」
「あ、あら?ごめんなさい。じゃあ、そういたしますか」
助け舟なのか、それともただ行きたいだけなのか……?
リヴィオも仕事の用事が終わったらしく、旅館の方へやってきた。
「また来たのかよ。でもお祖父様も一緒なんてな……自分から行動することが珍しすぎる。オレが見たお祖父様は窓辺でボーッとしているか、本屋を読んでいるか、うたた寝をしているかの3択しかなかった!」
「それはすごいわね」
「3歳のオレが話しかけても、本を読んでいたな。無視とかじゃないんだ。聞こえてない」
ルイーズは私がしっかりとしなければ!となる理由もわかる気がした。
お風呂の後で読書スペースに立ち寄り、お茶を飲みながら、雑誌を広げているウィリアムに出会う。
「お風呂、いかがでした?ゆっくりできましたか?」
聞こえていないかと思っていたが、ウィリアムは顔をあげた。
「うん。……サウナがよかったね。気に入ったよ」
サウナ好きのリヴィオの顔が浮かぶ。血筋ねと思わず私の顔もウフフッとほころぶ。
「リヴィオは君のこと大事にしているか?ちゃんと伯爵としてやってるか?」
「はい。過保護じゃないかしら?とたまに思うくらい大事にしてくれてますし、伯爵としても立派にしてます」
「そうか。それならば、良かった」
そうウィリアムは答えるとまた雑誌に目を落とした。
……本気で心配して来てくれたのかな?あまり感情を表に出さないウィリアムの気持ちを読むのは難しいが、そう私は感じた。
「夕食をお持ちいたしました」
ナシュレの新鮮野菜を使った前菜。石のプレートの上でジュワジュワ焼かれるお肉、温かい茶碗蒸しに季節の野菜と魚の天ぷらなどを順番に出していく。
「美味しいね」
「えっ!?あなたがそんなことを仰るのは珍しいですわね」
ルイーズが驚く。
「うん……味付けが好みだった」
良かったですと私は微笑み、部屋の外に出るとリヴィオがいた。
「あら?どうしたの?お祖父様とお祖母様に声をかけてきたら?」
「うーん……祖父とは疎遠だったから何を話していいかわからねーしな」
そう言いつつ、気になっているから、ここまで来たんじゃないの?と私は微笑ましく思う。
ハイとリヴィオに手に持っていたお盆を渡した。
「デザートはリヴィオが持っていってくれる?私は別室のお客様に呼ばれてるのよ」
「えっ!?あ、ああ……?」
リヴィオは意表を突かれたようだったが、お盆を受け取ると部屋へ入っていった。
ウィリアムとルイーズはその後、なんと三日間も滞在して行ったのだった。
ルイーズもくつろげたようで、いつもキリキリとしている雰囲気が和らいでいる。
「のんびりとできたよ。サウナは我が家にも欲しいところだ……後、リヴィオのこと、いつもありがとう」
ポソっとウィリアムは私に向かって言った。リヴィオとルイーズは驚いたように視線を合わせた。
「まあ!ウィリアムが孫のことをそんなふうに言うなんて!初めて聞きましたわ」
「一応、考えているよ。さあ、帰ろう。また来ていいかな?」
「もちろんです!またお待ちしております」
私は深くお辞儀をした。
「本当に温泉旅館が気に入りましたのね。あなたにお茶と本以外に興味を示すものがあってよかったですわ」
ルイーズはウィリアムに皮肉げにそう言いながらも、とても嬉しい顔をし、上機嫌で帰って行った。
リヴィオは二人が帰ったあとに言った。
「お祖父様は王位継承から逃れるために心を閉ざし、何事にも興味を持たない人になったと言われている。だけど最近、変わってきた気がするんだ。あの時、お祖母様を迎えに来たときから……影響与えるよなぁ」
そう言って、私の顔をジッと見た。
「えっ?な、なに?」
「いいや。なんでもない」
なぜ、彼は人の顔を見て苦笑しているのだろうか?
気が強いルイーズだが、ウィリアムの周囲への無関心さに寂しさや不安を感じずにはいられなかったのではないだろうか?そのやるせない思いが外へ外へと向かっていったのだろう。
ルイーズは来た時とはまったく違う顔をして帰った。
「あの二人の時間は今、動き出したのかもしれないな」
馬車が見えなくなるまで見送ったリヴィオはそう言った。
リヴィオの祖父であり前国王の弟ウィリアムはリヴィオが歳をとったらこうなるだろうと言うくらい容貌が似ていた。魔力が高いのか歳よりも若く見える。
ただ、リヴィオとはまったく性格が違う。正反対と言っていい。
やる気なさげに欠伸をしたり、興味なさげにボーッとしていたりする。
祖母、ルイーズは相変わらず、元気そうだ。
「客足が遠のいていると聞いて、泊まりにきてあげましたわよ!」
フワフワッと優雅に扇子で仰いでいる。ウィリアムが眠そうな顔で言葉を付け加える。
「わたしが行ってくると言ったら、君も一緒に行きたいと言ったんじゃなかったかい?」
「マリアが心配なんですわっ!マリアがあなたの影響を受けて働いているというから、様子を見に来たのですわ!少しお説教を……」
「えーと、マリアなら今日は『海鳴亭』の方へ行ってます」
逃げたわね……と苦い顔になるルイーズ。
「まったく、年頃なのに結婚もせずにフラフラと!ハリーとオリビアの教育はどうなってるのかしら!?」
「ルイーズ、わたしはもう温泉とやらで、のんびりしたいのだが?」
「あ、あら?ごめんなさい。じゃあ、そういたしますか」
助け舟なのか、それともただ行きたいだけなのか……?
リヴィオも仕事の用事が終わったらしく、旅館の方へやってきた。
「また来たのかよ。でもお祖父様も一緒なんてな……自分から行動することが珍しすぎる。オレが見たお祖父様は窓辺でボーッとしているか、本屋を読んでいるか、うたた寝をしているかの3択しかなかった!」
「それはすごいわね」
「3歳のオレが話しかけても、本を読んでいたな。無視とかじゃないんだ。聞こえてない」
ルイーズは私がしっかりとしなければ!となる理由もわかる気がした。
お風呂の後で読書スペースに立ち寄り、お茶を飲みながら、雑誌を広げているウィリアムに出会う。
「お風呂、いかがでした?ゆっくりできましたか?」
聞こえていないかと思っていたが、ウィリアムは顔をあげた。
「うん。……サウナがよかったね。気に入ったよ」
サウナ好きのリヴィオの顔が浮かぶ。血筋ねと思わず私の顔もウフフッとほころぶ。
「リヴィオは君のこと大事にしているか?ちゃんと伯爵としてやってるか?」
「はい。過保護じゃないかしら?とたまに思うくらい大事にしてくれてますし、伯爵としても立派にしてます」
「そうか。それならば、良かった」
そうウィリアムは答えるとまた雑誌に目を落とした。
……本気で心配して来てくれたのかな?あまり感情を表に出さないウィリアムの気持ちを読むのは難しいが、そう私は感じた。
「夕食をお持ちいたしました」
ナシュレの新鮮野菜を使った前菜。石のプレートの上でジュワジュワ焼かれるお肉、温かい茶碗蒸しに季節の野菜と魚の天ぷらなどを順番に出していく。
「美味しいね」
「えっ!?あなたがそんなことを仰るのは珍しいですわね」
ルイーズが驚く。
「うん……味付けが好みだった」
良かったですと私は微笑み、部屋の外に出るとリヴィオがいた。
「あら?どうしたの?お祖父様とお祖母様に声をかけてきたら?」
「うーん……祖父とは疎遠だったから何を話していいかわからねーしな」
そう言いつつ、気になっているから、ここまで来たんじゃないの?と私は微笑ましく思う。
ハイとリヴィオに手に持っていたお盆を渡した。
「デザートはリヴィオが持っていってくれる?私は別室のお客様に呼ばれてるのよ」
「えっ!?あ、ああ……?」
リヴィオは意表を突かれたようだったが、お盆を受け取ると部屋へ入っていった。
ウィリアムとルイーズはその後、なんと三日間も滞在して行ったのだった。
ルイーズもくつろげたようで、いつもキリキリとしている雰囲気が和らいでいる。
「のんびりとできたよ。サウナは我が家にも欲しいところだ……後、リヴィオのこと、いつもありがとう」
ポソっとウィリアムは私に向かって言った。リヴィオとルイーズは驚いたように視線を合わせた。
「まあ!ウィリアムが孫のことをそんなふうに言うなんて!初めて聞きましたわ」
「一応、考えているよ。さあ、帰ろう。また来ていいかな?」
「もちろんです!またお待ちしております」
私は深くお辞儀をした。
「本当に温泉旅館が気に入りましたのね。あなたにお茶と本以外に興味を示すものがあってよかったですわ」
ルイーズはウィリアムに皮肉げにそう言いながらも、とても嬉しい顔をし、上機嫌で帰って行った。
リヴィオは二人が帰ったあとに言った。
「お祖父様は王位継承から逃れるために心を閉ざし、何事にも興味を持たない人になったと言われている。だけど最近、変わってきた気がするんだ。あの時、お祖母様を迎えに来たときから……影響与えるよなぁ」
そう言って、私の顔をジッと見た。
「えっ?な、なに?」
「いいや。なんでもない」
なぜ、彼は人の顔を見て苦笑しているのだろうか?
気が強いルイーズだが、ウィリアムの周囲への無関心さに寂しさや不安を感じずにはいられなかったのではないだろうか?そのやるせない思いが外へ外へと向かっていったのだろう。
ルイーズは来た時とはまったく違う顔をして帰った。
「あの二人の時間は今、動き出したのかもしれないな」
馬車が見えなくなるまで見送ったリヴィオはそう言った。
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