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荒野の地に立つ
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膝丈ほどに長く伸びた草がザアッと風の音と共に揺れる。
崩れた家々はその原型を留めず、壁が崩れ、朽ち果てている。所々倒れた木には深い爪痕。
「こんな街や村は無数にある」
静かに立っていた私を見て、隣にいたリヴィオがそう声をかける。
ここは三大陸の一つにあるフェンディ厶王国。神は白銀の狼。
「ずっと神が不在だった。もちろん今は神が帰ってきたから賑わってる街も増えている。行ってみるか?」
「今回はここだけで良いわ……これがこの国の現実だと受け止めたいもの」
寂しい光景にどんよりとした気持ちになるが、ここから立ち上がっている人々もいるというリヴィオの話に希望がもてる。
そしてここが父が幼い頃にいた国。逃げたかった国なのかと、ふと頭をよぎる。
「油断するでないぞ。ここは普通に魔物が闊歩する国ぞ」
アオがそう言う。私はハッとして頷いた。やはり平和な国から来た私は危機感が薄い。気をつけよう。
リヴィオは警戒するように周囲をぐるりと見渡している。
「じゃあ、帰るか。長居は無用だ」
そうねと私が頷きかけたとき、ざわりと嫌な風が吹いた。匂いや音がしたわけではない。遠くから近づいてくる嫌な気配をじわじわと感じられる。
「来るのじゃ!用意せよ!」
アオが叫ぶ。トンッと黒猫が私の腕から飛び出した。
「オレに宿るか?」
「そんなに数はおらぬ。思う存分、自分でも戦ってみたいであろう?」
「私は平和主義よ?」
黒龍の魔力を手に入れたことをアオが暗に言っているのがわかるが、私はそこまで力を誇示したいわけでは………。
「オレだって!」
『それはない』
私とアオは同時にリヴィオを否定した。なんでだよ!と彼が言った瞬間に目で捉えられる範囲に黒い点々が見えてきた。
リヴィオは白銀の剣を抜く。私は術を紡ぐ。アオは余裕のようだ。
黒い狼のような魔物が四体。
「オレが三体な!」
「妾の活躍の場も残すのじゃ!」
「はー!?いらねーだろ!?」
「なんじゃと!?」
……横で言い争う、うるさい二人。
もう少し緊張感ください。
獣が地面を蹴って襲いかかってきた。リヴィオが剣を閃かせると胴体を一刀両断した。
私の術が発動した。無数のオレンジ、赤色の炎の矢が降り注ぎ、触れた魔物が咆哮をあげ、溶けるように消える。
しばし、私は術を放ったポーズで、フリーズした。
えええええっ!?
こ、こんなに炎の矢が出るなんて!?自分の放った術が、以前に比べて、はるかに強力になっていることに動揺した。
アオとリヴィオが不満げにジトーーッとこちらを見た。
「あっ……ごめんね。倒しちゃった」
三体共、炎の矢に飲み込まれるなんて思わなかったのだ。……黒龍の守護者となった今、力を暴走させないようにしようと心に誓った。
ナシュレの街へ帰る。
フリッツを安心させるために、今日は街でデートという設定だった。ちなみにフリッツは奥さんが行きたい!と言ったらしい『湖で紅葉を見て、温泉へ行こう』ツアー中だ。どうも奥さんには敵わないらしい。
カフェのテラス席に腰掛ける。店員さんにコーヒーを2つリヴィオが頼んでいる。
「大丈夫か?疲れたか?」
「平気よ」
温かいコーヒーが運ばれてきた。一口飲むとホッとした。
テラス席からは銭湯に行く家族連れ、温泉玉子を楽しそうに作る人達、アイスクリーム片手に笑いながら歩いて行く女学生達が見えた。
こんなに、この国は平和なのに、昼夜問わず魔物の脅威に脅えている人たちがいる。破壊された街だって、ナシュレのように元は人々が穏やかに暮らしていたのだろう。
「……おい?」
「なに?」
口数少ない私にリヴィオが金色の目を細める。
「悲しんだり同情したりするなら、もうこの件から手を引け」
私は目を丸くした。リヴィオは言葉を続ける。
「セイラの優しさは良いところだと思う。だが、これは優しさだけでは救えない。もっと辛くて残酷な場面や事実に出食わすかもしれない。だからセイラは……」
またリヴィオは……と私は嘆息して、言葉を遮る。
「知らなくていい、見なくていいとか。そんなに私を甘やかさないでよね。そんなに弱くないわよ。………やってやろーじゃないの!」
は!?とリヴィオが言う。
「あの国にも銭湯を楽しむくらいの余裕というものを作りましょうよ!」
はぁ!?とリヴィオは間の抜けた声をあげた。
「ま、まさか……静かだったから、フェンディム王国の状態を憂いているのかと思えば違うのか!?」
信じられない!という目で私を見る。
「しんみりとしていてもどうしようもないわ。ならば、温泉を!銭湯を!作りあげて、皆がほんわかできるくらいの余裕というものを作っていく方法は無いものかと考えていたのよ」
「はー……なるほどな。温泉作ることが平和に繋がるかもな………壮大な夢だな」
椅子にもたれて、リヴィオはやれやれとコーヒーを飲む。
「しおらしくなくて悪かったわね」
フフッと私が笑うと、いいやと首を横に降って、彼も笑った。
「それでこそセイラだな!自分のしたいことの先に平和がある。それでいいな。うん……世界平和を語る時は、そのくらいがちょうどいい」
リヴィオは自分の言葉を噛みしめるように、秋晴れの午後の少しだけ寂しく感じる空を見上げていた。
シン=バシュレはきっと一人で、もがいていた。カホのためでありながらも、苦しむ人のためになにかできないかと。……シンヤ君は溺れていた私を咄嗟に助けるくらい、優しいもの。私が一緒にいることで、心を軽くできたらいのだけどと思う。
私はカップに残ったコーヒーを静かに飲んだ。
崩れた家々はその原型を留めず、壁が崩れ、朽ち果てている。所々倒れた木には深い爪痕。
「こんな街や村は無数にある」
静かに立っていた私を見て、隣にいたリヴィオがそう声をかける。
ここは三大陸の一つにあるフェンディ厶王国。神は白銀の狼。
「ずっと神が不在だった。もちろん今は神が帰ってきたから賑わってる街も増えている。行ってみるか?」
「今回はここだけで良いわ……これがこの国の現実だと受け止めたいもの」
寂しい光景にどんよりとした気持ちになるが、ここから立ち上がっている人々もいるというリヴィオの話に希望がもてる。
そしてここが父が幼い頃にいた国。逃げたかった国なのかと、ふと頭をよぎる。
「油断するでないぞ。ここは普通に魔物が闊歩する国ぞ」
アオがそう言う。私はハッとして頷いた。やはり平和な国から来た私は危機感が薄い。気をつけよう。
リヴィオは警戒するように周囲をぐるりと見渡している。
「じゃあ、帰るか。長居は無用だ」
そうねと私が頷きかけたとき、ざわりと嫌な風が吹いた。匂いや音がしたわけではない。遠くから近づいてくる嫌な気配をじわじわと感じられる。
「来るのじゃ!用意せよ!」
アオが叫ぶ。トンッと黒猫が私の腕から飛び出した。
「オレに宿るか?」
「そんなに数はおらぬ。思う存分、自分でも戦ってみたいであろう?」
「私は平和主義よ?」
黒龍の魔力を手に入れたことをアオが暗に言っているのがわかるが、私はそこまで力を誇示したいわけでは………。
「オレだって!」
『それはない』
私とアオは同時にリヴィオを否定した。なんでだよ!と彼が言った瞬間に目で捉えられる範囲に黒い点々が見えてきた。
リヴィオは白銀の剣を抜く。私は術を紡ぐ。アオは余裕のようだ。
黒い狼のような魔物が四体。
「オレが三体な!」
「妾の活躍の場も残すのじゃ!」
「はー!?いらねーだろ!?」
「なんじゃと!?」
……横で言い争う、うるさい二人。
もう少し緊張感ください。
獣が地面を蹴って襲いかかってきた。リヴィオが剣を閃かせると胴体を一刀両断した。
私の術が発動した。無数のオレンジ、赤色の炎の矢が降り注ぎ、触れた魔物が咆哮をあげ、溶けるように消える。
しばし、私は術を放ったポーズで、フリーズした。
えええええっ!?
こ、こんなに炎の矢が出るなんて!?自分の放った術が、以前に比べて、はるかに強力になっていることに動揺した。
アオとリヴィオが不満げにジトーーッとこちらを見た。
「あっ……ごめんね。倒しちゃった」
三体共、炎の矢に飲み込まれるなんて思わなかったのだ。……黒龍の守護者となった今、力を暴走させないようにしようと心に誓った。
ナシュレの街へ帰る。
フリッツを安心させるために、今日は街でデートという設定だった。ちなみにフリッツは奥さんが行きたい!と言ったらしい『湖で紅葉を見て、温泉へ行こう』ツアー中だ。どうも奥さんには敵わないらしい。
カフェのテラス席に腰掛ける。店員さんにコーヒーを2つリヴィオが頼んでいる。
「大丈夫か?疲れたか?」
「平気よ」
温かいコーヒーが運ばれてきた。一口飲むとホッとした。
テラス席からは銭湯に行く家族連れ、温泉玉子を楽しそうに作る人達、アイスクリーム片手に笑いながら歩いて行く女学生達が見えた。
こんなに、この国は平和なのに、昼夜問わず魔物の脅威に脅えている人たちがいる。破壊された街だって、ナシュレのように元は人々が穏やかに暮らしていたのだろう。
「……おい?」
「なに?」
口数少ない私にリヴィオが金色の目を細める。
「悲しんだり同情したりするなら、もうこの件から手を引け」
私は目を丸くした。リヴィオは言葉を続ける。
「セイラの優しさは良いところだと思う。だが、これは優しさだけでは救えない。もっと辛くて残酷な場面や事実に出食わすかもしれない。だからセイラは……」
またリヴィオは……と私は嘆息して、言葉を遮る。
「知らなくていい、見なくていいとか。そんなに私を甘やかさないでよね。そんなに弱くないわよ。………やってやろーじゃないの!」
は!?とリヴィオが言う。
「あの国にも銭湯を楽しむくらいの余裕というものを作りましょうよ!」
はぁ!?とリヴィオは間の抜けた声をあげた。
「ま、まさか……静かだったから、フェンディム王国の状態を憂いているのかと思えば違うのか!?」
信じられない!という目で私を見る。
「しんみりとしていてもどうしようもないわ。ならば、温泉を!銭湯を!作りあげて、皆がほんわかできるくらいの余裕というものを作っていく方法は無いものかと考えていたのよ」
「はー……なるほどな。温泉作ることが平和に繋がるかもな………壮大な夢だな」
椅子にもたれて、リヴィオはやれやれとコーヒーを飲む。
「しおらしくなくて悪かったわね」
フフッと私が笑うと、いいやと首を横に降って、彼も笑った。
「それでこそセイラだな!自分のしたいことの先に平和がある。それでいいな。うん……世界平和を語る時は、そのくらいがちょうどいい」
リヴィオは自分の言葉を噛みしめるように、秋晴れの午後の少しだけ寂しく感じる空を見上げていた。
シン=バシュレはきっと一人で、もがいていた。カホのためでありながらも、苦しむ人のためになにかできないかと。……シンヤ君は溺れていた私を咄嗟に助けるくらい、優しいもの。私が一緒にいることで、心を軽くできたらいのだけどと思う。
私はカップに残ったコーヒーを静かに飲んだ。
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