転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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紅葉狩り

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 湖の木々が紅葉し、水辺にハラリと落ちる様や燃えるような色をした美しい山が見える。

 船の管理をしてくれている渡し守のおじいさんが『紅葉狩りツアー』に一役かってくれて、湖ではボートに乗りながら、紅葉を楽しむことができる。

 レイクカフェも順調で、毎日、紅葉を見に来る人達で忙しいんですよと、朝カフェをしていた私とリヴィオに言う。

 そんな秋を満喫できる時期に現れたのは新聞記者のジェシカだった。

「ナシュレの紅葉狩り温泉ツアーをこの度、宣伝させていただくことになりましたっ!」

 他にリンゴ狩りツアーやトレッキングツアーなどもしようか模索中である。その話を聞いて、ジェシカの新聞社が取り上げてみたいと言ってくれたのだった。

「ついでに癒やされにきました……おっとっ!」

 カバンを落としかけたところにサッと荷物係のスタッフがキャッチした。ファインプレーだ。そそっかしいジェシカの性格を覚えていたようだ。ジェシカはありがとうございますと顔を赤くしている。

「ジェシカさんの好きそうな美味しい地酒を用意しておきましたよ」

 キラーンとジェシカの目が輝いた。仕事と言いつつも、この取材の役を誰にも譲らなかったらしい。……経費で落ちる!と小さい声で言ったセリフとガッツポーズしていたのを私は見逃さなかった。

「待ってましたーっ!」

「ジェシカさん、仕事で来たんですよね?あの~……紅葉狩りの乗船はどうしますか?」

 私の確認にもちろんですよ!と言いつつも手にタオルを持ち、お風呂の準備万端だ。

「お風呂上がりの一杯は格別よ!明日、ちゃーんと船にも乗りますから!記事もちゃーんと書きますから!」

 安心してくださいと言う。

 何度かプライベートでも来ているジェシカは手慣れたもので、お風呂へと鼻歌混じりに行く。

 今の季節、露天風呂でも紅葉した木々をライトアップし、お風呂に入りながら景色を楽しめるようになっている。

 時々、お風呂に落ちてくる赤い葉をすくってかざしながらお湯に入るのはとても気分が良い。

 実は掃除が大変だけど、スタッフは頑張ってくれている。ありがたいことである。

「紅葉を見ながらお風呂とか最高の贅沢ですよ!桜の時も素敵だけど、これも良いですね!」

 ジェシカがお風呂から出てきて、興奮気味にそう言う。

「ありがとうございます。自然と温泉の繋がりは深いものですから、両方楽しめるのは本当にリラックス効果があると思います」

「そう!リラックスなんですよ!仕事で疲れ切った体もメンタルも癒やしてくれます」

「ジェシカさん、そろそろ中堅っぽいですけど、仕事は慣れないのですか?」

 私は透明な色のお酒を注いでいく。

「中堅だからこそなんですよーっ!上からも下からも突かれて……辛いものなんです」

 なるほどと私は頷いた。異世界でも仕事の上下関係はあまり変わらないものなのかも。

「ん……!?このお酒が美味しいです。なんなの!?」

 日本酒の説明を聞いて、へええええ!と声をあげる。ジェシカ。もう一杯!と飲んでいく。

 焼き魚についていた紅葉の葉に気づき、ジェシカは手に持ってみていた。クルクルと葉を回している。

「はあああ、こんな性格でしょー?こないだもそそっかしくて、失敗しちゃって、後輩の前でお叱り受けて、面子丸つぶれでしたよ」
 
「大変そうですねぇ」

 お酒が回ってきたらしく、ポロリと本音が出てくるジェシカ。

「こないだ取材に行ってきたお店なんて、女に話すことなんてない!って怒鳴りつけられるし……でも、悔しいから粘りに粘って粘って、取材にこぎつけてやりましたけどねっ!」

「それでこそジェシカさんです」

 私はジェシカの話を聞くのは嫌いではない。愚痴を言いつつも仕事が好きで、嫌なことがあっても踏ん張っているのがわかるから、私もがんばろうという、やる気がもらえる。

 これサービスです。……そう私は言って、キノコのマリネをつまみにつけたのだった。

 次の日、二日酔いかと思ったが、ケロリとしていて、船に乗りますよー!と元気なジェシカ。

「おはようございます。元気ですね!」

「朝からお風呂に行ってきちゃいました!いつも……『花葉亭』に来ると元気が出るんです。ありがとうございます」

 思いがけず、お礼を言われてしまい、私はいえいえと照れてそんな返事しかできなかった。

 ジェシカは湖で船に乗り、王都に帰ると良い記事を書いていた。旅館のことをとても褒めてくれていた。

『今の季節の紅葉は素晴らしい。しかしいつ訪れても『花葉亭』からは元気をもらえる………』

 その新聞をそっと折りたたみ、スタッフ達にも見てもらおうと置いておいた。

 『元気が出る』ジェシカの言葉がとても嬉しかった。

 

 

 



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