転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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渡された紙の意味

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 王都で時々開催される商売をしている人達の集まりがある。そこで会いたくない人に出会った。

 ……バシュレ家の父だ。こんな日に限ってリヴィオは貴族の集まりだし、フリッツはそっちへついていってる。

 最悪、私の身に危険があれば、アオが飛び出てくる。神様という最強すぎる護衛がいる。だから大丈夫だ!と自分に言い聞かせる。

 今までこの集まりの場で、会ったことはなかった。姿を確認してじわりと手や背中に汗が滲んだ。私の姿を確認するとツカツカと足音をたてて近寄ってきた。

「この集まりに来ると思っていたぞ」

 父から声をかけてくるなんて!?グッと拳を握る。隣にリヴィオが居なくても大丈夫と自分を励ます。

「このような場においでになるなんて、バシュレ男爵、意外でしたわ」

 扇子をパラリと開いて距離感のある会話を始める。近寄らない、近寄らせない。

「随分、他人行儀な話し方をするのだな」

 面白がる口調でそう言う。

 他の人達もいるのだ。暴挙に出たり無礼なことはできないだろう。

「旅館業を始めたが、なかなか好調でな。こういう場にも出てきた。おかげで稼いだ金でソフィアも取り戻せた」

「え!?それは……法に反するのではありませんか?」

「お金を積めばなんだってできる」
 
 驚いた。……そんなことが可能だったなんて。

「そうですか」

 平然を装ったが、めんどくさいことになりそうだと感じた。

「これを受け取って欲しい」

 1枚の紙切れ?手紙だろうか?私は手を出さない。嫌な予感しかしないのよ!と足を踏みならして言い放ってやりたいが、公衆の面前のため、我慢する。

 バシュレ家と揉めていたなど……良い醜聞である。

「どうした?」

「手紙には良い知らせと悪い知らせがございます。それを受け取ることで私にとって利となるのでしょうか」

「なるかならないかはおまえ次第だろう」

「良い知らせであった試しがありませんわ」

「受け取らない……か。ではおまえの旦那に渡そう」

 バッと私は手紙を受け取った。思惑にのってしまったと思いながらも、リヴィオに接触してほしくない。彼はバシュレ家をいつでも滅ぼしてやるよ!と言っているくらいなのだ。

「また会おう」

 また!?私はそっと手紙をしまいながら睨みつけた。

 なにが書かれているのか気になったが、今は仕事優先だった。

 商売の話が、今日は半分しか頭に入らなかった。動揺している自分が悔しい。

 会合が終わってから、そっと手紙を開けた。

『話したいことがある。バシュレ家の本宅にて待つ。一人で来るように。来ないならばこちらからナシュレへ出向こう』

 一方的である。ソフィアのことに関しての仕返しをするということも考えられる。しかし出向くつもりがあることに驚く。なんの罠だろうか?

 クシャッと手紙を丸めて、魔法の炎で燃やした。燃やしたところで……父と会った事実は変わらないが、もう手紙は見たくなかった。

 執務室へ行くと、ありがたいことに誰もいなかった。ちょうど一人でホッとしたかったのだ。

 嫌な疲労感が残っている。やはり父と対峙するのは怖い。ソファに座りこんだ。いつも通りの自分を演じられるように気持ちを立て直さなければ……。

 なんのために父は私と接触したいのか?話をしたいのか?そこの思惑がわからないのだ。

 ソフィアのために仕返しをしたいとか?それが一番の理由に思える。

 ちょうど私が立ち上がれるようになり、仕事をしようとしたところへジーニーが来た。

「やあ。先日は悪かったね」
 
 家族のことを言っていると気づく。私は微笑んだ。

「良いのよ。楽しい家族じゃないの」

「なにが楽しいものか!まったく呆れるよ。父は反省ゼロで、またセイラをこっそり呼んでくれとか母は相変わらず遊び歩いてるよ!」

 まったく変わらないね!と若き学園長は苦悩の表情を浮かべている。

「僕は絶対、生まれ変わるなら次は僕の好きなことをするよ!僕に学園の経営を押し付け、二人とも気楽なものだよ」

「そうしてちょうだい」

 思わずフフフッと笑ってしまう。学園長になるために育てられたと言うジーニーは若いが、よく頑張っていると思う。

 ガチャと扉が外から開いた。ちょうどリヴィオが帰ってきたらしい。

「声がした……って、ジーニーかよ」 

「なんだろうか?その顔は?」

 リヴィオの表情はモヤッとしていた。ジーニーは首を傾げている。

「何しに来たんだよ」

「文化祭が終わったから疲れて、温泉に入ろうかなと来たんだよ。そしたらセイラが執務室にちょうどいたから話をしていた」

 無愛想に言うリヴィオにジーニーはいつも通り、穏やかに話す。

「文化祭かー、懐かしいわね」

「来たかったら、来年、招待しよう。外部の者も来ているよ」

「ほんと?私、学生の時はあまり積極的に参加していなかったから、今になってもったいなかったなぁと思うのよね」

 私とジーニーの会話に難しい顔をしているリヴィオ。そのことにジーニーは気づいてプッと吹き出す。

「リヴィオ!久しぶりに一緒に風呂へ行こう。なにか僕に話がありそうだからね」

「なっ!なにもねーよ!……おいっ!行くから、ひっぱるなよっ!」

 行くよと引きずられて連れられていくリヴィオ。相変わらず仲良しねぇと私は温泉へ行く二人の背中を見守った。

 手紙のことは言い出せなかった。
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