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若き王が守るもの
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トーラディム王が非公式でと女王陛下に会いに来た。ミラとクラリスがその後ろに護衛として、控えている。
こちらは騎士団長、深紅の魔女リリー、宰相のハリー、そして私とリヴィオというメンバーだ。
「はじめまして黒龍の女王」
若い王が挨拶をする。相変わらずキラキラとしたオーラのある王で金の髪に青い目をした綺麗な王である。女王陛下は微笑む。
「まさか挨拶に来てくれるとは思わなかったのう。少々驚いておるわ。若き光の鳥の王よ。歓迎する。先王であるそなたの父の時代よりトーラディム王国と交流を始めてから長きに渡り、友好関係でいられることに感謝する」
女王陛下が微笑みを浮かべて、挨拶する。
「書状を読ませて頂きました。魔物の発生の原因を調べ、魔物を元から絶つというお話……こちらも、もちろん賛成です。しかし簡単ではない。我が国も昔から何度か討伐隊を出していますが、失敗に終わってます。それが現状です」
「妾が黒龍を保有しているわけではないから、無理強いはできぬが、神々の力を持ってしても無理なものかの?」
「三神の力を使って討伐をしたという前例はありません。もしかするとできるかもしれませんね」
リヴィオが苛立ちを隠せない様子でちょっといいか?と言う。彼の父である宰相のハリーが嫌な予感がすると小さく呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「腹の探り合いしていると話が進まない。するかしないか?だ。白銀の狼の守護者に話をし、協力を得ることは了承済みだ」
若き王とリヴィオの視線がぶつかり合う。私もトーラディム王があまり乗り気ではないことを感じる。
「一度、神殿深部に入ることを許可しよう。大神官長に言っておく。君も見てくるといいよ。黒の時代の戦をね。記録した映像が残っている。そして討伐がいかに難しいかを感じるだろう。場所の特定の目星はついている。そこへどうやって辿りつくのか?王国民の血は流したくない。犠牲を出したくない。これが本音だ」
「魔物の勢いがすごくて行けない。行くために自国の戦力は動かしたくないってことか?」
確認するようにリヴィオは尋ねる。
「そういうことだね」
ミラが眉をひそめた。
「陛下、大事な謁見に口を挟んで申し訳ありませんけど、私たち神官の力を見くびってもらっては……」
そこでトーラディム王の視線が揺らいだのを私は見逃さなかった。
「国民を守るための光の鳥の守護なんだ。王になったのも皆が傷つかないよう守るためなのに血が流れては意味がない」
「私達は戦うための神官です」
「ミラ、陛下の考えに口を出すな。決めるのは陛下だ。立場をわきまえろ」
クラリスにたしなめられて、ミラは口を閉ざした。陛下はミラのことを巻き込みたくないのではと感じた。が、それはただの私の憶測にすぎない。
女王陛下が口を開く。
「確かに、ウィンディム王国の国民に血を流せと頼んでも不満がでることだろう。しかし騎士団、王宮魔導士から精鋭を送ることはできる。そうであろう?騎士団長?深紅の魔女よ」
「もちろんです」
「力を見せる時ですわ」
騎士団長もリリーも勇ましく答える。
「力を貸していただけることは喜ばしいですが……ぜひ現状をご覧になってからの方がいいです。これはウィンディム王国を侮っているわけではないのですが、無駄な犠牲を出したくないんです。弱気な王だと笑われるかもしれませんが」
この王には守りたいもの、守らなければならないものがある。それがとてつもなく重いもので、難しいものなのであろう。魔物に加えて、以前、神を奪いにきたガイアス王国もある。ウィンディム王国とは違い、他の国からの干渉もあるだろう。
「大切な人を危険な場所に連れていけるか?最悪の場合、失う覚悟はできてるのか?」
光の鳥の王は私とリヴィオの顔を見た。
「セイラは……行かなくていい。オレが行く」
「リヴィオ、それは違うわ。私も一緒に背負うし、隣にいると言ったじゃない!ついていくわよ!」
リヴィオも光の鳥の王も私のその言葉に返事はしなかった。もちろん女王陛下もなにも言わなかった。
ミラが会談後に私を捕まえて彼女は言った。
「私も魔物が現れた時期の記憶を視たことがあるの。周辺国が戦や魔物によって滅んでいく。それは過去の話ではなく、これからだって可能性があるわ。世界の未来をトーラディム王国の歴代の王達も憂いて、何度も討伐に行っている。だけど一度も成功したことはない。陛下はあなた達が犠牲になることを心配してるのよ」
「優しい王なのですね。でも私は黒龍の守護者になると決めたときに、リヴィオを一人にさせたくなかったんです。だから共に隣にいて戦うことを選びたいわ」
ミラは私に微笑みかけた。
「その気持ち、わかるわ」
私にそう言い、ミラは人差し指を唇に当てて、こんなこと話したのは内緒ねと言って帰って行った。
しかし会談後、リヴィオは迷うことなく、過去を見てみると言った。しかし私の顔を見て、目を伏せる。
「黒龍だけの力じゃダメだ。ダメだったんだ。シンヤの時に失敗している。現状はとてつもなく悪い。一度絶望を味わっているが、それでも、もう一度やってみたい。滅びの未来を待つのは嫌だ。でもセイラを連れて行くことは……怖い」
怖いなんて……あまり口にしないリヴィオの顔色は蒼白で、シンヤ君の時になにがあったのか聞くことはできなかった。
こちらは騎士団長、深紅の魔女リリー、宰相のハリー、そして私とリヴィオというメンバーだ。
「はじめまして黒龍の女王」
若い王が挨拶をする。相変わらずキラキラとしたオーラのある王で金の髪に青い目をした綺麗な王である。女王陛下は微笑む。
「まさか挨拶に来てくれるとは思わなかったのう。少々驚いておるわ。若き光の鳥の王よ。歓迎する。先王であるそなたの父の時代よりトーラディム王国と交流を始めてから長きに渡り、友好関係でいられることに感謝する」
女王陛下が微笑みを浮かべて、挨拶する。
「書状を読ませて頂きました。魔物の発生の原因を調べ、魔物を元から絶つというお話……こちらも、もちろん賛成です。しかし簡単ではない。我が国も昔から何度か討伐隊を出していますが、失敗に終わってます。それが現状です」
「妾が黒龍を保有しているわけではないから、無理強いはできぬが、神々の力を持ってしても無理なものかの?」
「三神の力を使って討伐をしたという前例はありません。もしかするとできるかもしれませんね」
リヴィオが苛立ちを隠せない様子でちょっといいか?と言う。彼の父である宰相のハリーが嫌な予感がすると小さく呟いたのを私は聞き逃さなかった。
「腹の探り合いしていると話が進まない。するかしないか?だ。白銀の狼の守護者に話をし、協力を得ることは了承済みだ」
若き王とリヴィオの視線がぶつかり合う。私もトーラディム王があまり乗り気ではないことを感じる。
「一度、神殿深部に入ることを許可しよう。大神官長に言っておく。君も見てくるといいよ。黒の時代の戦をね。記録した映像が残っている。そして討伐がいかに難しいかを感じるだろう。場所の特定の目星はついている。そこへどうやって辿りつくのか?王国民の血は流したくない。犠牲を出したくない。これが本音だ」
「魔物の勢いがすごくて行けない。行くために自国の戦力は動かしたくないってことか?」
確認するようにリヴィオは尋ねる。
「そういうことだね」
ミラが眉をひそめた。
「陛下、大事な謁見に口を挟んで申し訳ありませんけど、私たち神官の力を見くびってもらっては……」
そこでトーラディム王の視線が揺らいだのを私は見逃さなかった。
「国民を守るための光の鳥の守護なんだ。王になったのも皆が傷つかないよう守るためなのに血が流れては意味がない」
「私達は戦うための神官です」
「ミラ、陛下の考えに口を出すな。決めるのは陛下だ。立場をわきまえろ」
クラリスにたしなめられて、ミラは口を閉ざした。陛下はミラのことを巻き込みたくないのではと感じた。が、それはただの私の憶測にすぎない。
女王陛下が口を開く。
「確かに、ウィンディム王国の国民に血を流せと頼んでも不満がでることだろう。しかし騎士団、王宮魔導士から精鋭を送ることはできる。そうであろう?騎士団長?深紅の魔女よ」
「もちろんです」
「力を見せる時ですわ」
騎士団長もリリーも勇ましく答える。
「力を貸していただけることは喜ばしいですが……ぜひ現状をご覧になってからの方がいいです。これはウィンディム王国を侮っているわけではないのですが、無駄な犠牲を出したくないんです。弱気な王だと笑われるかもしれませんが」
この王には守りたいもの、守らなければならないものがある。それがとてつもなく重いもので、難しいものなのであろう。魔物に加えて、以前、神を奪いにきたガイアス王国もある。ウィンディム王国とは違い、他の国からの干渉もあるだろう。
「大切な人を危険な場所に連れていけるか?最悪の場合、失う覚悟はできてるのか?」
光の鳥の王は私とリヴィオの顔を見た。
「セイラは……行かなくていい。オレが行く」
「リヴィオ、それは違うわ。私も一緒に背負うし、隣にいると言ったじゃない!ついていくわよ!」
リヴィオも光の鳥の王も私のその言葉に返事はしなかった。もちろん女王陛下もなにも言わなかった。
ミラが会談後に私を捕まえて彼女は言った。
「私も魔物が現れた時期の記憶を視たことがあるの。周辺国が戦や魔物によって滅んでいく。それは過去の話ではなく、これからだって可能性があるわ。世界の未来をトーラディム王国の歴代の王達も憂いて、何度も討伐に行っている。だけど一度も成功したことはない。陛下はあなた達が犠牲になることを心配してるのよ」
「優しい王なのですね。でも私は黒龍の守護者になると決めたときに、リヴィオを一人にさせたくなかったんです。だから共に隣にいて戦うことを選びたいわ」
ミラは私に微笑みかけた。
「その気持ち、わかるわ」
私にそう言い、ミラは人差し指を唇に当てて、こんなこと話したのは内緒ねと言って帰って行った。
しかし会談後、リヴィオは迷うことなく、過去を見てみると言った。しかし私の顔を見て、目を伏せる。
「黒龍だけの力じゃダメだ。ダメだったんだ。シンヤの時に失敗している。現状はとてつもなく悪い。一度絶望を味わっているが、それでも、もう一度やってみたい。滅びの未来を待つのは嫌だ。でもセイラを連れて行くことは……怖い」
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