208 / 319
銭湯のお客に紛れる黒い影
しおりを挟む
ヨイチとアサヒが銭湯の入口に立って、もうこれは日本!日本じゃないか!?と騒ぐ。
「ありがとうセイラさん!」
ダダダダとタオルを片手にアサヒが風呂場へ走っていく。滑らないようにねー!と私は後ろから声をかけるが、聞こえているのかな?
「街の人達も絶対に喜ぶと思うよ」
ヨイチも嬉しい顔をして、ゆっくりと歩いて行った。
彼らにここに作ってくれと頼まれた街に銭湯を作った。造りが独特な街だった。下からいくつも歯車のように建物が積み重なっていて、坂道や階段が多い上に、複雑に道が入り組んだ街だ。階段や坂を登ったり降りたりすることが大変なので、エレベーターを各所につけた。
「いやー、これは楽でいいですなー。エレベーターというもの、良い発明ですなー。歳をとったら、足が痛いので、ありがたい」
カエルのような顔をしたおじさんが銭湯の中へ入っていく。
「暑いけど汗を流して、さっぱりしたいときはお風呂がいいわよねー!」
可愛い女の子や家族連れ達がキャッキャとやってきた。常夏の国に温泉とかどうかな?と思ったが、好評のようだ。
「アイスクリームだって~!冷たくて美味しそう。お風呂上がりに食べてみたーい!」
「いいわよー。美味しそうね!」
アイスクリームの自動販売機の前では子どもと母の微笑ましい、やりとりが行われている。
リヴィオがオレも行ってきていいか!?とサウナをみつけて、ソワソワしていたので、私は笑った。
「行ってくるといいわ。ここの銭湯はタイル画をしてみたのよ。ヨイチとアサヒが描いたのよ。とても素敵なのよ」
オッケー!わかった、見てくる!と慌ただしく銭湯の暖簾をくぐって行ってしまうリヴィオ。
タイル画は『さくら』という文字がグニャリと動いて変化し、咲き誇る桜の木々が浮かび上がる。時折ふわりと花びらを散らす。招き猫と書かれた文字はおいでおいでと手を動かす猫と化す。緑の山々が見える。文字の変化から動きのある壁の絵が本当に素敵なので、ウィンダム王国の旅館にも書いてほしいなと思っているところだ。
動く文字の具現化なんて素敵すぎる!ヨイチとアサヒの能力は文字を使って力を発動させている。それを利用した書を売ってるらしいが、これは欲しくなる。
お風呂上がりの自動販売機はかなり大盛況だった!冷たいレモン水、お茶、果実ジュース、シュワシュワの炭酸水、アイスクリーム。楽しそうにお金をチャリンと入れてボタンを押して出てくると「すごい!魔法!?」「もう一回ボタンを押したくなる」などと言って、買っていっている。
私が入口にいると、スタスタと背の低い少年が入っていく。
「お客様ー!すみません、銭湯チケットは………?」
振り返った少年はアサヒやヨイチと同じくらいの年齢で、浅黒い肌に長い黒髪を一つに束ね、青い宝石のついた髪留めでとめていた。
「あるよ」
「お家の方は?一人で来たの?」
私が尋ねると、フッと鼻で笑われた。
「はい。チケット。一人で来たんだよ。悪い?」
「悪くはないわ。気をつけてお風呂に入ってね」
私のことを横目で小馬鹿にするように見てから、さっさと中へ入っていった。……私、なんだか余計なことを聞いたり言ったりしたのかしら。
インド人のまるでマハラージャ……王様のような独特な雰囲気と気品のある顔立ちをした綺麗な少年に軽くあしらわれてしまった。
外見の姿イコール年齢ではないことがこの世界ではあるから、気をつけないとダメね。魔力の高い者は時々成長が止まる人がいる。
子ども扱いしてはいけない時があるわね。と、反省した。しばらくして、リヴィオとアサヒとヨイチが揃って、お風呂から出てきた。
「あっ!リヴィオ、お風呂の中に浅黒い肌をした可愛い少年はいなかった?一人で来たらしいんたけど……」
「浅黒い肌?そんなやついたか?」
リヴィオがヨイチとアサヒに尋ねると、二人とも首を横に振った。
「見ませんでしたよ」
「いなかったよな」
そんなはずは……女湯?私はそっとお風呂場を確認しに行った。しかし本当にいなかった。
「確かに、チケットもらったし、見送ったのだけど……」
私が頬に手を当てて困ってるとアサヒがアハハっと笑い、からかうように言う。
「セイラさん、幽霊でも見たんじゃないのかー?」
幽霊?そんなはず……と言いかけて、私は思い出した。光の鳥の神は言っていた。
私に亡霊が会いに来るだろうと。まさか?あの少年が?そんなわけないわよね。きっと帰っていくのを見逃したのだと、そう自分に言い聞かせた。
「ありがとうセイラさん!」
ダダダダとタオルを片手にアサヒが風呂場へ走っていく。滑らないようにねー!と私は後ろから声をかけるが、聞こえているのかな?
「街の人達も絶対に喜ぶと思うよ」
ヨイチも嬉しい顔をして、ゆっくりと歩いて行った。
彼らにここに作ってくれと頼まれた街に銭湯を作った。造りが独特な街だった。下からいくつも歯車のように建物が積み重なっていて、坂道や階段が多い上に、複雑に道が入り組んだ街だ。階段や坂を登ったり降りたりすることが大変なので、エレベーターを各所につけた。
「いやー、これは楽でいいですなー。エレベーターというもの、良い発明ですなー。歳をとったら、足が痛いので、ありがたい」
カエルのような顔をしたおじさんが銭湯の中へ入っていく。
「暑いけど汗を流して、さっぱりしたいときはお風呂がいいわよねー!」
可愛い女の子や家族連れ達がキャッキャとやってきた。常夏の国に温泉とかどうかな?と思ったが、好評のようだ。
「アイスクリームだって~!冷たくて美味しそう。お風呂上がりに食べてみたーい!」
「いいわよー。美味しそうね!」
アイスクリームの自動販売機の前では子どもと母の微笑ましい、やりとりが行われている。
リヴィオがオレも行ってきていいか!?とサウナをみつけて、ソワソワしていたので、私は笑った。
「行ってくるといいわ。ここの銭湯はタイル画をしてみたのよ。ヨイチとアサヒが描いたのよ。とても素敵なのよ」
オッケー!わかった、見てくる!と慌ただしく銭湯の暖簾をくぐって行ってしまうリヴィオ。
タイル画は『さくら』という文字がグニャリと動いて変化し、咲き誇る桜の木々が浮かび上がる。時折ふわりと花びらを散らす。招き猫と書かれた文字はおいでおいでと手を動かす猫と化す。緑の山々が見える。文字の変化から動きのある壁の絵が本当に素敵なので、ウィンダム王国の旅館にも書いてほしいなと思っているところだ。
動く文字の具現化なんて素敵すぎる!ヨイチとアサヒの能力は文字を使って力を発動させている。それを利用した書を売ってるらしいが、これは欲しくなる。
お風呂上がりの自動販売機はかなり大盛況だった!冷たいレモン水、お茶、果実ジュース、シュワシュワの炭酸水、アイスクリーム。楽しそうにお金をチャリンと入れてボタンを押して出てくると「すごい!魔法!?」「もう一回ボタンを押したくなる」などと言って、買っていっている。
私が入口にいると、スタスタと背の低い少年が入っていく。
「お客様ー!すみません、銭湯チケットは………?」
振り返った少年はアサヒやヨイチと同じくらいの年齢で、浅黒い肌に長い黒髪を一つに束ね、青い宝石のついた髪留めでとめていた。
「あるよ」
「お家の方は?一人で来たの?」
私が尋ねると、フッと鼻で笑われた。
「はい。チケット。一人で来たんだよ。悪い?」
「悪くはないわ。気をつけてお風呂に入ってね」
私のことを横目で小馬鹿にするように見てから、さっさと中へ入っていった。……私、なんだか余計なことを聞いたり言ったりしたのかしら。
インド人のまるでマハラージャ……王様のような独特な雰囲気と気品のある顔立ちをした綺麗な少年に軽くあしらわれてしまった。
外見の姿イコール年齢ではないことがこの世界ではあるから、気をつけないとダメね。魔力の高い者は時々成長が止まる人がいる。
子ども扱いしてはいけない時があるわね。と、反省した。しばらくして、リヴィオとアサヒとヨイチが揃って、お風呂から出てきた。
「あっ!リヴィオ、お風呂の中に浅黒い肌をした可愛い少年はいなかった?一人で来たらしいんたけど……」
「浅黒い肌?そんなやついたか?」
リヴィオがヨイチとアサヒに尋ねると、二人とも首を横に振った。
「見ませんでしたよ」
「いなかったよな」
そんなはずは……女湯?私はそっとお風呂場を確認しに行った。しかし本当にいなかった。
「確かに、チケットもらったし、見送ったのだけど……」
私が頬に手を当てて困ってるとアサヒがアハハっと笑い、からかうように言う。
「セイラさん、幽霊でも見たんじゃないのかー?」
幽霊?そんなはず……と言いかけて、私は思い出した。光の鳥の神は言っていた。
私に亡霊が会いに来るだろうと。まさか?あの少年が?そんなわけないわよね。きっと帰っていくのを見逃したのだと、そう自分に言い聞かせた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる