転生先の異世界で温泉ブームを巻き起こせ!

カエデネコ

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亡国の執念は傷をつける

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 リヴィオとトーラディム王が互いの神を宿した瞬間、戦況は変わった。

 城内の魔物が一斉に追い払われ、1つの巨大な穴をみつけた。

「ここの下じゃろうな」

「一気に叩くぞ」

 飛び込もうとした。しかし……と黒竜が躊躇う。

「国を守護するだけの力は残しておかねばならぬ。まだ世界に残ってる魔物がおるのじゃ。我が国の民は魔物には耐えれぬ」

「それはトーラディム王国とて同じだ。……どこまでやれるか?」

 二人の神が言うと、ミラが口を挟んだ。
 
「だから、私が居るんでしょ!私がする。あなた達は補助してくれると助かるわ。セイラはもう戻って。この先はセイラの力ではいけないわ」

 決意した目でそう私に告げる彼女は……もしかして……。

「また会えるわよね?」

「もちろんよ。私の力を見くびらないでよ!?……私は過去の過ちに関わる者。でも過去に人は戦で失敗したけれど、こうして他国の者同士が共に手を取り合って魔物の発生装置を止めようとしている。そんな互いに助け合える世界もあるのだと……セイラ、あなたが教えてくれて、みんなを繋げたのよ」

 そう笑った顔は寂しげだった。私を危険から遠ざけようとしている。嫌な予感は拭えない。しかし、私は足手まといになるなら、行くべきではない。黒竜の力を借りているものの、神を宿せる者とは力の差はある。私を守るために力を使わせるなんて本末転倒だ。

 それでも離れがたい私にピッと指をさし、問答無用よ!と言って笑い、決断を促した。

「じゃあ、また後でね!終わったらゆっくり一緒に温泉に入りましょう」

 ミラがそう言った瞬間、私は、黒竜に転移させられて、地下から地上へ飛ばされた。視界が変わる。そして轟音が響いた。眩いばかりの白い光は辺りを包み込む。

 爆発音と衝撃波を結界で防ぐ。砂埃が舞う。ガラガラと崩れていく建物、立っていられない程の風が吹く。

 しばらくすると、シンッと静けさが来た。何もかもなくなった天井からは空の色の青さが見え、黒い雲が霧散し、光が射し込んできた。

「終わった……?」

 私は立ち上がって黒い渦があった方を見る。しばらくすると、リヴィオが私を見つけて走ってくるのが見えた。私も駆け寄っていく。

「セイラ!無事か!?」

 私の顔を見て、ホッとするリヴィオ。私との距離が近くなった瞬間だった。

 リヴィオの後ろから、体が薄く透け、口からは黒色の血を流したガルディンが鋭い黒い爪をリヴィオに突き立てた。

「リヴィオ!!」

 私は叫ぶ。咄嗟にリヴィオを庇う。体に食い込む爪。痛みが走る。地面に倒れる。

「やった!やったぞ!最後にやってやった!!アハハハハ!一人で死ぬのは怖くて寂しい。一緒に闇の中へ行こうじゃないか!」

「セイラーーー!」

 亡霊は満足そうに笑って、サラサラと体が溶けて無くなった。リヴィオか叫び、私の体を抱きしめながら、必死で治癒の魔法をかけてくれる。だけど……効いていない。

「血が……血がとまらない……」

 彼の震える声を聞く。最期の力で呪いでもかけていったのかもしれない……私は……自分の血で地面が血に染まるのを見る。

「セイラ……」

 リヴィオが泣きそうな顔をしている。私はそっと頬に手をやる。

 ああ、そうだったわ。……思い出した。今、この瞬間に思い出したわ。伝えておきたい。私の一番大切な人に。会えなくなる前に。

「カホが……死ぬ間際に『来世は絶対に、時を越え、世界を越えて、シンヤくんの命を助ける』………って……シンヤくんに助けてもらった命。次は自分が助けたいと思ってた」

 今、思い出す。カホの死ぬ間際に思ったこと……今こそリヴィオに伝えて置かなきゃ。きっとこれが私の最期。

「この瞬間のために自分は転生……してきたんだと……思うの。愛を得られず……愛を知らなかった自分が愛することを……知ることができたのは……リヴィオのおかげよ……次はカホとして………未来で待っている……私を見つけて………」

「な、何言ってる!?」

「約束して……次も……私を見つけてね……大好きよ……リヴィオ……」

「何度でも!何度でもセイラを探してみつける!だけど……死ぬなよ!いなくなるようなことを言うなよ!」

 私は血のついた手だったが、リヴィオに最期にどうしても触れたくて、彼の頬を撫で、意識を失った。

 これ以上一緒にいれなくて、ごめんね。ごめんねって何度も心の中で謝った。でもリヴィオが無事で良かった。最期にリヴィオのために役立てて後悔なんてない。ただ……彼やみんなと過ごしてきた幸せな日々をもう諦めなくちゃいけないの?それだけが悲しかった。

 ガルディンが一人で死ぬのが怖いと言った意味はわかった。私も怖い。亡霊が望んだ、暗い闇へと引きずり込まれるように、落ちていった。

 
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