253 / 319
約束を果たしに来た彼女
しおりを挟む
体力は、ほぼ完璧なので、とりあえず、『花葉亭』の中庭の掃き掃除から始めてみた。
「無理しないでくださいよ!」
「暑いから、水分はとってくださいよ!」
スタッフ達がそう声をかけていく。周囲のみんなまで過保護になってしまった。まだ朝だから、涼しいのにな……と私は思いつつ、心配かけた手前、言い返せない。
「女将ー!なんかお客さん来てますよー!」
受付のスタッフがしばらくして声をかけてきた。お客さん?
「はーい!……誰かしら?」
受付カウンターには誰もいない。
「ちょっとぉ!ここよ!ここ!!」
カウンターの下?見下ろすと小さな子どもがいた。……が、その顔は見たことがあった。
「ミラ!?そ、そういえば……なぜか子供の姿になってしまったとは聞いていたんだけど」
「そうなのよねー。なぜなのか……まぁ、力を使いすぎたみたいで、以前ほどの魔力が無いの。そのせいじゃないかって!」
藍色の目はそれでも以前と同じようにキラキラと煌めいていた。
「ごめんね……なんの力にもなれなくて……」
「え!?セイラも大変だったでしょう!?人にはそれぞれ役割があると思うの。私は時を越えて破壊する者だった。セイラはみんなを繋げる者だった。ただそれだけよ」
なに謝ってるのとキッパリ言い放つ。そしてニコッと笑う。
「一緒に温泉に入ろうって約束をしたでしょう?ちゃんと果たしに来たわ」
「あ!そうだったわ……なんのお風呂にしようかしら?」
私の言葉に首を横に振る彼女。
「いつもの温泉でいいのよ!特別じゃなくても良いの。一緒にセイラとまったり入りたいの」
嬉しいことを言ってくれる。わかったわと私は頷く。
朝の大浴場は貸し切りだった。眩しい夏の太陽が差し込むと湯気が光を映し出す。
「はぁ~。やっぱり最高ね~。この木の香りがホントに癒やされるのよ」
頭にタオルをのせたミラが癒やされるーと木の香りのするお風呂に入っている。
私も隣に並び、広いお風呂で、ゆっくり手足を伸ばした。心が落ち着き、ホッとする。
「こないだのことが嘘みたいよね……まぁ、この子どもの体を見るたび、嘘じゃなかったと現実を目の当たりにしてるんだけどね」
ミラはそう言って明るく笑う。悲壮感が無いのが彼女らしいが、どこか無理している気がした。
私は思わずザバっとお湯から立ち上がり、彼女の手を握っていた。
「元に戻す方法を探しましょう!」
「えっ!?えええ!?」
「きっと、方法はあるはず!本当は戻りたいでしょう!?」
ミラは私に小さい声だったが、ありがとうと言った。きっと彼女の強がりはトーラディム王に自分を責めさせないためのものだ。
私はリヴィオがずっと自分のことを責めていたとジーニーに聞いた。それで……私はなんとなく気づいてしまった。好きな人がそうやって苦しむのは辛いものね……。
チャポチャポと温泉のお湯が流れる音がする。静かな空気が流れる。朝の清々しい雰囲気。
ミラはなにかを決心したように、お湯からピョンと飛び出て浴槽の縁に腰掛けて言った。
「じゃあ、当分、ここにお世話になるわ!温泉旅館のお手伝いしつつ、住まわせてもらうわね!」
「え!?手伝いなんていいわよ!?」
「タダで寝床とご飯を提供してもらうなんて私の性に合わないわ!よろしくね」
エリート神官なのに??私は首を傾げだが、ミラは足を温泉につけて、バシャバシャお湯を飛ばし、どこかはりきってすらいるのだった。
「無理しないでくださいよ!」
「暑いから、水分はとってくださいよ!」
スタッフ達がそう声をかけていく。周囲のみんなまで過保護になってしまった。まだ朝だから、涼しいのにな……と私は思いつつ、心配かけた手前、言い返せない。
「女将ー!なんかお客さん来てますよー!」
受付のスタッフがしばらくして声をかけてきた。お客さん?
「はーい!……誰かしら?」
受付カウンターには誰もいない。
「ちょっとぉ!ここよ!ここ!!」
カウンターの下?見下ろすと小さな子どもがいた。……が、その顔は見たことがあった。
「ミラ!?そ、そういえば……なぜか子供の姿になってしまったとは聞いていたんだけど」
「そうなのよねー。なぜなのか……まぁ、力を使いすぎたみたいで、以前ほどの魔力が無いの。そのせいじゃないかって!」
藍色の目はそれでも以前と同じようにキラキラと煌めいていた。
「ごめんね……なんの力にもなれなくて……」
「え!?セイラも大変だったでしょう!?人にはそれぞれ役割があると思うの。私は時を越えて破壊する者だった。セイラはみんなを繋げる者だった。ただそれだけよ」
なに謝ってるのとキッパリ言い放つ。そしてニコッと笑う。
「一緒に温泉に入ろうって約束をしたでしょう?ちゃんと果たしに来たわ」
「あ!そうだったわ……なんのお風呂にしようかしら?」
私の言葉に首を横に振る彼女。
「いつもの温泉でいいのよ!特別じゃなくても良いの。一緒にセイラとまったり入りたいの」
嬉しいことを言ってくれる。わかったわと私は頷く。
朝の大浴場は貸し切りだった。眩しい夏の太陽が差し込むと湯気が光を映し出す。
「はぁ~。やっぱり最高ね~。この木の香りがホントに癒やされるのよ」
頭にタオルをのせたミラが癒やされるーと木の香りのするお風呂に入っている。
私も隣に並び、広いお風呂で、ゆっくり手足を伸ばした。心が落ち着き、ホッとする。
「こないだのことが嘘みたいよね……まぁ、この子どもの体を見るたび、嘘じゃなかったと現実を目の当たりにしてるんだけどね」
ミラはそう言って明るく笑う。悲壮感が無いのが彼女らしいが、どこか無理している気がした。
私は思わずザバっとお湯から立ち上がり、彼女の手を握っていた。
「元に戻す方法を探しましょう!」
「えっ!?えええ!?」
「きっと、方法はあるはず!本当は戻りたいでしょう!?」
ミラは私に小さい声だったが、ありがとうと言った。きっと彼女の強がりはトーラディム王に自分を責めさせないためのものだ。
私はリヴィオがずっと自分のことを責めていたとジーニーに聞いた。それで……私はなんとなく気づいてしまった。好きな人がそうやって苦しむのは辛いものね……。
チャポチャポと温泉のお湯が流れる音がする。静かな空気が流れる。朝の清々しい雰囲気。
ミラはなにかを決心したように、お湯からピョンと飛び出て浴槽の縁に腰掛けて言った。
「じゃあ、当分、ここにお世話になるわ!温泉旅館のお手伝いしつつ、住まわせてもらうわね!」
「え!?手伝いなんていいわよ!?」
「タダで寝床とご飯を提供してもらうなんて私の性に合わないわ!よろしくね」
エリート神官なのに??私は首を傾げだが、ミラは足を温泉につけて、バシャバシャお湯を飛ばし、どこかはりきってすらいるのだった。
1
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる