269 / 319
小さき村に隠されし道
しおりを挟む
シア村。それはトーラディム王国内のひっそりとした森の中に存在した。村長は若い娘だった。
小さな村にやってくるには多い人数の私達に驚くことがない。まるで前からわかっていたように受け入れてくれた。
「亡くなったおじいちゃんが、言ってたの。いつか王様や偉い人たちが来るかもしれないよ……って。それは代々言われ続けていたことだったの」
「ありがとう。守り、残しておいてくれたことに感謝するよ」
キサがそう言うと待っていて良かった!と現在村長になった娘は笑顔で言う。
「王都にどんどん人が働きに出て行くから、村人も少なくなっちゃった……わたしの父さんと母さんも王都にいるの。でもおじいちゃんの後を継いで、誰かが守らなきゃと思ったの」
こっちよ。と案内してくれる。小さな洞窟があった。その暗闇に足を踏み入れようとした時、ミラの足が動けなくなったようになっていることにキサが気づく。
「……嫌だよな。わかるよ。でもルノールの長が判断したことは間違いではないと思う。大丈夫だ。その責任は共に背負うと前に言ったはずだ」
「かなり大昔のことを持ち出してくるわね。大丈夫よ。行くわ」
微かに笑って、ミラは歩き出す。小さな子どもの彼女は精一杯の……私はそっとミラと手を繋ぐ。
「セイラ……?」
「私も一緒にいるわ。こうしてると、ちょっと気持ち的に楽にならないかなとか?力になれないかな?って思ったの」
ありがとうと潤むミラの目。クスッと私は笑ってから、キサにハイッとミラの手を譲った。
「私より適任はいるわね」
ちょっと!?というミラの言葉は無視して、キサはその小さな手と繋ぐ。ありがとうと小さく顔を赤らめて私に言う若き王。
リヴィオが新鮮な反応だなぁと呟いた。余計なことを言わないのよ!と私は睨む。後ろから退屈そうな双子ちゃんがやってきた。
「なにしてるのだ!?」
「さっさと行くのだ!」
感動的な場面を壊しがちな3人である。
「ここです」
装置は球体の物が3つ、その中に魔法陣のようなものが書かれていて、機械はボロボロになっている。
トトとテテが駆け寄った。
「すごいのだーっ!」
「ここの構造どうなってるのだー!?」
まるで新しい玩具を手に入れたかのようなテンションで、カバンから道具を出し、楽しそうに調べだす。スケッチブックに装置の構造をすごいスピードでペンを走らせ模写していく。
その双子ちゃんの様子をポカンとして、思わず見守ってしまう。
「天才っていうのは、あながち誇張でもなかったんだな。自称だと思ってた」
「リヴィオ!聞こえてるのだ!」
双子ちゃんは色々、やりすぎてしまうから、リヴィオの言いたいことも昔なじみゆえにわからなくもない。
「どう?直せそう?」
私が聞くと、トトとテテが一旦、手を止める。
「構造はほぼ残っているのだ。だからできないことはないとは思うのだ」
「しかし時間はかかるのだ」
ミラがその返事に目を丸くした。
「すごいわね……この技術は高度な物なのにわかるの?」
『天才発明家に不可能はないのだっ!』
「えーと……普通に現在の技術じゃ無理って感じの代物なのよ?ホントに……直せたら天才かも」
ミラの言葉にニヤリと不敵に笑う双子ちゃんたち。しばらくシア村に滞在すると言って、もうルノールの民が作った装置に夢中なトトとテテだった。
「キサ、もう手を離していいのよ?」
若き王は洞窟から出ても手を繋いでいて、そう言われる。スッと手を握り、跪いて、ミラの視線に合わせる。
「過去の記憶があろうとも、今を生きている。それを忘れないでいてほしい。ルノールの長やトーラディム王としてではなく、ただのキサとミラとして新しい未来を築いていけると思うんだ」
キサは天空の地へ行く前に、ミラに伝えたかったのだろう。自分たちは自分たちだと。きっと天空の地へ行けばミラの記憶はより濃いものになり、ルノールの長の記憶に負けてしまうかもしれないと……そう彼は心配している。
ミラは素直にうんと頷いて、優しき王に一粒だけ涙を見せたのだった。
小さな村にやってくるには多い人数の私達に驚くことがない。まるで前からわかっていたように受け入れてくれた。
「亡くなったおじいちゃんが、言ってたの。いつか王様や偉い人たちが来るかもしれないよ……って。それは代々言われ続けていたことだったの」
「ありがとう。守り、残しておいてくれたことに感謝するよ」
キサがそう言うと待っていて良かった!と現在村長になった娘は笑顔で言う。
「王都にどんどん人が働きに出て行くから、村人も少なくなっちゃった……わたしの父さんと母さんも王都にいるの。でもおじいちゃんの後を継いで、誰かが守らなきゃと思ったの」
こっちよ。と案内してくれる。小さな洞窟があった。その暗闇に足を踏み入れようとした時、ミラの足が動けなくなったようになっていることにキサが気づく。
「……嫌だよな。わかるよ。でもルノールの長が判断したことは間違いではないと思う。大丈夫だ。その責任は共に背負うと前に言ったはずだ」
「かなり大昔のことを持ち出してくるわね。大丈夫よ。行くわ」
微かに笑って、ミラは歩き出す。小さな子どもの彼女は精一杯の……私はそっとミラと手を繋ぐ。
「セイラ……?」
「私も一緒にいるわ。こうしてると、ちょっと気持ち的に楽にならないかなとか?力になれないかな?って思ったの」
ありがとうと潤むミラの目。クスッと私は笑ってから、キサにハイッとミラの手を譲った。
「私より適任はいるわね」
ちょっと!?というミラの言葉は無視して、キサはその小さな手と繋ぐ。ありがとうと小さく顔を赤らめて私に言う若き王。
リヴィオが新鮮な反応だなぁと呟いた。余計なことを言わないのよ!と私は睨む。後ろから退屈そうな双子ちゃんがやってきた。
「なにしてるのだ!?」
「さっさと行くのだ!」
感動的な場面を壊しがちな3人である。
「ここです」
装置は球体の物が3つ、その中に魔法陣のようなものが書かれていて、機械はボロボロになっている。
トトとテテが駆け寄った。
「すごいのだーっ!」
「ここの構造どうなってるのだー!?」
まるで新しい玩具を手に入れたかのようなテンションで、カバンから道具を出し、楽しそうに調べだす。スケッチブックに装置の構造をすごいスピードでペンを走らせ模写していく。
その双子ちゃんの様子をポカンとして、思わず見守ってしまう。
「天才っていうのは、あながち誇張でもなかったんだな。自称だと思ってた」
「リヴィオ!聞こえてるのだ!」
双子ちゃんは色々、やりすぎてしまうから、リヴィオの言いたいことも昔なじみゆえにわからなくもない。
「どう?直せそう?」
私が聞くと、トトとテテが一旦、手を止める。
「構造はほぼ残っているのだ。だからできないことはないとは思うのだ」
「しかし時間はかかるのだ」
ミラがその返事に目を丸くした。
「すごいわね……この技術は高度な物なのにわかるの?」
『天才発明家に不可能はないのだっ!』
「えーと……普通に現在の技術じゃ無理って感じの代物なのよ?ホントに……直せたら天才かも」
ミラの言葉にニヤリと不敵に笑う双子ちゃんたち。しばらくシア村に滞在すると言って、もうルノールの民が作った装置に夢中なトトとテテだった。
「キサ、もう手を離していいのよ?」
若き王は洞窟から出ても手を繋いでいて、そう言われる。スッと手を握り、跪いて、ミラの視線に合わせる。
「過去の記憶があろうとも、今を生きている。それを忘れないでいてほしい。ルノールの長やトーラディム王としてではなく、ただのキサとミラとして新しい未来を築いていけると思うんだ」
キサは天空の地へ行く前に、ミラに伝えたかったのだろう。自分たちは自分たちだと。きっと天空の地へ行けばミラの記憶はより濃いものになり、ルノールの長の記憶に負けてしまうかもしれないと……そう彼は心配している。
ミラは素直にうんと頷いて、優しき王に一粒だけ涙を見せたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる