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第25話
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陛下との謁見が終わり、帰ろうとした時だった。聞き覚えのある声に呼び止められた。
「アールー!アル!」
無視しようかと一瞬思ってしまった。公爵のオレにこんな馴れ馴れしく話しかけてくるやつは、この王宮内でたった一人だ。
「久しぶりだなぁ」
「オースティンか……いや、オースティン殿下。お久しぶりです」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべている。思わずため口をききそうになって、王宮内だし、オレは公爵として付き合わねばならないのだからと、気を付ける。が、相手はそれを弱腰だととったらしい。
「アル、どうだ?俺が捨てた女を拾って気分がいいか?」
王子なのに下品な聞き方だなと思う。将来、こいつが王で大丈夫だろうか?冷たい視線を無言で送ってしまう。それが気に入らなかったらしい。突然、ガッと襟元を掴み、壁際に押し込まれる。振り払うことはできたが、城で騒ぎを起こすのはオレが不利だなと頭の中で、計算する。
「なにをする?」
冷静に聞き返すと憎々しげに視線を送ってくる。
「いつもいつも、平然としていて気に入らないやつだ!俺のしたことに対して、否定し、自分は正しいみたいな顔をして見下してるのか?小さい頃から、いちいち、おまえと比べられている俺の身になれ!今回も父王になんと言って取り入った!?」
「はぁ?」
なぜこいつはこんなに熱く怒っているんだ?しかもなんかオレのことを意識しすぎてないか?
「わざと俺の捨てたものを拾って、これ見よがしに善人ぶるのか!何もわからないかわいそうな俺のため正解を教えてやるってことかよ!」
「なんでそんなにイライラしているんだ?シアとフランを王宮から出て行けと追い出したのはオースティンだろ?いらないんだろ?」
思わず、昔なじみの話し方にオレはなってしまう。
「アル。俺が羨ましいんだろ?」
「羨ましい!?どうしてそういった考え方になる!?」
襟元の首にグッと力を込めてくる。
「やめろ」
オレはそれ以上は許さないと、鋭くにらみつけ、冷たく刺すような声音で忠告した。危機を察して、バッと手を放し、青ざめるオースティン。喧嘩でも武術の訓練でもオレに勝てたことは一度もない。慌てて、距離をとっている。オレは襟元も直す。
「公爵家にネズミを入り込ませたのはなぜだ?シアになんの用があった?」
「なんのことだ?わからないな」
暴れた馬の事件で、オースティンがオレの屋敷にしのびこませていることを知ったが、とぼけている。素直に肯定するわけがないと思ったが。
「ネズミを痛めつけたら、依頼者を簡単に吐いてくれたんだがな」
「野蛮なことをしているな。だが無関係だ。名前など簡単に言えるだろう。勝手に名を使われて迷惑だ。アルはどこがいいんだ。あんな女、どこにでもいるだろう。必要か?」
「認めないか……予想通りだけどな。しかしオレの妻を侮辱することは許さない」
「妻ぁ!?結婚したのか!?」
「神殿に結婚承諾書を提出してきた」
「頭、おかしいだろ!?アルバートと結婚したい女は山ほどいて選び放題だろうが!あんな貧相で子連れで、俺のおさがりの女のどこがいい!?」
グイッと体を押し戻し、逆に壁際にオースティンを追い詰める。そしてダンッとオースティンの横の壁を蹴飛ばした。ビクッとなるオースティン。
「さっき言ったよな?オレの妻を侮辱するなと」
「なっ……」
「言ったよな?」
オレに威圧されて、恐怖の表情になる。さっきから人が来ないし、いないところをみると、オースティンが人払いしたのだろう。都合が良いとオレは強気になる。
「ほ、本気で怒ってるのか?しょ、しょしょ正気か!?」
「今度ネズミを送ってきてみろ?オースティン殿下は、王城であろうが、堅固に守られていようが、夜も寝れないくらい恐ろしい目に合うかもな」
「脅してるのか!?」
怯えだすオースティン殿下。まったく、力を示してからじゃないと、こいつは話が聞けないのかよと悪態をつきたくなるのを我慢する。
「シアとフランに何かを仕掛けるのは許さない。いいか?シアを悲しませたり泣かせたりすることは許さない!オレのものに手を出すな!」
オレはそう言い捨てて、踵を返した。これ以上相手にしても胸糞悪いし、騒ぎに気づかれてはまずい。去り際のオレの背中に向かって『今まで散々シアを泣き叫ばせてやったさ!ざまあみろ!』と声が追いかけてきた。
振り返って、走っていき、張り倒したい衝動をこらえる。オレは公爵なんだから、殿下の煽る言葉に囚われるな!こんなところで処罰されるわけにはいかない。立場を考えろ。自分の手が痛むほど握りしめる。
だけど、いつか絶対に張り倒してやるからなっ!そう心に誓ったのだった、
「アールー!アル!」
無視しようかと一瞬思ってしまった。公爵のオレにこんな馴れ馴れしく話しかけてくるやつは、この王宮内でたった一人だ。
「久しぶりだなぁ」
「オースティンか……いや、オースティン殿下。お久しぶりです」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべている。思わずため口をききそうになって、王宮内だし、オレは公爵として付き合わねばならないのだからと、気を付ける。が、相手はそれを弱腰だととったらしい。
「アル、どうだ?俺が捨てた女を拾って気分がいいか?」
王子なのに下品な聞き方だなと思う。将来、こいつが王で大丈夫だろうか?冷たい視線を無言で送ってしまう。それが気に入らなかったらしい。突然、ガッと襟元を掴み、壁際に押し込まれる。振り払うことはできたが、城で騒ぎを起こすのはオレが不利だなと頭の中で、計算する。
「なにをする?」
冷静に聞き返すと憎々しげに視線を送ってくる。
「いつもいつも、平然としていて気に入らないやつだ!俺のしたことに対して、否定し、自分は正しいみたいな顔をして見下してるのか?小さい頃から、いちいち、おまえと比べられている俺の身になれ!今回も父王になんと言って取り入った!?」
「はぁ?」
なぜこいつはこんなに熱く怒っているんだ?しかもなんかオレのことを意識しすぎてないか?
「わざと俺の捨てたものを拾って、これ見よがしに善人ぶるのか!何もわからないかわいそうな俺のため正解を教えてやるってことかよ!」
「なんでそんなにイライラしているんだ?シアとフランを王宮から出て行けと追い出したのはオースティンだろ?いらないんだろ?」
思わず、昔なじみの話し方にオレはなってしまう。
「アル。俺が羨ましいんだろ?」
「羨ましい!?どうしてそういった考え方になる!?」
襟元の首にグッと力を込めてくる。
「やめろ」
オレはそれ以上は許さないと、鋭くにらみつけ、冷たく刺すような声音で忠告した。危機を察して、バッと手を放し、青ざめるオースティン。喧嘩でも武術の訓練でもオレに勝てたことは一度もない。慌てて、距離をとっている。オレは襟元も直す。
「公爵家にネズミを入り込ませたのはなぜだ?シアになんの用があった?」
「なんのことだ?わからないな」
暴れた馬の事件で、オースティンがオレの屋敷にしのびこませていることを知ったが、とぼけている。素直に肯定するわけがないと思ったが。
「ネズミを痛めつけたら、依頼者を簡単に吐いてくれたんだがな」
「野蛮なことをしているな。だが無関係だ。名前など簡単に言えるだろう。勝手に名を使われて迷惑だ。アルはどこがいいんだ。あんな女、どこにでもいるだろう。必要か?」
「認めないか……予想通りだけどな。しかしオレの妻を侮辱することは許さない」
「妻ぁ!?結婚したのか!?」
「神殿に結婚承諾書を提出してきた」
「頭、おかしいだろ!?アルバートと結婚したい女は山ほどいて選び放題だろうが!あんな貧相で子連れで、俺のおさがりの女のどこがいい!?」
グイッと体を押し戻し、逆に壁際にオースティンを追い詰める。そしてダンッとオースティンの横の壁を蹴飛ばした。ビクッとなるオースティン。
「さっき言ったよな?オレの妻を侮辱するなと」
「なっ……」
「言ったよな?」
オレに威圧されて、恐怖の表情になる。さっきから人が来ないし、いないところをみると、オースティンが人払いしたのだろう。都合が良いとオレは強気になる。
「ほ、本気で怒ってるのか?しょ、しょしょ正気か!?」
「今度ネズミを送ってきてみろ?オースティン殿下は、王城であろうが、堅固に守られていようが、夜も寝れないくらい恐ろしい目に合うかもな」
「脅してるのか!?」
怯えだすオースティン殿下。まったく、力を示してからじゃないと、こいつは話が聞けないのかよと悪態をつきたくなるのを我慢する。
「シアとフランに何かを仕掛けるのは許さない。いいか?シアを悲しませたり泣かせたりすることは許さない!オレのものに手を出すな!」
オレはそう言い捨てて、踵を返した。これ以上相手にしても胸糞悪いし、騒ぎに気づかれてはまずい。去り際のオレの背中に向かって『今まで散々シアを泣き叫ばせてやったさ!ざまあみろ!』と声が追いかけてきた。
振り返って、走っていき、張り倒したい衝動をこらえる。オレは公爵なんだから、殿下の煽る言葉に囚われるな!こんなところで処罰されるわけにはいかない。立場を考えろ。自分の手が痛むほど握りしめる。
だけど、いつか絶対に張り倒してやるからなっ!そう心に誓ったのだった、
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