女嫌いの旦那様、その愛本物ですか?

カエデネコ

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(番外編)嫉妬心は憎しみとなる②

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 アルに俺はモテる!というところを見せたくて、アルのことを好きだという女性にわざと声をかけて奪ったこともあった。しかし、やつは平然としている。夜会になれば、女性たちの視線は自分のものにしているとばかりに飄々としている。特別な女性とのうわさも聞かない。相変わらず真面目で面白味のないやつだ。

「アルが公爵になった……しばらく助けてやらんとな。オースティン、従兄として力になってやれ」

 父王がそう言った。

「はぁ?なんでアルの力に?アルは優秀なんでしょう?必要ないですよ」

 鼻で笑った。ざまーみろ!あいつは公爵になって、もう自由もないし、遊ぶこともできない!!せいぜい貴族の役目を果たせばいい!!

 そんなことを思っていたから父が言い出したことには反発しかなかった。

「オースティン!おまえが王になった時に一番近く、助けてくれるのはアルだぞ!大事にせねばならない!」

「だから今、困ってるアルを助けろと?王家を助けるのは貴族の役目。もちろん俺が王になったらこき使いますよ」

 父王がおまえというやつは!!と顔を赤くしたが、またアルバートのことか。父のアルバート贔屓はたくさんだ!と思った。

 それからしばらくして、父が言い出した。

「女性関係であまり良いうわさをきかないな?そろそろ身を固めろ。愛人はいてもいい。貴族から正妻を選べ。そろそろしっかりしても良い年齢だ。いい加減なことをするならば、王位継承権を剥奪だ!」

「……まったくめんどくさいな」

 そう俺は言った。そして夜会で目についた女性を適当に選んだのだった。

「ああ。あれだ。あれ。あの金の髪をした女でいい。用意しておけ」

「は?はぁ!?」

 父王の側近?だったか?うろ覚えだが、父のよく傍にいる者にそれだけ伝えて、面白くない夜会を出ていった気がする。

「オースティンさまぁ!イザベラを捨てますの!?」

 俺に忠実なイザベラがすりよっていた。この女は扱いやすい。物を与えておけば、けっして離れることがない。

「そんなわけないだろう?」

 そう言って、イザベラの身体を自分の方へ寄せた。さきほど選んだ女などどうでもいい。

「父に言われたから貴族の女を一人見繕っただけだ。城で飼ってやるだけだ」

「でもぉ」

「可愛いのはイザベラだけだ。俺を信じて」

 そう適当に言ったのに、うれしいとすりよってきた。ほんとに単純な女だな。少し退屈だなと感じさえしたが、従順な女は嫌いじゃない。

「オースティン殿下でしょうか?はじめまして。シアと申します」

「誰だ?」

 数日後、挨拶にきた女がいた。顔立ちはかわいらしさの残る感じで、俺より年下のようだった。

「あの……夜会でオースティン殿下が私に会いたいとおっしゃってくれたと聞いたのですが」

 ああ……そうだっけな。数日たつとどうでもよくなっていた。

「これからよろしくお願いします」

 深々と一礼した。

「俺は従順な女が好きなんだ」

 え?とシアは俺をみつめかえした。言っている意味がわからないらしい。わからないなら教えてやろう。

「おまえの部屋は西の塔になる。俺が出てきていいというまで顔や姿を見せるなよ。わかったな?」

 イザベラと鉢合わせなんて、めんどくさいことになっては困る。

「は……はい……」

 一瞬戸惑ったような表情をしたが、小さい声で返事がをする。

 なんでも言うことを聞いてくれて、御しやすそうな女だなと思った。この時はそう思ったんだ。

 それなのに、結婚式の前に彼女は言った。

「結婚はやめませんか?オースティン殿下には想い人がいらっしゃるようですし……私は知らずに来たのです」

 は?何言っているんだ?と俺は思った。真っ直ぐにこっちを見る純真な青い目は俺にとってあまりにも綺麗すぎた。

「勘違いするなよ?おまえに決定権なんてない。俺がお飾りの妃として選んでやったんだ。ありがたく思えよ。なんでも貧乏貴族の家だそうだな?その服装で王宮にこれるとはな」

 カッと頰が赤くなるシア。怒ったのか?シアが身につけているのは、どこにでも売ってそうなもので形も流行遅れの服だった。かといって、新しいものを買い与える気はなかった。

「こ、これは……」

「王宮でいい暮らしができると思ったか?それでのこのこやって来たんだろう」

「いいえ……私はあなたと結婚などしたくありません。どうか家へ帰してください!」 

 その言葉にカッとなった。

「俺に指図するな!」

 グッとシアの手首を掴む。力を込めすぎたらしく痛いですとシアが言うが、かまうもんか!

「結婚式は予定通りに行う!それまで西の塔へこもってろ!」

 シアは拒否した。だが俺は許さなかった。

 彼女は御しやすい女ではなかったのだ。

 さらに数年後に俺は嫌というほど思い知ることになるとは、このとき思ってもいなかったのだった。
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