74 / 304
王妃の資格
しおりを挟む
「えっ!?王妃様が怒られてしまったのか!?」
エリックが大きい声を出す。シッ!とセオドアが人差し指を唇に当てている。
……何を話してるんだ?まだ会議中だぞ。無邪気なエリックがオレの視線に気づいて、悪い!気になっていたんだーと笑う。セオドアはリアンに肩入れし過ぎだな。三騎士になぜばらす?
「陛下、セオドアを射殺すような目で見ないでください。どうしたのかと三騎士の我々が気になったので、尋ねたのです」
トラスが落ち着いた声でそう言う。
「どうもしない。王妃はオレを心配するあまり、塞ぎ込んでいて、体調を崩してしまった。しばらく療養のため、クラーク家へ帰す!以上だ!」
怒鳴って立ち上がり、会議を切り上げてオレは出ていく。
「陛下!?」
三騎士とセオドアが立ち上がって追いかけてくる。他の臣下はザワザワし、その場に残る。廊下で追いつかれる。
「なんだ?」
オレが鋭い目をし、低い声音で聞き返すと、ウッと勇敢なフルトンすら怯む。
「怒りすぎでしょう?あの王妃はでしゃばりすぎたものの、あの策がなければ我が国は救われなかった」
「トラス、リアンを気に入ったか?」
「陛下……落ち着いてください。なにをそんなに……」
「リアンは敗戦した時、自分の首を賭けていたんだぞ!オレはそこまでさせてしまった!」
ギリッと奥歯を噛み締める。その瞬間、珍しくセオドアが抑揚のない声で長い言葉を吐き出してきた。
「陛下はたった1人です。王妃は代わりがいる。それだけだと思います」
「オレにとって王妃はたった1人だけだ」
「だからこそ……最愛の王妃だからこそ負けた時に差し出すものが自分であれば価値があるとリアン様はお考えになった。王妃や子供を政治に利用する国は多いでしょう?陛下が1人しか娶らないのはけっこうですが……このような時に困るのでは?差し出すためにリアン様以外にも後宮に他の女性も入れるべきです」
「……セオドア」
影のようにオレの傍にいて、最近はリアン寄りだなと思っていたのに口から出る言葉は残酷なものだった。
「あなたの影となるべくして育てられたのです。すべてが陛下優先の考え方かもしれません。無論、リアン様のことは嫌いではありません。出過ぎたことを申しました。申し訳ありません」
言わせたのはオレだ………そう思った。
「まあ、王妃様の権限は越えてるから罰は必要かもねー。陛下……騎士団の皆のところへとりあえず行って、労ってくれるかな?なんか答えは落ちてるかもよ」
エリックがそう明るく言った。オレは無言で身を翻し、その場を去った。
騎士団の区域に入ると皆が忙しそうに戦の片付けをしていた。オレに気づくと胸に手を置き挨拶をする。
「皆、今回の……戦、よくやってくれた」
そう言うと顔を見合わせる騎士たち。そして笑った。
「今回の功労者は陛下とリアン様でしょう!?」
「見事な策をありがとうございました」
「行く前は恋人に別れを告げていったくらい死を覚悟していたのに、驚きましたよ!」
「リアムなんて名乗って、最初からバレバレの変装してる王妃様には笑わせてもらいましたし……」
「勇敢な獅子王と賢き王妃がいる我が国は最高ですよ!」
「エイルシア王国に栄光あれ!」
ウオオオオ!と盛り上がる。
……なんだ?これ?
「おー……留守番してて、話を聞いて驚いた。その場にいたかったぞ」
ガルシア将軍がつまらなさそうにそう言って、スッと真面目な顔つきになった。そしてオレの前に跪いた。
「騎士の部下達を誰一人として、死なせずに帰ってきたのには驚いた。心より感謝する。素晴らしい王と王妃に最大限の礼をする」
将軍が跪いた!?オレはしばらくその場から動けなかった。
将軍の跪いた姿を見て……他の騎士たちが次々と膝をついていく。しばらく動けなくなった。
……王と王妃。背中合わせで戦える。そんな王と王妃がこの世界にいたって良いのかもしれない。二人で立ち向かえることはオレを孤独な王にしない。
離縁しようと言ったのは……リアンが王妃であれば無茶をするからだ。でも必要なんだ。オレにはリアンを手放せない。わかってる。あの日からずっと寝れない。夜になると一人でいる孤独がヒシヒシと感じられる。その感情囚われてしまい眠れない。
自分勝手だなと思う。リアンの安全と幸せを考えたら手放すことがきっと正しい。
だけど……跪いた将軍と騎士達がオレに勇気をくれる。あの天才彼女を迎えに行けと。オレだけじゃない。
皆が必要としている。
だけどリアン、オレはこの先、君を守れるだろうか?
エリックが大きい声を出す。シッ!とセオドアが人差し指を唇に当てている。
……何を話してるんだ?まだ会議中だぞ。無邪気なエリックがオレの視線に気づいて、悪い!気になっていたんだーと笑う。セオドアはリアンに肩入れし過ぎだな。三騎士になぜばらす?
「陛下、セオドアを射殺すような目で見ないでください。どうしたのかと三騎士の我々が気になったので、尋ねたのです」
トラスが落ち着いた声でそう言う。
「どうもしない。王妃はオレを心配するあまり、塞ぎ込んでいて、体調を崩してしまった。しばらく療養のため、クラーク家へ帰す!以上だ!」
怒鳴って立ち上がり、会議を切り上げてオレは出ていく。
「陛下!?」
三騎士とセオドアが立ち上がって追いかけてくる。他の臣下はザワザワし、その場に残る。廊下で追いつかれる。
「なんだ?」
オレが鋭い目をし、低い声音で聞き返すと、ウッと勇敢なフルトンすら怯む。
「怒りすぎでしょう?あの王妃はでしゃばりすぎたものの、あの策がなければ我が国は救われなかった」
「トラス、リアンを気に入ったか?」
「陛下……落ち着いてください。なにをそんなに……」
「リアンは敗戦した時、自分の首を賭けていたんだぞ!オレはそこまでさせてしまった!」
ギリッと奥歯を噛み締める。その瞬間、珍しくセオドアが抑揚のない声で長い言葉を吐き出してきた。
「陛下はたった1人です。王妃は代わりがいる。それだけだと思います」
「オレにとって王妃はたった1人だけだ」
「だからこそ……最愛の王妃だからこそ負けた時に差し出すものが自分であれば価値があるとリアン様はお考えになった。王妃や子供を政治に利用する国は多いでしょう?陛下が1人しか娶らないのはけっこうですが……このような時に困るのでは?差し出すためにリアン様以外にも後宮に他の女性も入れるべきです」
「……セオドア」
影のようにオレの傍にいて、最近はリアン寄りだなと思っていたのに口から出る言葉は残酷なものだった。
「あなたの影となるべくして育てられたのです。すべてが陛下優先の考え方かもしれません。無論、リアン様のことは嫌いではありません。出過ぎたことを申しました。申し訳ありません」
言わせたのはオレだ………そう思った。
「まあ、王妃様の権限は越えてるから罰は必要かもねー。陛下……騎士団の皆のところへとりあえず行って、労ってくれるかな?なんか答えは落ちてるかもよ」
エリックがそう明るく言った。オレは無言で身を翻し、その場を去った。
騎士団の区域に入ると皆が忙しそうに戦の片付けをしていた。オレに気づくと胸に手を置き挨拶をする。
「皆、今回の……戦、よくやってくれた」
そう言うと顔を見合わせる騎士たち。そして笑った。
「今回の功労者は陛下とリアン様でしょう!?」
「見事な策をありがとうございました」
「行く前は恋人に別れを告げていったくらい死を覚悟していたのに、驚きましたよ!」
「リアムなんて名乗って、最初からバレバレの変装してる王妃様には笑わせてもらいましたし……」
「勇敢な獅子王と賢き王妃がいる我が国は最高ですよ!」
「エイルシア王国に栄光あれ!」
ウオオオオ!と盛り上がる。
……なんだ?これ?
「おー……留守番してて、話を聞いて驚いた。その場にいたかったぞ」
ガルシア将軍がつまらなさそうにそう言って、スッと真面目な顔つきになった。そしてオレの前に跪いた。
「騎士の部下達を誰一人として、死なせずに帰ってきたのには驚いた。心より感謝する。素晴らしい王と王妃に最大限の礼をする」
将軍が跪いた!?オレはしばらくその場から動けなかった。
将軍の跪いた姿を見て……他の騎士たちが次々と膝をついていく。しばらく動けなくなった。
……王と王妃。背中合わせで戦える。そんな王と王妃がこの世界にいたって良いのかもしれない。二人で立ち向かえることはオレを孤独な王にしない。
離縁しようと言ったのは……リアンが王妃であれば無茶をするからだ。でも必要なんだ。オレにはリアンを手放せない。わかってる。あの日からずっと寝れない。夜になると一人でいる孤独がヒシヒシと感じられる。その感情囚われてしまい眠れない。
自分勝手だなと思う。リアンの安全と幸せを考えたら手放すことがきっと正しい。
だけど……跪いた将軍と騎士達がオレに勇気をくれる。あの天才彼女を迎えに行けと。オレだけじゃない。
皆が必要としている。
だけどリアン、オレはこの先、君を守れるだろうか?
33
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫が愛人を離れに囲っているようなので、私も念願の猫様をお迎えいたします
葉柚
恋愛
ユフィリア・マーマレード伯爵令嬢は、婚約者であるルードヴィッヒ・コンフィチュール辺境伯と無事に結婚式を挙げ、コンフィチュール伯爵夫人となったはずであった。
しかし、ユフィリアの夫となったルードヴィッヒはユフィリアと結婚する前から離れの屋敷に愛人を住まわせていたことが使用人たちの口から知らされた。
ルードヴィッヒはユフィリアには目もくれず、離れの屋敷で毎日過ごすばかり。結婚したというのにユフィリアはルードヴィッヒと簡単な挨拶は交わしてもちゃんとした言葉を交わすことはなかった。
ユフィリアは決意するのであった。
ルードヴィッヒが愛人を離れに囲うなら、自分は前々からお迎えしたかった猫様を自室に迎えて愛でると。
だが、ユフィリアの決意をルードヴィッヒに伝えると思いもよらぬ事態に……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
公爵家の秘密の愛娘
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。
過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。
そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。
「パパ……私はあなたの娘です」
名乗り出るアンジェラ。
◇
アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。
この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。
初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。
母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞
🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞
🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇♀️
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる