天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

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王は時として焦り不安に駆られる

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「もう帰ってしまうんですか?」

「コンラッド!おまえがそれをいうか!?リアンに手を出すからだろう!?」

「そんなに彼女は動揺してました?少しは脈があったってことなんでしょうか?」

 まったく悪びれていないのはどういうことだ?他の王の王妃に手を出すなんて外交問題ものだぞ?コンラッドはそんなに馬鹿じゃないはずだ。本当の狙いはなんだ?

「おまえにはおまえの王妃がいるのになぜリアンに構う!?」

「本当の愛をみつけられそうだったんですけどね……残念です」

 オレはコンラッドがそんな愛に溺れるようなタイプではないことを知っている。むしろどこか冷めている。目を細めて真意を探っていく。

「上辺だけの言葉で語っていても無理か。なんとなく予想はつく。オレとリアンを離してエイルシア王国を弱体化させるつもりか?」

「……王の傍に置くには危険すぎる人材です。少数の兵で勝てる策を作りあげることができ、内政も見事なものです。ダムの建設を実際にしてみていると聞き、何人かにこっそり見に行かせましたよ。確かにすごい。ウィルバート、あの王妃の価値をわかってますか?」

「わかってる」

「本当に?男であれば宰相にまでなってますよ」

「わかってる」

 リアンの能力をわかってて、王妃にした。それでいいのか?と何度も自分に問う機会はあった。

「それに何よりも、リアン王妃がいないウィルバートは自滅してくれそうですしね」

「コンラッド!」

「あなたは『獅子王』と呼ばれるほど強く賢い。だけど強すぎる力だけではダメだと思っていました。相手を強さで抑えつけるのは根本的な解決にはなりませんからね。それなのにいつからか……柔らかさを兼ね備え、人々の心を掴みだした。それはリアン王妃に出会ったからですね?」

 オレは言葉に詰まった。

「長くウィルバートを兄のように慕っていたんです。わかりますよ。変化はずっと謎でしたが、リアン王妃が現れて納得しました」

 コンラッドは気づいていたのかと驚く。リアンがいない時のオレといる時のオレの違いは側近のものしかわからないと思っていた。

「これでも恐れているんです。最近のエイルシア王国の勢いはすごい。内政の地盤も堅固になりつつある。その姿を捉え、気づけているのは今のところユクドール王国のみでしょうが……エイルシア王国と共に未来を築く覚悟をウィルバートが決めたんだとわかりました」

「……ユクドールのような国に恐れられるほどの大きさでは無いと思うけどな」

 国土の大きさからして違う。

「ごまかさないでください。海運にも手を伸ばしているでしょう」

 あれはエキドナ公爵がリアンの実家へ嫌がらせするために陸路を断ったため、海路を作っただけだが……思いの外、伸びしろがあった。あのリアンの父の手腕もあるだろうが。

「もしかしたら50年いえ……30年先にはエイルシアにユクドールは負けているかもしれません」

「そんなことないだろう」

「そうでしょうか?」

 コンラッドの目を見る。そしてオレはフッと嘆息した。

「焦るな」

「………」

 オレの一言に沈黙するコンラッド。

「王になる覚悟を決めていても、いざなるとその冠は重い。のしかかるような重責に負けて自分を見失うな」

「ウィルバートが羨ましい。傍にいて支えてくれ、一緒に背負ってくれる人がいる」

「オレもすぐに手に入ったわけじゃない。焦らず国を作り上げていけ。良い国はすぐに出来上がるものじゃないし、時間はかかる。結果がすぐ出るわけでもない」

 コンラッドは目を伏せた。巨大な王国を背負う重責に押しつぶされそうなのだろうと。この国が揺らげば周辺諸国も揺らぐ。

「怖いんです。夜も眠れないくらいに……覚悟を決めていたのに現実になると……違うんですね」

「その気持ちはわかる。たまに手紙を書け。オレでよければ相談にのる。そのうち、コンラッドの周りにも信頼できる者がいると自分でわかるさ」

「いるでしょうか……」

「必ずいる。みつけろ。オレから奪うより早い」

 すいませんでしたと少し涙が目の端に滲んでいる。泣き笑いするコンラッド。オレも笑った。王とは孤独だ。その孤独に狂う者もいる。

 オレは生きる意味がわからなくて、国と一緒に沈むのも悪くないなと思っていた幼い頃があったなんてコンラッドには言えない。

 今は彼女が怠惰に呑気に過ごせるように平和で穏やかな国を作りたいなんて願望がある。それがオレの愛の形かもしれない。

 

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