天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ

文字の大きさ
244 / 304

彼女に穏やかなお茶会は難しい

しおりを挟む
 オホホホと口元に手を当てて、笑うのはシザア王国の王妃で、ウィルのお姉様ソフィーだった。

 今、シザリア王国、ユクドール王国、ハイロン王国、そして私達のエイルシア王国が集い、進めていることがあり、度々シザリア王も来ている。今回はウィルのお姉様も共に来てくれ、退屈している私の相手を頼むとウィルから言われたらしい。
  
 ウィルは私が退屈するだろうと、そこまで気づいてるのに、『怠惰に過ごさせるように』なんて命令を出している。そして城の皆が全力で取り組んでしまってる。しかも善意でしてくれてるのがわかるから、私も拒否しにくい。

 その話をするとソフィーは楽しそうに笑い出したのだった。

「笑い事ではありませんわ」

「ご、ごめんなさいね。ウフフフ……笑いが止まらなくて!弟が!あのウィルバートが!そこまで心配しているなんて思わなくて……フフッ」

 ……笑い過ぎである。

「そういえば……この指輪をありがとうございました」

「あら?お役に立ちまして?」

 ハイと私は頷いた。あんなに魔力の増幅があるとは思わなかった。

「指輪はリアン様に差し上げるわ。お父様が、この指輪をわたくしにくれたのはウィルバートが暴走したら止めろという意味だったのではないかと思うのよ。もちろんわたくし自身の身を守れということでもあったとは思うけど……」
 
「ウィルバートが暴走??」

 ソフィーは私が聞き返すとなんとも言えない。複雑そうな顔をした。

「ええ。その可能性はあったと思うわ。お父様は元々はきちんと国を治められていたのですわ。最初から、責務を放棄していたのではないの。ウィルバートのお母様が亡くなってから、なにもかもやる気が失せたという感じになってしまったと耳にしたわ」

 ウィルバートのお母様のことを本当に好きだったのねと私はせつなくなる。さらにソフィーは言う。

「弟が喜んでいるのは嬉しいけど、リアン様や子どもを失うことがあれば、ウィルバートもどう変わるのか……わかってるとは思うけれど……」

 わかってる。私は理解していて、気をつけなければならない。

 きっとそうなれば、ウィルの優しい部分は消えて、ウィルバートは闇に心を掴まれて突き進んで行くだろう。それはきっと国をも巻き込む破滅の道だろう。

「思っていた以上に責任重大な気がしてきましたわ」

「プレッシャーを与えるつもりじゃないのよ。ただ元気で明るくいつものあなたのように傍にいてあげてほしいの」

「それならできます」

 私の返事に微笑むソフィー。

「異母姉といえど、なんの姉らしいことなどしてなかったわたくしに何かを言う権利はありませんけれど、ウィルバートをお願いします。リアン様もお体を大事にしてくださいね。城の皆が案じているのはわかります。行き過ぎたところもあるでしょうけどね。新しく生まれる子を楽しみにしてるのでしょう」

「ありがとうございます。わかってはいるのですが、案じられ過ぎてストレスになりそうですわ。そういえばシザリア王は近々、東の国と交易を始めると聞きましたけれど?」

「もう!もっと女の子たちが好きそうな話題をしなさいな!……でもそれが、きっとリアン様何でしょうけれども……そうですわ。情報が早いですわね。先日、決まった話ですのに。東の国は珍しい物がありますし、こちらも売れるものもあるとシザリア王は心弾ませてますわ」

 なるほどと私は頷く。あまり交流のなかった地域だけれど、あちらからコンタクトを取ってきた?と見ていいのかしら?長く疎遠だったのに。今になって?政治の方向性が変わった?

「リアン様!胎教に悪いですわよ!また難しいことを考えてるでしょう?穏やかな気持ちでいることが大事よ!」

 慌てた声に思考を遮られる。

「癖というか、自然と……申し訳ありませんわ」

 リアン様をゆったりとしたお茶会に誘うのは難しいですわとソフィーは困った顔で頬に手をあてたのだった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました

iru
恋愛
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

お嬢様と執事は、その箱に夢を見る。

雪桜 あやめ
恋愛
✨ 第6回comicoお題チャレンジ『空』受賞作 阿須加家のお嬢様である結月は、親に虐げられていた。裕福でありながら自由はなく、まるで人形のように生きる日々… だが、そんな結月の元に、新しく執事がやってくる。背が高く整った顔立ちをした彼は、まさに非の打ち所のない完璧な執事。 だが、その執事の正体は、なんと結月の『恋人』だった。レオが執事になって戻ってきたのは、結月を救うため。だけど、そんなレオの記憶を、結月は全て失っていた。 これは、記憶をなくしたお嬢様と、恋人に忘れられてしまった執事が、二度目の恋を始める話。 「お嬢様、私を愛してください」 「……え?」 好きだとバレたら即刻解雇の屋敷の中、レオの愛は、再び、結月に届くのか? 一度結ばれたはずの二人が、今度は立場を変えて恋をする。溺愛執事×箱入りお嬢様の甘く切ない純愛ストーリー。 ✣✣✣ カクヨムにて完結済みです。 この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※第6回comicoお題チャレンジ『空』の受賞作ですが、著作などの権利は全て戻ってきております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

処理中です...