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(番外編)名前のない妃①
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わたくしの名前を呼んでほしいのですわ。願いはただそれだけですのに。
「マリアベルと申します。わたくしのことは親しい人はマリーと皆、呼びます。よろしければコンラッド様もそう呼んでいただ……」
目の前の夫となるユグドールの王子にわたくしは挨拶したが、相手の平然とし、変わらないニコニコとした笑顔に言葉が詰まってしまった。
なんでしょう?この方は笑ってるのに、心ここにあらずという感じなのがわかりますわ。
「ようこそユグドール王国へ。名前で呼ぶよりも、色の名前でもよろしいですか?そのほうが合理的ですから……そうですねぇ……今、着ているドレスが白色だから白の妃でいいですか?」
し、白?……白色?白の妃ってどういった意味なのでしょう?
最初は何をおっしゃってるのかわからなかった。でもそのうち嫌でもわかるようになった。
わたくしの後から、赤、黄、青、黒と色の名前で呼ばれる妃ができたからだった。さらにコンラッド様はおっしゃいました。
「ちょっと妃が増えすぎてわかりにくいので、お願いがあります」
ユグドールの王となる方、自らからお願いされてはだれも否ということはできませんわ。わたくしももちろん、ハイと素直に頷きました。
「色の名前と同じ色のものを常に身に着けてもらっていいですか?」
わたくしは言葉に詰まる。しかし、明るくあまり細いことには気にしない性格の赤の妃はもちろんコンラッド様が望むのならよろしいですわ!と答えた。それにならうように皆が頷く。わたくしは……嫌ですわといいたかったとですが、ここで一人で反論してもコンラッド様に悪印象を与えるだけですわねと堪えた。
わたくしの名前であるマリアベル。親しみをこめて「マリー」とコンラッド様のお声で呼んで頂けたらどんなに嬉しいでしょう?
色で分けられているなんて……まるで……物と同じだと思いませんの?と他の人に尋ねると『別に気にしません』『コンラッド様がそれで良いと言うのですから』と、わたくしの意見は相手にされなかった。
コンラッド様はわたくしたちのこと愛してくださるのかしら?なんだか不安ですわ。
そう思っていたけれど、コンラッド様はお優しくて、度々、自らの後宮へ訪れてはわたくしたちに会いに来てくださったり、プレゼントを贈ってくださったりした。
そして色別されたわたくしたちの名は城の使用人達にも馴染んでしまい、『白の妃』と色の名前で呼ぶようになった頃だった。
「エイルシア王とリアン様がユグドールへ来国し、しばらく滞在するから、おもてなしをお願いします」
コンラッド様から頼まれた……リアン様ですって?エイルシア王妃と呼ばないのはなぜですの?
「リアン様というのは……エイルシア王妃でございますか?」
わたくしの問いにコンラッド様はそうですよと柔らかな言い方で返してきた。
これは他国の王妃だから、名前を覚えないと失礼にあたるからですわよね?そうわたくしは解釈したのですが……真実は違いました。
夜会の時に見た表情、態度、どれをとってもコンラッド様はリアン様を求めるような、まるで恋をしているような雰囲気だったのです。
「リアン様」
そう名前で呼ばれていたとき、耳を疑いました。社交辞令ではない。その声を聞けば誰もがいつものコンラッド様でないことはわかりましたわ。隣にいるエイルシア王はお気づきになりませんの?あなたの奥様をコンラッド様は狙っておいでですのに!
でも……あの程度の美しさなら、わたくしたちは誰も負けておりませんし、地位もエイルシア王国の男爵家の娘と聞きましたわ。なぜ彼女ですの?
わたくしがその夜、寝ようとすると涙が頰を伝わってました。この涙はどんな意味なのか自分でもわかりませんわ。でも一人の時で良かったですわ。これでもコンラッド様の妃ですもの!妃の矜持というものがありますわ。人前で取り乱したりなどいたしません。
その夜、わたくし達の名前は呼ばないのに、他国の王妃の名を愛おしげに呼ぶコンラッド様の様子が頭から離れませんでした。
「マリアベルと申します。わたくしのことは親しい人はマリーと皆、呼びます。よろしければコンラッド様もそう呼んでいただ……」
目の前の夫となるユグドールの王子にわたくしは挨拶したが、相手の平然とし、変わらないニコニコとした笑顔に言葉が詰まってしまった。
なんでしょう?この方は笑ってるのに、心ここにあらずという感じなのがわかりますわ。
「ようこそユグドール王国へ。名前で呼ぶよりも、色の名前でもよろしいですか?そのほうが合理的ですから……そうですねぇ……今、着ているドレスが白色だから白の妃でいいですか?」
し、白?……白色?白の妃ってどういった意味なのでしょう?
最初は何をおっしゃってるのかわからなかった。でもそのうち嫌でもわかるようになった。
わたくしの後から、赤、黄、青、黒と色の名前で呼ばれる妃ができたからだった。さらにコンラッド様はおっしゃいました。
「ちょっと妃が増えすぎてわかりにくいので、お願いがあります」
ユグドールの王となる方、自らからお願いされてはだれも否ということはできませんわ。わたくしももちろん、ハイと素直に頷きました。
「色の名前と同じ色のものを常に身に着けてもらっていいですか?」
わたくしは言葉に詰まる。しかし、明るくあまり細いことには気にしない性格の赤の妃はもちろんコンラッド様が望むのならよろしいですわ!と答えた。それにならうように皆が頷く。わたくしは……嫌ですわといいたかったとですが、ここで一人で反論してもコンラッド様に悪印象を与えるだけですわねと堪えた。
わたくしの名前であるマリアベル。親しみをこめて「マリー」とコンラッド様のお声で呼んで頂けたらどんなに嬉しいでしょう?
色で分けられているなんて……まるで……物と同じだと思いませんの?と他の人に尋ねると『別に気にしません』『コンラッド様がそれで良いと言うのですから』と、わたくしの意見は相手にされなかった。
コンラッド様はわたくしたちのこと愛してくださるのかしら?なんだか不安ですわ。
そう思っていたけれど、コンラッド様はお優しくて、度々、自らの後宮へ訪れてはわたくしたちに会いに来てくださったり、プレゼントを贈ってくださったりした。
そして色別されたわたくしたちの名は城の使用人達にも馴染んでしまい、『白の妃』と色の名前で呼ぶようになった頃だった。
「エイルシア王とリアン様がユグドールへ来国し、しばらく滞在するから、おもてなしをお願いします」
コンラッド様から頼まれた……リアン様ですって?エイルシア王妃と呼ばないのはなぜですの?
「リアン様というのは……エイルシア王妃でございますか?」
わたくしの問いにコンラッド様はそうですよと柔らかな言い方で返してきた。
これは他国の王妃だから、名前を覚えないと失礼にあたるからですわよね?そうわたくしは解釈したのですが……真実は違いました。
夜会の時に見た表情、態度、どれをとってもコンラッド様はリアン様を求めるような、まるで恋をしているような雰囲気だったのです。
「リアン様」
そう名前で呼ばれていたとき、耳を疑いました。社交辞令ではない。その声を聞けば誰もがいつものコンラッド様でないことはわかりましたわ。隣にいるエイルシア王はお気づきになりませんの?あなたの奥様をコンラッド様は狙っておいでですのに!
でも……あの程度の美しさなら、わたくしたちは誰も負けておりませんし、地位もエイルシア王国の男爵家の娘と聞きましたわ。なぜ彼女ですの?
わたくしがその夜、寝ようとすると涙が頰を伝わってました。この涙はどんな意味なのか自分でもわかりませんわ。でも一人の時で良かったですわ。これでもコンラッド様の妃ですもの!妃の矜持というものがありますわ。人前で取り乱したりなどいたしません。
その夜、わたくし達の名前は呼ばないのに、他国の王妃の名を愛おしげに呼ぶコンラッド様の様子が頭から離れませんでした。
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