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4カ国の王はいつものように話し合う
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「危なかったわ。ウィルがめちゃくちゃ怒ることを想定していたんだけど、わりと冷静で助かったわ」
「リアン様、本当に陛下は我慢と忍耐をされたと思います。差し出がましいことと思いますが、クロエ様のこと、良かったのですか?リアン様なら止められたのでは?」
「私だってしかたなくよ。クロエは私とそっくりだもの止めても無駄よ。いつか出ていくわ。それにね……クロエは……」
「なんですか?」
「なんでもないわ」
クロエはウィリアムよりも早く大人になる必要がある。そう言いたかった。ウィリアムはウィルがいる限り表舞台に出る時間は少なくて済む。だけどクロエはどうかしら?あの子の思い一つだけど、どこかにお嫁に行くにしろ、好きな人ができるにしろ、やりたいことをするにしろ、自分の力で立てるようにしておかなければならないと思うのだった。
まぁ、それは私だけの思いではなく、クロエは賢いから理解している。だから今のうちに世の中を見に行ったのだ。自分の目に映る世界を感じにいった。
それを阻む母にはなりたくなかった。だって、私も感謝している。私塾で学ばせてもらったことで、好きになった人をこうして守れるもの。
「リアン様はいろいろと先を視ていらっしゃいますし、深い考えがあるとわかってます。だけど、周囲はそれが見えなくて心配になるんです」
説明が必要なんですとアナベルが私に言った。周囲がクロエのことを心配していると言いたいのだ。私はフッとアナベルから視線をそらす。
「私はただクロエの身に起こるかもしれないという可能性をいくつか考えているだけで、そうなるとは限らないわ。未来予知できるわけじゃないもの。そろそろ……アナベル、用意してくれる?」
「あっ!申し訳ありません。本当ですね。時間ですね」
もうすぐ同盟4か国で会議がある。私も出迎えの役をする。会議の出席は許されないが、挨拶の場で顔を合わせることは許されている。
「こんにちは!リアン王妃は今日も麗しく美しいですね。僕の後宮にいつでもきてください」
コンラッドが毎回同じセリフで挨拶する。
「は!?こっちの後宮の方が華やかで賑やかで他では見れぬ景色や物を見せられるぞ!どうだ?ハイロン国の後宮にきては?」
ハリムも相変わらずである。
「シザリアの軍師として雇ってやってもいいぞ。宰相でも良いぞ!どうだ?海は美しい!エイルシア王の姉もいるから退屈はしないだろう!?」
なぜ毎回、軍師や宰相にならないかとシザリア王まで誘うのか。
ウィルが黙れと低い声で言うと、三人の王が笑う。これが挨拶になっている。
「リアンも会議にいれたいから、この場を設けているが、勧誘《スカウト》するなら会わせないぞ!」
睨みつけるウィル。
「挨拶、そろそろ変えてくれるといいのだけど……」
私は苦笑する。挨拶がわりにウィルをからかうのはやめてほしい。
「さて、今回の議題なんだけど……」
「リアン王妃、さらっと流してるけど、半分本気なんだけどな」
そうコンラッドが言うとウィルに睨まれて口を閉ざす。毎回なんだし、ウィルも慣れてきてないわけ?と私は呆れる。
「コンラッド、ふざけてる場合か?今回はユクドール王国の北の地が議題だ」
ウィルが本題に入る。他の王たちをまとめるのは大変そう……。
「北の地に嫌な動きがある。兵を召集しているという情報がある。ユクドール王国はどうみている?」
コンラッドはにこやかな笑みが消えて、スッと真顔に戻る。
「そうですねぇ。別に攻めて来ようが大したことのない小国、念の為、北の国境を強化するためにすでに派兵はしました」
「北の地?なんて国があるんだ?」
ハリムが小さすぎて把握してないなぁと国土から遠いから他人事のように言う。地図を私は用意させてあり、広げる。
「シェザル王国。ここは氷の女王陛下が治めている国。小国なんだけど、地形のおかげで守られてるわ。この高い山があるでしょう?これを越えなければ攻めることができない。だからユクドール王国も放置してるのよね?」
「そのとおりです。攻めてもなんの利益もないですからね」
コンラッドがそう言う。
「あちらから攻める分にはこの山が天然要塞となるでしょうね」
「シェザル王国が国土を広げたいとリアン王妃は考えているのか?」
シザリア王が尋ねる。
「国土を広げたいだけかしら?それは単純すぎる考えだわ。長い間、ユクドール王国へ攻めてきてないのに、なぜ今だと思う?」
「裏で糸を引く国があるんだろう?兵を召集しているのはきっとユクドール王国への牽制か目を向けさせるためで、本当は別の所になにかある」
ウィルが鋭いことを言う。他人事だったハリムがなるほどと顎に手をやる。
「そのとおりよ。でもそのなにかがわからない。掴めてないの。コンラッドの方でなにか掴めてない?」
「同じようなものですね。北の地の物資が集められている情報しか手に入れてません。……かと言って、他国が不穏な動きをみせているわけでもない」
「なんか不気味だな」
シザリア王がそう言う。そうなのだ。他になにかあると思うのに、その情報が得られない。巧みに隠されているのだ。
もちろんお父様の力である世界商人の情報を持ってしても、まだ掴めてない。ここまで隠せるとは……。
「北の地の女王に聞けばいいだけだろ。いずれ攻めてくるなら迎え討つ!」
「これだから海賊は単純なんですから」
コンラッドに軽くあしらわれてシザリア王が海賊と呼ぶな!と食ってかかる。
「戦は策としては下策だ。なにも起こさずおさめるのが上策だ。とりあえず注視はしよう」
淡々とウィルがまとめた。この4カ国なら無敵だろ!?と好戦的なシザリア王は物足りなさそうだったが、ウィルの言う通りだ。
刃を交え、血が流れば、その後の戦後処理、民達の不満、命も失われる。
戦を回避する。これが1番の策。そのためならどんな手でも使うわ。
でもヒタヒタと見えないように近付いてくる影のようなものを私は感じている。私が見えない敵とはなんなのか?相手の巧妙さがやけに気になるのだった。しばらく平和が続いたから慎重に考えすぎているのかもしれないが……。
「リアン様、本当に陛下は我慢と忍耐をされたと思います。差し出がましいことと思いますが、クロエ様のこと、良かったのですか?リアン様なら止められたのでは?」
「私だってしかたなくよ。クロエは私とそっくりだもの止めても無駄よ。いつか出ていくわ。それにね……クロエは……」
「なんですか?」
「なんでもないわ」
クロエはウィリアムよりも早く大人になる必要がある。そう言いたかった。ウィリアムはウィルがいる限り表舞台に出る時間は少なくて済む。だけどクロエはどうかしら?あの子の思い一つだけど、どこかにお嫁に行くにしろ、好きな人ができるにしろ、やりたいことをするにしろ、自分の力で立てるようにしておかなければならないと思うのだった。
まぁ、それは私だけの思いではなく、クロエは賢いから理解している。だから今のうちに世の中を見に行ったのだ。自分の目に映る世界を感じにいった。
それを阻む母にはなりたくなかった。だって、私も感謝している。私塾で学ばせてもらったことで、好きになった人をこうして守れるもの。
「リアン様はいろいろと先を視ていらっしゃいますし、深い考えがあるとわかってます。だけど、周囲はそれが見えなくて心配になるんです」
説明が必要なんですとアナベルが私に言った。周囲がクロエのことを心配していると言いたいのだ。私はフッとアナベルから視線をそらす。
「私はただクロエの身に起こるかもしれないという可能性をいくつか考えているだけで、そうなるとは限らないわ。未来予知できるわけじゃないもの。そろそろ……アナベル、用意してくれる?」
「あっ!申し訳ありません。本当ですね。時間ですね」
もうすぐ同盟4か国で会議がある。私も出迎えの役をする。会議の出席は許されないが、挨拶の場で顔を合わせることは許されている。
「こんにちは!リアン王妃は今日も麗しく美しいですね。僕の後宮にいつでもきてください」
コンラッドが毎回同じセリフで挨拶する。
「は!?こっちの後宮の方が華やかで賑やかで他では見れぬ景色や物を見せられるぞ!どうだ?ハイロン国の後宮にきては?」
ハリムも相変わらずである。
「シザリアの軍師として雇ってやってもいいぞ。宰相でも良いぞ!どうだ?海は美しい!エイルシア王の姉もいるから退屈はしないだろう!?」
なぜ毎回、軍師や宰相にならないかとシザリア王まで誘うのか。
ウィルが黙れと低い声で言うと、三人の王が笑う。これが挨拶になっている。
「リアンも会議にいれたいから、この場を設けているが、勧誘《スカウト》するなら会わせないぞ!」
睨みつけるウィル。
「挨拶、そろそろ変えてくれるといいのだけど……」
私は苦笑する。挨拶がわりにウィルをからかうのはやめてほしい。
「さて、今回の議題なんだけど……」
「リアン王妃、さらっと流してるけど、半分本気なんだけどな」
そうコンラッドが言うとウィルに睨まれて口を閉ざす。毎回なんだし、ウィルも慣れてきてないわけ?と私は呆れる。
「コンラッド、ふざけてる場合か?今回はユクドール王国の北の地が議題だ」
ウィルが本題に入る。他の王たちをまとめるのは大変そう……。
「北の地に嫌な動きがある。兵を召集しているという情報がある。ユクドール王国はどうみている?」
コンラッドはにこやかな笑みが消えて、スッと真顔に戻る。
「そうですねぇ。別に攻めて来ようが大したことのない小国、念の為、北の国境を強化するためにすでに派兵はしました」
「北の地?なんて国があるんだ?」
ハリムが小さすぎて把握してないなぁと国土から遠いから他人事のように言う。地図を私は用意させてあり、広げる。
「シェザル王国。ここは氷の女王陛下が治めている国。小国なんだけど、地形のおかげで守られてるわ。この高い山があるでしょう?これを越えなければ攻めることができない。だからユクドール王国も放置してるのよね?」
「そのとおりです。攻めてもなんの利益もないですからね」
コンラッドがそう言う。
「あちらから攻める分にはこの山が天然要塞となるでしょうね」
「シェザル王国が国土を広げたいとリアン王妃は考えているのか?」
シザリア王が尋ねる。
「国土を広げたいだけかしら?それは単純すぎる考えだわ。長い間、ユクドール王国へ攻めてきてないのに、なぜ今だと思う?」
「裏で糸を引く国があるんだろう?兵を召集しているのはきっとユクドール王国への牽制か目を向けさせるためで、本当は別の所になにかある」
ウィルが鋭いことを言う。他人事だったハリムがなるほどと顎に手をやる。
「そのとおりよ。でもそのなにかがわからない。掴めてないの。コンラッドの方でなにか掴めてない?」
「同じようなものですね。北の地の物資が集められている情報しか手に入れてません。……かと言って、他国が不穏な動きをみせているわけでもない」
「なんか不気味だな」
シザリア王がそう言う。そうなのだ。他になにかあると思うのに、その情報が得られない。巧みに隠されているのだ。
もちろんお父様の力である世界商人の情報を持ってしても、まだ掴めてない。ここまで隠せるとは……。
「北の地の女王に聞けばいいだけだろ。いずれ攻めてくるなら迎え討つ!」
「これだから海賊は単純なんですから」
コンラッドに軽くあしらわれてシザリア王が海賊と呼ぶな!と食ってかかる。
「戦は策としては下策だ。なにも起こさずおさめるのが上策だ。とりあえず注視はしよう」
淡々とウィルがまとめた。この4カ国なら無敵だろ!?と好戦的なシザリア王は物足りなさそうだったが、ウィルの言う通りだ。
刃を交え、血が流れば、その後の戦後処理、民達の不満、命も失われる。
戦を回避する。これが1番の策。そのためならどんな手でも使うわ。
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