【講談社大賞受賞作品】私を殺したのは、大魔法使い様ですか?

花澄そう

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招かざる訪問者

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「くそ、魔力を使いすぎたか……」

視界がかすみ、足元が不安定になる。
体がクラクラと揺れながらも、奴がすぐそこにいるという事実に、自分をふるい立たせた。

目を閉じ、深く息を吐いてからドアを開ける。
すると、やはり半地下に向かう階段の方から魔力を感じた。

半地下はグランドで使う備品倉庫になっていたはずだ。奴はそこに……?


魔力残量の計算もせずに逃げる為に限界まで瞬間移動をし、俺から逃げきれなくなって、魔力が感知されにくいとされる地下に身をひそめたか?


いや……、この俺が何年も追いかけ続けて捕まえられなかった奴が、そんなマヌケな事をするわけがねぇ。

ってことは、これは罠か……?


罠かもしれないと分かっていても、長年追いかけ続けた奴のしっぽを掴めるかもしんねぇのに、ここで引き返す馬鹿なんていないだろう。


俺は念のため体に防御シールドを張り、細心の注意を払いながら備品倉庫のドアを開けた。

中は真っ暗で何も見えない。
そして今のところ、攻撃が飛んでくる気配はない。

だが、確実にここに――必ず何かがある。


「おい。出てこい。お前がここにいるのは分かってんだ」
そう言っても、俺の声がむなしく倉庫内に響くだけだった。

これ以上魔力を使いたくねぇけど仕方ねぇ。
そう思いながら、指先から小さな明かりを出した。

明かりは乱雑に置かれた道具を照らし出しているが、人の気配はまるで無い。

不思議に思って魔力に意識を向けると、部屋の奥にある、人が入れそうなほどの大きさの木箱からかすかな魔力を感じとった。


「あそこか?」

俺が出口をったことに気付いて、こんな箱に隠れるなんて、さすがに考えにくい。かくれんぼじゃあるまいし。


「かなり怪しいな」
触れる前に手を軽くかざすと、攻撃性の魔法は感じられなかった。
でも、何かの仕掛けがあるようだった。

何かがあると分かっていても、俺は興味を抑える事が出来ず、目の前の誘惑に負けて箱のふたに手を掛けた。
そして、ぐっと力を入れた。


思っていたよりも重いふたが開いた瞬間、中から魔力が飛び出しすのを感じた。
「っ!?」

その魔力は、凄い勢いで俺の足元をすり抜け、壁を伝って駆け上がって行く。
「しまった!」

その魔力を追いかけるように振り返ったけど、あっという間に見えなくなってしまった。

再び木箱に視線を戻す。
そこには魔力の残骸ざんがいが残ったサッカーボールがあった。

逃げられた?

ほんの一瞬しか見えなかったけど、まさか、あれが俺が探してた本体だった……とかじゃねぇよな?

俺が探してる奴は……、まさか人間じゃねぇのか?


頭を悩ませながら備品倉庫を出て、半地下の階段を上がって行く。

さっき入ってきた出口の前まで来た俺は、もう不要となった建物全体にかけた光るシールドに手をかざし、解除魔法を使った。

すると、すぐにパリンと魔法が解除される音が耳にに届いた。


なのに、なぜか目の前の扉はまだ光っている。


「ん?なんでまだ光ってんだ?」
状況が理解出来なくて、俺は静かに眉を寄せた。

おかしいな。シールドは1重にしかかけてねぇはずなんだけど。

「変だな……」
そうつぶやきながら、もう一度解除魔法をかけると……今度は解除魔法が拒否されたようにバチっと跳ね返された。
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