ただ儚く君を想う 壱

桜樹璃音

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第3章 ひとびと

第2話

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「……あれ?」


私、変なこと言った?
総司を覗えば、肩を震わせて何かを必死に耐えていた。

平ちゃん、左之さん、新八さんも同様。


「…………わっはっはっはっはっは!!!!!」


堪えきれない様に、歳三(もうこう呼ぶって決めた)の隣に座っていた人が大きな口で笑いだす。

それを皮切りにして、近くにいる人たちから、笑いの声が零れてきた。
そう言えば、少しだけ段がついていて、その上にいる人は笑っているけれど、下の人たちはなんというか………青ざめている?


その違いに疑問を覚えた。


「…………女々しい…、」


ぼそりと近くから聞こえた、亡霊のような声に、びくりと体が強張る。
見れば、腑抜けた歳三が、呪文のように呟いていた。


「あのー、もしもし」

「…………」


目が虚ろだ。
私、そんなにひどいこと言ったっけ。


「あー、こりゃ、駄目だな、おい歳!しっかりしろ。さぁ、総司、その子を紹介してくれ」


歳三の前でぶんぶんと手を振った大きい口の人が、総司に促す。

その声に、にっこりと笑った総司の反応から、この人が近藤さんかと予測を付けた。


ぽん、と肩にのった総司の手によって、みんなの中心に押し出される。


「璃桜、お疲れー、はい、撃沈した土方さんはほっておいて、さぁ、皆さんに紹介です。
沖田璃桜、俺の双子の弟です!」


皆の視線を一気に受けて、少しだけ体温が上がった気がした。


「………総司にそっくりだな。ちょっと身長が足りないか」


誰かがぽつりとつぶやく。
そりゃそうよ、そっくりだけど男女だもの。

普通に考えて、性別が違うのだから二卵性双生児だ。


「……………女みたいな、名前だな?」

「………男です。お・と・こ。一くん、変なこと言わないでよ」


目の前から無感情な声が聞こえて、丁度その時、男女、なんて考えていたものだから、身体がぎくりと反応した。

肩に触れていた総司には伝わってしまったのか、それを誤魔化すように、一字一句区切って男だということを強調してくれた。
そして、ゆるりと相手を牽制した。



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