ただ儚く君を想う 弐

桜樹璃音

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第5章 本当の気持ち

第9話

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何だか若干気まずくなって塀の影から姿を現わせば、おまさちゃんは、私に向かっても丁寧にお辞儀をしてくれた。

……私、何もしてないっていうのに。



「璃桜、この人、送っていって」



そう言っておまさちゃんを指さす。左之さん、やっぱりおかしい。いつもなら何をしてでも自分が送るって言いだすのに。

その言葉に、おまさちゃんはぶんぶんと首を振って遠慮する。



「いや……! 大丈夫です、すぐそこなので」

「いや、まだあの5人組がどっかにいたらいけねぇしよ。な、璃桜?」

「……いいですよ、行きましょ、菅原さん」

「あれ、どうして私の名前……?」



くりくりとした瞳を見開いて、驚いたようにしている彼女に、罪悪感に駆られながらも正直に事の顛末を話した。



「非常に言い辛いんですけど、ずっと物陰から見てました……」



ごめんなさい、と謝れば、途端にぽっと頬を染めるおまさちゃん。



「恥ずかしい……、あんなこと言って、何もできてないんです私」

「いやいや、十分、格好良かったですよ。私なんか、スカッとしちゃいました」

ね、左之さん? と話を振れば、左之さんはハッとしたように頷く。



「大丈夫ですか?」



おまさちゃんに聞こえないように、こそりと呟けば、コクコクと無言で肯定する。無言っていうのがもういつもの左之さんじゃない。



「……行きましょうか」



埒のあかない左之さんは後で問い詰めるとして、彼女を送り届けなければいけない。

そう思い、帰り道を促した刹那、じっと俯いていたおまさちゃんは、パッと顔を上げて左之さんに向かって言葉を紡いだ。



「あ、あの! お名前、お聞きしてもいいですか?」



その頬は、淡い桃色。



「俺? 原田、左之助」



答える左之さんの頬も、一刷毛朱に染まっている。

何だこの空気は。完全に私邪魔者じゃん。




「原田様……、この度は本当にありがとうございました」

「今度は、気をつけろよー」



深々と頭を下げたおまさちゃんは、ぱたぱたと足を進め始めた。遅れないようにと私も隣に並ぶ。追い付いた私を少し見上げて、おまさちゃんはにっこりと笑う。



「貴方のお名前、伺ってもいいですか?」

「沖田璃桜です」

「璃桜さん……素敵なお名前ですね。壬生浪士組の隊士なんですか?」

「一応ね。下っ端だけど」

「そうなんですね」



ははっと笑いながらそう答えれば、ふーむ、と何かを考えるように顎に手を添えるおまさちゃん。



「如何したの?」

「あの、……原田さんって、……どんな人ですか」



可愛らしく頬を染めてそんな事を尋ねてくるおまさちゃんに、ピコンと脳裏のセンサーが反応する。

これはもしかしなくても、おまさちゃんってあの、“まさ”?

私の肩ほどの高さにあるその横顔をじっと眺めれば、慌てたように「何でもないです」と目を逸らす。





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